「NHKの受信料を支払うのは、国民の義務だ」と書くと、NHK受信料について疑問を感じている方々からお叱りをいただくとは思うが、放送法には「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と書かれているのだから、少なくともテレビをもっている人は、受信契約をして受信料を支払う義務がある。もちろん、私もNHKのあり方に全面賛成しているわけでなく、それどころか問題は多いと思うが、法律で定められている以上、支払った上で放送法を改定するように声をあげていくのが筋だ。

支払うべきものを適切に支払うのは国民の義務だが、同時に「支払わなくていいものは適切に支払わない」権利もある。ということで、今回はNHKの受信料を節約する方法をご紹介しよう。

NHK受信料にはさまざまな免除規定、割引規定が用意されているが、意外に知らない人が多いようだ。NHKが割引制度に関して、どれほど積極的に告知しているかはわからないが、私の経験では、こちらから申請しない限り、あまり積極的に知らせてはくれないように見える。まあ、膨大な数の契約者がいるのだから、いちいち個々の事情まで把握できないというのもわからないではない。

というわけで、このような割引制度を利用するには、こちらから積極的に調べて、申請をする必要があるのだ。

まずはテレビ、録画機などが複数台ある場合。テレビであっても、録画機であっても、チューナーであっても、それぞれにB-CASカードが入っている。そのままなにもしないで使い続けていると、NHKのBS放送画面に受信料契約の案内の字幕が現れるようになる。これを消すためには、NHKと受信契約を結ばなければならない。付属の書類に記入するか、NHKのコールセンターに電話するのが手っ取り早いが、うっかりすると、3台の機器があれば3契約を結んでしまうことがある。NHKの受信料は、1世帯1契約結べば、テレビなどの機器は何台あってもかまわないので、コールセンターに電話して名寄せ作業をしてもらい、1契約に集約してもらう必要がある。

ただ、この件については、今の家庭では複数台のテレビ、録画機などがあることが普通なので、NHKコールセンターでも積極的に「すでに契約を結ばれていませんか?」「テレビや録画機など、他にも機器がございますか?」と、1契約でかまわない旨を積極的に告知してくれるので、不必要な契約を結んでしまっている人はほとんどいないと思う。しかし、受信料節約の第一歩だから、新しいテレビや録画機を購入した場合は「1契約でかまわない」ということを頭に入れて、NHKのコールセンターに電話をしよう。

いちばんうっかりしているケースが多そうなのが、家族割引。単身赴任や子供が遠方の学校に通うためにアパートを借りている場合などに利用できる。また、別荘や別宅をもっている場合も適用が可能だ。割引を適用しない場合、家族が2ヶ所に住んでいて、それぞれにテレビがあるのであれば、2契約分の受信料を支払わなければならない。しかし、割引を適用すれば、片方の分の受信料が半額になるのだ。

ただし、条件がいろいろあって、大きいのは「同一生計」ということだ。別荘をもっている、単身赴任をしているという場合は、同一生計なのだからなんら問題はない。しかし、学生が遠方の大学に通うためにアパートを借りた場合などで、学生がアルバイトなどをして自分で生活費を稼いで生活しているということもあるだろう。この場合は、同一生計とはいいづらくなるが、生活費の一部を仕送りしている、あるいは生活費は子供が自分で捻出しているが、学費は親が支払っているなど、金銭的な支援の実態があれば、同一生計として認めてもらえるようだ。

この家族割引で盲点になりがちなのが、引退した親世代と現役の子供世代が離れて暮らしている場合だ。それぞれに生計を立てている場合は、家族割引の対象にならないが、親世代は年金と貯金で暮し、それを補うために子供が親に仕送りをしているなどという場合は家族割引の対象となるケースがある。では、いくらから認められるのか。月1000円の仕送りでもいいのかとなると、ちょっと私ではわかりかねる。おそらく、NHK側でも事情を聞いた上で、常識的な判断をするだろう。一般的には、月1000円の仕送りでは「受信料割引を適用したいがための偽装仕送り」と受け取られるだろう。ただ、親に定期的に仕送りをしている人は、申請をしてみる価値はあると思う。

この家族割引を受けるには、どちらか片方が両方分の受信料を一括して支払うことと、銀行口座引き落としかクレジットカード払いなどの自動支払いにする必要がある。NHKとしては、人を派遣して集金をするのはコストがかかるので、割引をする代わりに自動支払いに切り替えてもらいたいわけだ。

家族割引を受けるには、NHKコールセンターに電話する、あるいはNHK受信料の窓口のサイトのフォームから申しこむと、申請書と詳しい説明書が郵送されてくるので、記入し、必要書類を添付して申請をする。

もうひとつ盲点になりがちなのが、二世帯住宅だ。最近の二世帯住宅は、建物はひとつだが、ドアも別々、生活空間も完全に分離されているというケースも多い。あるいは、土地に余裕がある場合などは、同じ敷地内に別の建物を建てて分かれて住んでいる場合もあるだろう。このようなケースでは、多くの人が、別々に受信料契約を結んでいるのではないかと思われる。しかし、これも生計が同一であれば、1契約で済む可能性があるし、家族割引が適用できる可能性もある。

キーワードは「同一生計」だ。たとえば、二世帯住宅であっても、食事どきは親世帯が子世帯のダイニングにきて、一緒に食事をし、生活費はすべて子世帯が支出しているというような場合は、建物の構造は二世帯住宅であっても、生計は同一なのだから、受信料は1契約で問題がない。同じ敷地内の別棟に住んでいても同じだ。また、親世帯、子世帯のいずれかがすべての生活費を支出していなくても、親世帯と子世帯が一定割合ずつ負担しあっているなどという場合も、同一生計だから、受信料は1契約で問題ない。

また、二世帯住宅で、生計を別にして暮らしている場合でも、どちらかが生活費の一部負担を定期的にしているのであれば、家族割引が適用される可能性がある。

このあたりも、個々のケースの判断は難しいので、NHKのコールセンターに電話して、事情を話して相談してみるといいだろう。

この他に、全額免除、半額免除という制度もある。ただし、これは公的扶助を受けている人と、障害をもっている人向けで、さまざまな支援団体が受信料免除についても教えてくれるだろうから、うっかり制度を見逃している人というのはそうは多くないだろう。ただし、NHKではこの全額免除、半額免除の対象を定期的に広げている。以前は免除対象外だったが、今は対象になっているという例もあるかもしれない。一度、NHKのサイトやコールセンターで確認してみるのもいいだろう。

このコラムでは、地デジにまつわるみなさまの疑問を解決していきます。深刻な疑問からくだらない疑問まで、ぜひお寄せください。(なお、いただいた疑問に個々にお答えすることはできませんので、ご了承ください)。

NHK受信料について正確な情報が知りたい場合は、NHKの「受信料の窓口」を訪れてみよう。契約手続や支払い方法の変更などもできるようになっている

家族割引については、「受信契約・住所変更」の中の家族割引のコーナーに詳しい解説がある。家族割引が適用できるのに、していないという例は多そうなので、堂々と活用すべきだ。単身赴任、就学のためにアパートを借りている、親に仕送りをしているなどのケースで適用できる可能性がある