いよいよアナログ停波の7月24日が迫ってきて、アナログテレビが粗大ゴミになるカウントダウンが始まってきた。古いアナログテレビをどうやって捨てたらいいのか。前回は、販売店に引き取ってもらう方法と、自分で指定リサイクル工場にもちこむ方法を紹介した。

販売店、自治体、自分で持ちこみのいずれのルートでも、最終的にはメーカーのリサイクル工場にテレビは運ばれる。ここでは、テレビが部品単位まで分解され、新しいテレビを製造するのに利用される。このようにして再利用されるのは、ブラウン管テレビで86%、薄型テレビで74%(平成21年)だから、かなりの部分がリサイクルされている。残りは産業廃棄物として処理される。かなり高いリサイクル率だが、古い部品をそのまま新しいテレビの製造に流用するというわけではない。プラスティック、ガラス、レアメタルなどの素材ごとに再資源化して利用するというのが基本だ。

リサイクルにはもうひとつ考え方があって、「修理して使えばいいじゃないか」という発想のリユースだ。あるいは、部品をとりだし、修理用部品に使ったり、使える部品を組み合わせて再商品化して販売するということも考えられる。こちらに重きを置いてリサイクルをおこなっているのが、民間の回収業者だ。

「古いブラウン管テレビなど、だれが買うのか」と思われる人もいると思うが、けっこうな需要はあるのだという。たとえば、国内でも、監視カメラの映像モニター用としてそれなりの需要がある。また、世界に眼を向けると、ブラウン管テレビの需要というのはさほど落ちていないのだ。日本国内では、ブラウン管テレビはほとんど売れていない(というより製造されていない)が、中国、インド、ロシアなど経済成長している国では、ブラウン管テレビの需要は増え続けている。もちろん、一部の都市の富裕層の間では、薄型大画面の液晶、プラズマテレビに人気が集中しているが、農村などではまだまだブラウン管テレビが主流。さらに、農村もしだいに裕福なり、「一家に一台」から「一人に一台」に移り始めている。2台目、3台目のテレビとして安価なブラウン管テレビの需要がまだまだ強いのだ。

しかも、今、日本では「まだまだ使えるテレビ」がゴミとしてリサイクルに回されている。回収業者は、このような使えるテレビはクリーニングをして再商品化し、使えないテレビも修理をして再商品化、さらに使える部品を修理用部品として再商品化、どうしようもないテレビを分解して、プラスティック、レアメタルなどを再資源化するという方法で利益をあげている。

特に「使えるテレビをクリーニングして再商品化する」という部分の収益が大きく、このような回収業者のほとんどは、無料回収をしても収益があげられるのだ。

といっても、現実はそう計算通りにはいかない。中古テレビの価格はどんどん下がっており、回収業者のだれもが収益があげられるわけではない。やはり厳しい企業努力が必要になってくるのだ。そこで、違法行為に走ってしまう悪徳業者も出没するというわけだ。

消費者庁のプレスリリース。グローバルマネジメント社への業務停止命令をだした内容だが、具体的な事例がいくつも書かれていて、読み物としても面白い。消費者庁のサイトの「公表資料」のコーナーから閲覧ができる

昨年8月には、神奈川県の回収業者「グローバルマネジメント」に、消費者庁が6ヶ月間、訪問販売の業務停止命令をだし、宮城県警に特定商取引法違反で告発するという事件が起きた。業務停止命令の根拠となったのは、その勧誘の方法にあった。この回収業者は、路上で「無料回収」というアナウンスを流していて、呼び止められると、真っ先に回収品をトラックに積みこんでしまう。その後、高額な回収料金を提示する。消費者が「話が違う」と断ると、「すでにトラックに積んでしまった。おれの手間はどうなるんだ」と圧迫的な態度で不利な契約を結ばせようとする。また、消費者が指定しない再販価値の高い品物まで、どんどんトラックに積んでしまい、むりやり回収をしてしまうという苦情もあったという。

