帳票のイロハ

規模の大きさに関係なく、システム開発において帳票出力はとても重要なウェイトを占めます。にもかかわらず、その重要性を理解しているエンジニアは多いとは言えないのではないでしょうか。ここでは、「帳票を知らない」方々に向けて、あえて"基本の基本"部分から解説します。

一般に、システムで入力して蓄積したデータをユーザーの要求に従って成形して出力するものを「帳票」と言います。つまり、システムからプリントアウトされるものはすべて帳票と考えていいでしょう。

基幹系システムでは、どのようなデータの帳票を出力するかによって、データベースの設計や入力画面が決まります。料理を作る際、「どんな料理を作るかが決まらなければ、どのような食材が必要なのかがわからない」のと同じです。

事実、従来のホスト型システムでは、開発の見積りは帳票単位で計算されていたのです。データの入力画面が現在のようなGUIではなく、比較的開発が簡単だったこともありますが、かつては帳票がそれほど重要な役割を果たしていたということです。

しかし、PCの普及や基幹システムのオープン化の流れにより、入力画面は複雑なものになってきました。またITシステムが企業に浸透すると、今度は「蓄積されたデータを活用したい」というニーズが高まります。データを取り出してExcelを使って分析するといったエンドユーザーの細かなニーズにも応える必要が出てきたのです。

そうなると当然、システムに求められる帳票の数や種類も増えてきています。先述の料理にたとえると、「豊富にある食材の中から、好みに応じて食材をセレクトして料理を決める」ということになるでしょうか。

帳票出力形態の変化

一口に帳票と言っても様々な種類があります。

例えば、販売管理システムにおける請求書・納品書などの定型帳票があります。基幹システムの財務データの総勘定元帳や試算表、各種財務諸表などもそうです。また、売上などの日報や月報もありますね。

基幹系システムから出力される帳票は、「企業の経営活動の記録」という意味合いが強く、法律で決められているために出力した帳票を保管しなければならなかったわけですが、多くの帳票は積極的に利用されずに破棄されるのを待つだけのものでした。

しかし、それもe-文書法などの施行によって、電子データとして保管することが認められるようになりました。これがいわゆる「帳票の電子化」です。

一方、PCの普及や基幹システムのオープン化は、帳票開発の現場にも大きな変化をもたらしました。ホストコンピュータからバッチ処理で専用プリンタを使って一括出力する……という形態だけでなく、PC用のハードウェア資産(つまり一般的なプリンタ)を使った出力形態が増えてきました。

このように出力デバイスがオープン化しただけでなく、帳票のデザインにもグラフなどを含めたビジュアル要素が求められるなど、帳票の"品質"も重要な要素となりつつあります。さらに、振込用紙などの定型フォームへの出力など、求められる帳票の様式も様々です。

オープン化と言っても、現在の主流はWebシステムに移行しています。アプリケーションがサーバ側で稼働するWebシステムにおいて、クライアントPCに接続したプリンタから帳票を出力するには、データをPDF化するなどの工夫が必要になってきます。

また、単に紙に出力するだけでなく、Excelを使った分析用に帳票データをCSVなどのデータとして出力したり、システムから直接FAXで送信したりメールで送信したりするなど、帳票の出力形態もプリンタに限ったものではなくなってきました。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.5(2008年7月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。