これまでに様々な器具でのコーヒー抽出法を解説してきたが、ペーパードリップはその中でも非常にポピュラーな抽出法といえる。それだけに各社が様々なペーパーやフィルターを販売しており、それぞれの特徴を把握しないままに購入をしている方も多いのではないだろうか。今回からは、抽出したコーヒーの味わいだけではなく、デザイン性の高さからも人気を獲得している「コーノ式円錐フィルター」を開発した「珈琲サイフォン」に、フィルターの構造解説やペーパードリップの方法を教えていただく。

写真左がコーノ式円錐フィルターもついた「名門ドリッパーセット」(4,000円)。こちらは定番カラーのキャメル。円錐フィルターの色によって箱の色も異なり、今までに写真右のようなカラーの箱が登場

※一般的に「ドリッパー」と呼ばれる部分を「珈琲サイフォン」では「円錐フィルター」という製品名で販売しているため、ここではドリッパー部分を「円錐フィルター」とし、ペーパーフィルターを「ペーパー」と記述する。

私がコーノ式円錐フィルターを初めて知ったのは、今から5年ほど前のことだろうか。その時の衝撃たるや……。フィルターといえば透明なものや白い陶器製のものを思い浮かべる方が多いだろう。しかし、コーノ式円錐フィルターはショッキングピンクや赤、オレンジと色とりどり! 心弾むようなビタミンカラーもあれば、シックで落ち着いたブラウン系やブラックもある。ガラスサーバーもコロンと丸い形。聞くところによると、コーヒー通だけではなく雑貨好きな人々からの支持も得ているそうだ。確かにかわいいのだから、見た目に引かれてコーノ式円錐フィルターを使うのもよいだろう。しかしこの企画で紹介するからには、しっかりと構造面での特徴もお話しておきたいと思う。

見た目のよさと機能性を兼ね備える

「珈琲サイフォン」代表取締役社長・河野雅信氏

皆さんが思い浮かべるフィルターといえば、横から見るとちょうど台形、下の部分が平らになっており、そこに小さな穴が開いているタイプだと思う。しかしコーノ式は円錐形。フィルターの下の部分が円形に開いており、ここからペーパーの先端部分が出るということだ。「形状としては、コーヒー抽出法として理想的なネルの漉し袋にそっくりですよね。このような円錐形にすることで、注いだ湯が中心から周囲に満遍なく広がり、最後は底の部分に集中して落ちてきます。つまり、円錐フィルター内にあるコーヒー粉全体から旨みや風味を余すところなく抽出できるということです」(「珈琲サイフォン」代表取締役社長・河野雅信氏)。

円錐フィルターをよく見てみると、内側に線のような"リブ"が付いているのがわかる。このリブにも実は秘密がある。「リブは上から付いているのではなく、中ほどから下に向かって付いていますよね。ということは、ペーパーの上半分は円錐フィルターに密着することになる。もしペーパー上部と円錐フィルターの間に隙間があると、そこからアクを含んだ液体が側面より流れ出てしまいます。コーノの円錐フィルターはペーパーがフィルター上部にはりつき、上部に浮き上がっている微粉やシルバースキン等の味を損ねる成分がグラスポットに落ちてこない構造になっているということなのです」。なるほど! リブの長さ1つをとってもこんな理由があったとは……。

円錐フィルターの内側に付いている線のようなものがリブ

見た目のよさだけではなく、おいしいコーヒーを淹れるための工夫がしっかりとなされていることがわかってもらえただろうか。構造面での特徴をしっかりと把握したら、次回はいよいよ実際にコーヒー抽出に挑戦だ!