紅茶サーバーのようなルックスのコーヒープレス。前回はこの抽出機器を使ったおいしいコーヒーの淹れ方を解説した。後編となる今回は、「スターバックス コーヒー」の田原象二郎さんが推薦するコーヒー豆を紹介していく。

前回お話したように、コーヒープレスはペーパーフィルターを使わない。つまりそれは、抽出された液体の中に、豆の味がそのまま閉じ込められている、ということになる。ペーパーフィルターを使用すると美味しさでもある豆の油分などがペーパーに吸収されていくが、コーヒープレスの場合、そういったことがない。

実際、スターバックス コーヒーでも新しい豆が入荷されると、バリスタはコーヒープレスを使ってテイスティングをする。「コーヒーの味わいを構成するのは、香り・酸味・コク・風味といった4つの要素です。コーヒープレスは、これらの要素を最大限に引き出してくれる抽出器具なのです」と田原さん。

つまり、良くも悪くも豆の味わいがストレートに出る抽出法なのだ。そこで慎重になりたいのが豆選び。ここからは、田原さんがおすすめする3種類の豆を紹介していく。

左から「ハウス ブレンド」、「ゴールドコースト ブレンド」、「エスプレッソ ロースト」

「ハウス ブレンド」(1,100円/250g):クセのないバランスのよい味わいで、1日中どんなシーンでも合う。香ばしいナッツのような風味が特徴。程よいコクなので、ストレートで飲むのがおすすめ。

「ゴールドコースト ブレンド」(1,300円/250g):ラテンアメリカ産とインドネシア産コーヒーに、焙煎度合いの高いイタリアンローストをブレンド。深いコクがある主役級の味わい。

「エスプレッソ ロースト」(1,300円/250g):3種類の中で最も焙煎度合いの高い豆。カラメルを思わせるほろ苦さがある。スターバックス コーヒーではすべてのエスプレッソドリンクにこの豆を使用するが、コーヒープレスでもおいしく楽しむことができる。

※価格は「スターバックス コーヒー」での販売価格。いずれも全国の店舗で購入可能。

簡単なアレンジで、味の変化を楽しもう

ストレートで豆の味わいを十分に堪能したら、次なるステップへ。ミルクを加える、シロップをプラス、といった簡単なアレンジをしてバリエーションを広げてみよう。

「ヘーゼルナッツフレーバーのカプチーノ」

材料(1人分):ミルク150ml / コーヒープレスで抽出したコーヒー120ml / ヘーゼルナッツシロップ30ml

作り方

1.サーバーに温めたミルク(66℃~77℃が適温)を注ぎ、ハンディミルクフォーマー等で泡立てる。ミルクのかさが倍になったら泡立て終了の合図。
2.マグカップ(ここでは容量240mlのものを使用)にコーヒーを注いでおく。
3.フォームドミルクを軽く混ぜ合わせる。上部のフォームはキメが粗くなっているため、かき混ぜることでフォームのキメが均一になる。これを2のマグカップに浮かべていく。
4.ヘーゼルナッツシロップを静かに入れる。
5.ふわふわのフォームドミルクがのったフレーバーカプチーノの完成。

先に紹介した豆3種類のうち、このメニューに向くのは「エスプレッソロースト」。「酸味の強い豆はあまりミルクと相性がいいとは言えません。コクや香ばしさがあるこの豆は、ミルクと好相性」と田原さん。フレーバーシロップは味に変化が出しやすいアイテムなので、積極的に試したい。

コーヒープレスで抽出したコーヒーは味に濃縮感があるため、ミルクやシロップに負けない強い味わいを持っている。そのため、エスプレッソ同様にアレンジがしやすい点も見逃せない。

基本的な抽出法とアレンジ法を紹介してきたが、まずはいつもペーパードリップで飲んでいるコーヒー豆を、挽き具合を変えてコーヒープレスで飲んでみてほしい。味わいの変化に気付くと思う。そんなちょっとした発見が、コーヒーをより楽しい飲み物へと変えていってくれるのだ。

「スターバックス コーヒー」コーヒースペシャリスト 田原象二郎
2000年に同社へ入社した後、
6年半にわたる店舗勤務を経て現在に至る。
社内職位であるコーヒースペシャリストとして、
社内外のコーヒー啓蒙活動を行っている。
写真:中村浩二