さて、本連載ではここまで計8回に渡り、コンテンツマーケティングの定義や基礎、取り組むべき理由、はじめるためのステップ、コンテンツについて紹介してきました。最終回となる本稿では、実践的な内容からは少し離れ、私が考える "これからのマーケティング" についてお話したいと思います。

まずは、経営に求められるものが変わる

私は、今後の企業経営におけるキーワードを「デジタル化」と「グローバル化」であると捉えています。

本稿でいうデジタル化の定義とは、世界中の人がスマートフォン(スマホ)を持ち、インターネットを自由に使う時代になるということ。一方、グローバル化は、世界中が一つの市場として統合されていくということです。

これらにより、すべての企業は「ターゲットを世界へ広げ、今後のビジネスをどう展開していくのか」を真剣に考えるべき局面を迎えようとしています。

特に、日本企業の海外進出や訪日観光客の誘致など、グローバル化をテーマにした動きがますます加速していくことは間違いがありません。これは、多くの企業にとって "極めて大きなビジネスチャンス" だと言えます。

ビジネスチャンスを掴む 新たな視点「顧客創出」とは

一方で、私は「せっかくこうしたビジネスチャンスがありながら、多くの日本企業が旧来型のビジネスから抜け出せていないのではないか」という危機感を強く感じています。端的に言うと、いいものを作れば売れるという「もの作り信仰」から抜け出せていないということです。

「競合よりも良い商品を作る」「競合よりも安く作る」―― これらのやり方は、もはや通用しません。いいものを作ることは大前提であり、それだけでは売れないのです。では、企業はどうすればよいのでしょうか。

私は、今後企業に求められることを「顧客創出」だと捉えています。自社の商品やサービスに対し、これまでまったく見向きもしなかった顧客をどのように見つけ出し、欲しいと感じてもらうのか ―― すなわち、これは「マーケティング」に通じるわけですが ―― これができない企業は、ビジネスチャンスを逃すばかりか、売上が縮小していくでしょう。

マーケティングって、何から始めればよいのだろう

さて、先日、大阪のある製造業にて役員を務める方とお話をする機会がありました。同社は、プラント関連の非常にすぐれた技術を持っており、海外での販売実績もあります。その企業が今後、「マーケティング機能の強化」に取り組んでいくというのです。

というのも同社はこれまで、商社や代理店を通じて取引を行ってきましたが、今後、新規取引先を開拓するためには、自社のマーケティング機能を強化する必要があると考えたようです。しかし、一言でマーケティング機能の強化と言っても、「まず何から取り組むべきなのか」や「どのような順序を経て進めていくのか」などの課題があったと言います。

何から取り組むべきなのか ―― その答えは「情報発信」です。

コンテンツマーケティングとは、顧客視点で情報発信すること

コンテンツマーケティングは、ターゲット顧客の情報ニーズをきちんと理解し、ターゲットに見つけてもらうことのできるコンテンツを提供する手法です。これにより、コンテンツの受け取り側となる顧客への理解が深まることは必然的ですし、自社の「情報発信力」も強化されていきます。

たしかにコンテンツマーケティングは、決して、目新しい手法ではありません。顧客理解や情報発信など、「当たり前の取り組みをちゃんとやりましょう」と訴えるものといった方が正しいかもしれません。

ただ、ここで強調したいことは、今まで先送りしてきた情報発信に今取り組まなければ、競争に乗り遅れてしまうということです。既に、アメリカでは企業の9割がコンテンツマーケティングに取り組んでいるという調査結果もあります。これは、アメリカ企業が、デジタル化とグローバル化といった2つのトレンドを活用し、ビジネスにつなげようとする大きな動きにほかなりません。

日本には、本当に素晴らしい製品やサービスを開発・提供する企業が多く存在します。これらの大部分は、世界で通用するレベルですが、同時に、情報の発信ができていないために、取引先が広がらず売上も伸びないという "もったいない状態" にあるとも言えます。

自社の優れた商品やサービスを世界中の人に届けるため、ぜひ積極的に情報発信を行っていってほしいと思います。

執筆者紹介

イノーバ 代表取締役社長 宗像淳

福島県立 安積高等学校出身、東京大学文学部卒業。その後、富士通にて北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等を経験する。MBAを取得するため、ペンシルバニア大学ウォートン校に留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから楽天へ転職。その後、ネクスパス (現 : トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当する。
2011年6月に株式会社イノーバを設立(公式Webサイトはこちら)。著書に『商品を売るなーコンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みをつくる (日経BP)』がある。