このグローバルマネジメント社がどのような経緯で、このような強引なやり方をするようになったのかは不明だが、回収業者も無料回収だけでは利益が出づらくなっていて、強引にでも費用を徴収したり、再販価値の高い商品を無理やりにでも集める必要がでてきているのだろう。

良心的な回収業者も多いとは思うが、悪徳、強引な業者が増えているのも事実。利用する場合は、くれぐれもよく確かめてからにしていただきたい。路上を流している回収業者を利用する場合のチェックポイントは次の5つ。

  1. 最初に「ほんとうに無料なんですか?」と尋ねて、品物も見ずに「はい」と答える業者はアウト
    基本的に良心的な回収業者は無料でテレビを引き取ってくれるが、すべてのテレビではない。あまりにも年式が古いテレビは有料回収になるか、回収できないというケースもある。良心的な業者は「基本的には無料ですが、一部有料のテレビや回収できないテレビもあります」ときちんと答えるはず。また、一律数百円程度の手数料、運搬費を徴収する業者もあり、その場合は「リサイクルは無料ですが、手数料が1件500円必要です」ときちんと答えるはず。それを「はい、完全無料です」と品物を見る前から答えてしまう業者は、その時点で避けた方が無難。品物を積んでしまってから「回収は無料だが、運搬費が3万円必要」などといいだす可能性がある。

  2. 話を始める前に、企業名、企業の住所、連絡先を明示しているか
    勧誘に先だって明示する必要がある。ただ社名を告げるだけでは不充分で、名刺、名札、パンフレットなどを渡すか提示する必要がある。これをしないのは、明確な法令違反。

  3. 品物の積みこみの前に料金メニューを提示しているか
    良心的な業者は、料金メニューが明確になっている。テレビの年式、型番、状態などを告げれば、料金が告げられるはず。また、運搬費、手数料など別名目の料金もある可能性があるので、「トータルでその価格になるのか」を確認する。

  4. 「国やメーカーが定めているリサイクル料金なので…」というウソをつかないか
    メーカーが定めているリサイクル料金は、メーカーのリサイクル工場で処理をするための費用。もし、回収業者がリサイクル費用を徴収したのに、メーカー指定工場に運ばず、自社工場で処理していた場合は詐欺行為になる(メーカー指定工場に持ちこんでいるのなら問題はないが、これでは回収業者は無料で運搬を代行することになり赤字になる)。もちろん、自社工場で処理するための費用として「リサイクル料金」という名目の費用を徴収してもかまわないが、料金は自社で決められる。だから、「うちの回収は無料だけど、国が定めているリサイクル料金は支払ってもらわなければならない」というのは真っ赤なウソ。

  5. クーリングオフの対象になる契約であることを告げているか
    多くの人が勘違いしているが、このような訪問方式の回収もクーリングオフの対象になる。クーリングオフは訪問販売だけでなく、訪問の役務提供(リフォームなど)や訪問の契約(回収など)も対象になる。契約内容に不満があれば、8日以内に書名で告げれば契約を白紙に戻すことができるのだ。もちろん、現実には品物が先方にいっているわけで、品物を戻してもらうのは面倒なことではあるが、クーリングオフが使えるということは覚えておいていいだろう。回収業者自らクーリングオフについて説明する義務はないが、こちらから聞いたときに「知りません」「できません」と答える業者はアウト。

あまりあれこれいうと、利用する気が失せてしまうかもしれないが、悪徳業者につかまらないためには用心深くすることに越したことはない。さらに、このような悪徳業者は横のつながりがあるという話もある。その真偽のほどはわからないが、一度悪徳業者にひっかかると、次から次へと別の業者がやってくるという話は聞く。もし、利用するにしても、良心的な業者であることを確認できてからにしよう。

ところで、テレビの無料回収は、訪問ではない業者も存在する。ネットで広告などをだし、持ちこみを基本としている業者だ。次回は、このような回収業者を紹介したい。

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