【連載】
本連載の第1回から第5回までは、「知的財産に関する誤解」という切り口で、経営者が身に付けておくべき知的財産に関する知識について述べてきた。今回は今までとは異なり、IT社会には欠かせないソフトウェアにおける特許権と著作権について説明したい。
ソフトウェア特許とは、文字通りソフトウェアに関する特許の意味であり、ソフトウェアとは平たく言えば、コンピュータプログラムの意味である。また、コンピュータプログラムが著作権で保護されること自体を知らない経営者はいないであろう。
しかしながら、著作権と特許権の違いを明確に理解していない人は多いので、ここではその点に触れておきたい。
著作権というのは分かりやすく言えば、アイデアの具体的「表現」に認められる権利であり、アイデアそのものに権利が与えられるものではない。他方、特許権というのは技術的な抽象的「アイデア」に認められる権利であり、「技術的」という限定がつくものの、アイデアそのものに権利が与えられる。
では、表現とアイデアの違いは何だろうか。
表現というのはアイデアを外部に具体的に表したものを指し、小説であればその具体的な文章表現であり、ソフトウェアで言えば、具体的なプログラムの表現を指す。
逆に言えば、著作権では具体的なプログラムの表現は保護されるが、仮に同じアイデアから出発するものであっても、別の表現で書かれたプログラムは保護されない。分かりやすく言えば、デッドコピーなどによる権利侵害を除いては、ほとんど保護されないのである。
他方、アイデアは抽象的なものであり、ソフトウェアで言えば、サーバにおいてAステップの次にBステップ、そして次にCステップという処理を行うといったようなアルゴリズムを指す。このアイデア、すなわちアルゴリズムである限り、全て特許権でカバーされる範囲となる。
以上のようにアイデアというのは抽象的で広い範囲が保護対象となるが、表現というのは具体的でかつ狭い範囲でしか保護対象とならないのである。
ソフトウェア特許については、審査の基礎となる先行文献の集積が整っていない過去の時代において、本来は特許されるべきでなかったものが特許されたりしたことから、ソフトウェアの技術的発展を阻害すると考える人たちがソフトウェア特許反対論を起こしたこともある。
しかしながら、最近では審査資料も充実した結果、ソフトウェア特許は安易に特許されなくなっている。新規でかつ同業者が容易に思いつかないような有用なアイデアであれば、ソフトウェアの分野であっても当然それは保護されるべきであるという考えが主流となるような状態に落ち着きつつあるのが現在の状況と言ってよいであろう。
経営者としても特許に値するソフトウェア発明が社内で生まれるようであれば当然その特許権の取得の可能性を考慮すべきであろう。
なお、ソフトウェアと知的財産に関する法律及び実務に関しては、「ソフトウェア知的財産」(発明協会、加藤浩一郎著)に分かりやすく書かれているので、参照されたい。
(イラスト:牧瀬洋)
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