【質問】悪徳業者に騙されたくない! どこで業者の良し悪しを見抜けばよい?

「優秀な業者を見つけ出すこと」と「悪徳業者を避けること」、一体どちらが簡単だろうか? 実のところ、誠実に仕事をしている業者ほど派手な広告を打たず、サイトは地味でわかりやすい煽り文句もないことが多い。よって、どれがよいのかを選ぶよりは、どれがダメなのかを判断するほうが手っ取り早いのが実情だ。

できることなら、インターネットで各業者のWebサイトをチェックするほかは、必要な項目を打ち込んで検索するくらいで済ませたい。そんな時、どのような点をチェックしたらよいだろうか?
  1. 「復旧率」を出しているかどうか
  2. さまざまなメディアを使って宣伝を積極的に行っているかどうか
  3. 安価なコストで作業してくれるかどうか

(イラスト ナバタメ・カズタカ)

【回答】全部NG! 必要以上にPRが激しいところは要注意!!

悪徳とは言いすぎかもしれないが、ユーザーの立場で考えた時に「優良業者」とは呼べない業者がたくさんある。とりあえず、おおげさな数字や派手なビジュアルで自分を大きく見せようとばかりしている雰囲気のサイトは要注意だ。

1つずつ確認しよう。まず第3回でも挙げた「復旧率」だ。何を基準にしているのか定かではない復旧率、怪しいことこのうえないが、ユーザーが数字でデータが復旧できる確率を知りたい気持ちもわかる。

日本データ復旧協会では、復旧率は日々刻々変化するものだし、メディアの種類によっても大きく変わるので、その定義は行っていない。台数ベースを基準にしたとしても適切とは言い切れず、「復旧率=技術レベル」という考えを捨てたほうがよさそうだ。なお、同協会によると、台数ベースで復旧率を算出すると80%前後が適正値だという。要は、復旧率の信頼性は定かではないのだ。

だから、やたらと高い数字を掲げている数値、台数ベースと注釈していない数値、いつ見ても同じ数値を掲載している業者はNGだと思って間違いない。

「積極的な宣伝」かどうかを判断する基準は難しいが、「絶対復元できます!」とか「業界ナンバー1の実績!」といった言葉が黄色や赤の強い色で配置されているサイトは胡散臭い。データ復旧は地道な技術の積み上げによって実現できるものであって、勢いや雰囲気で選ぶようなものではないのだ。

ユーザーメリットを強く打ち出しすぎのところもNG!

データ復旧に限らず、不案内な分野で業者を探している時に持ってしまいがちな希望がある。それは、「できるだけ安く済むといいなあ」とか「地元の業者のほうが安心できるなあ」というものだ。がめつい業者はここを的確に突いてくる。

まず、「安く済ませたい」という期待に応じるべく、"とりあえず"の価格を提示する。例えば、「基本料金は3万円です」といった調子だ。ここで、「基本料金とは何だ?、追加料金はどれだけかかるんだ?」と突っ込んだ時に答えが返ってくればまだよいが、「とりあえず送ってください。作業してみて難しい案件の場合は追加料金がかかります」なんて答える業者もいる。

復旧作業が難しいかどうかはユーザーにはわからない。実は、専用ソフトでボタンをいくつかクリックしただけの作業かもしれないのに「難しい作業だったので10万円追加です」と言われても、「それは嘘だ」とは言えないのだから、結果次第で金額が決まるというのは怖いことなのだ。

誠意ある業者ならば、対象となるデータ容量やHDD容量でスパっと料金を決める。もちろん、ソフトウェアで簡単に済ませられる「論理障害」なのか、緻密な作業が必要となる「物理障害」なのか程度の切り分けはするが、「HDDが複雑に壊れていたから料金を上げる」なんてことはない。最終的に支払うことになる金額がはっきり言えない時点で、疑いたいものだ。

また、拠点数が多すぎる業者も怪しい。正直なところ、データ復旧は全国各地で需要が多いものではない。また、自分で持ち込むのならともかく、配送を使うなら10kmだって100kmだって同じだ。近くの業者を選ぶ必要はない。だから、ほとんどのデータ復旧業者はメインのラボを1つ構えている程度の規模だ。

しかし、全国に窓口があるかのような宣伝をしている業者もある。もちろん、がんばって全国に窓口を設けているわけではなく、実際にはレンタルオフィスや転送サービスを使っている。

電話で問い合わせた時に「ラボはどこにありますか?」と質問してみてもいいし、Google Mapのストリートビューで該当住所を見てもよいだろう。「目立ったもの勝ち、うまくひっかけたもの勝ち」という考え方の業者が怖いと思うならば、こうした業者は避けておこう。

最後に、「PCが壊れたから復旧してほしい」と相談の電話をかけた時に「とにかく送ってみて」といった対応をする業者や、いきなり料金の話をする業者は危ない。なぜなら、先にも触れたように、専用ソフトさえ使えば簡単に直せる障害もあるからだ。

ユーザーにしてみれば安く簡単に済ませられるに越したことはない。ユーザー利益に反して、「何でも仕事にしてしまえば金が取れる」と考えるのは悪徳だ。だから、誠実な業者は初めに壊れた状況や障害の程度を尋ねる。その結果、簡単な案件だと思ったら、市販ソフトでの対応をお勧めする。また、HDDではなくPCの障害と思われる時は内蔵HDDを外付けHDDにするためのケースを購入して、別なPCに接続して読み出してみることをお勧めする。この2つの手法で済めば、投資額は数千円から1万円程度済んでしまうのだ。

どう考えても、こうした対応では済まない障害やこれをやってみてもダメだった場合だけ「送ってください」となるわけだ。この段階を踏まずに、簡単な障害復旧でも高額な料金をとってしまうのは詐欺とさえ思える。ユーザーの知識の薄さに付け入る業者から自分の財布とデータを守るために、ぜひこうしたことを覚えておいてほしい。

求人が多すぎるブラック企業にご注意!

人の出入りが多すぎる企業はどんな業種でも少々怪しい。仕事が辛すぎるのか、待遇が悪すぎるのか、真の理由はわからないが、優良企業でなさそうなのは確かだ。

データ復旧業界に限って言えば、必要な技術が短期間で身につくものではないという事情がある。マニュアルさえあればできるわけではないし、不眠不休で頑張ったからといって3日程度で習得できるというものでもない。したがって、「外国から技術者を招いて勉強会を実施」などと、Webサイトに掲載している業者の技術力は逆に疑ってみる必要がある。じっくりと身につけなければならない技術が必要とされる業界だから、それほど簡単に人を入れ替えられるわけがないのだ。

また、データ復旧の技術は教えるほうにも限界がある。教室にずらりと並べて教えるわけではないから、1度に大量採用しても面倒を見きれない。つまり、きちんとした技術者を育てようとすれば、少数採用でじっくり教育するしかないわけで、育てた技術者は簡単には手放せない。簡単に人を入れ替えたり採用したりしている業者は、アルバイト程度の知識や技術で対応できることしかしてくれないという意味だから、警戒しよう。