いよいよアナログ停波の7月24日が迫り、アナログテレビが粗大ゴミになるカウントダウンが始まった。報道では「テレビの不法投棄が急増」あるいは「自治体が不法投棄を警戒」という記事が増えてきた。

なぜテレビを不法投棄してしまうかというと、「リサイクル料金がかかるから」というのが主な説明。しかし、私は、そのような金銭的理由よりも、「どうやって捨てたらいいのかがわからない」ということもあるのではないかと思う。今回は、アナログテレビをどうやって捨てたらいいかを紹介しよう。もちろん、無料で廃棄できるお得な方法もご紹介する。

新しいテレビに買い替えるときは、古いテレビの廃棄については、あまり頭を悩ませる必要はない。テレビを購入した販売店で、引き取りをしてくれるからだ。ただし、このときに「リサイクル料金」と「運搬手数料」というふたつの金銭的な負担が必要になる。

リサイクル料金は、リサイクルに必要になる経費。古いテレビを引き取った販売店は、そのテレビをメーカー指定のリサイクル工場に運びこむ。リサイクル工場では、リサイクル処理をして、利用できる部材やレアメタルを再資源化し、残りは産業廃棄物として適正に処分をする。リサイクルから生まれた資源は新しいテレビの製造に利用できるが、それでもリサイクルにかかるコストがかかるために、消費者にリサイクル料金を負担していただくという仕組みだ。このリサイクル料金はメーカーと機種によって異なり、1700円程度から4000円程度だ。

運搬手数料は、販売店が消費者の自宅から引き取りをして、リサイクル工場まで運搬する手数料。ただし、新しいテレビを配送した場合、古いテレビを代わりに載せればいいので、低く価格設定しているのが一般的だ。量販店などでは500円程度の設定が多いし、街の電器店などだと、お得意さんには無料にしているケースもある。つまり、合計で3000円から5000円程度の費用を見こんでおけばいいのだ。

ところが、問題は、新しいテレビを買うわけではなく、ただ古いテレビを捨てたいという場合だ。この場合、そのテレビを購入した販売店に回収を依頼しなければならない。街の電器店では、サービスとして代行してくれるところもあるようだが、リサイクル料金は同じものの、訪問回収費は当然ながら高くなる。回収するためだけに回収車と人員を割くのだからしかたないだろう。一般的には3000円以上、大型ブラウン管テレビ(24型以上)だと5000円程度が一般的だ。電器店にしてみれば、完全に赤字の仕事で、進んでやりたい仕事ではなく、あくまでも地域貢献、お得意様へのサービスとしてやっているところが多い。それでも、リサイクル料金と合せると、5000円程度から1万円程度かかることになるのだ。この負担は、決して小さくなく、これが不法投棄につながるひとつの原因になっている。 しかし、かかっている費用の半分以上は、運搬費であって、「自分の車でもっていくから安くできないのか?」「宅配便などを利用して、安くできないのか?」と思う人も多いだろう。もちろん、そのような方法はある。しかし、これが具体的にどうやったらいいかがわからない。わかっても、方法が複雑であるために、ついつい不法投棄へ走ってしまう人がでてくるのだろう。

まず、最初にやることは、地元の自治体=役所に電話をして、自治体が家電リサイクルをおこなっているかどうかを確認することだ。おこなっている場合は、訪問回収または指定場所への持こみをすることになる。費用は、リサイクル料金は変わらず、運搬費は公的機関だけあって、やや安めになっている。

しかし、自治体がリサイクルをおこなっていない場合は面倒だ。具体的な方法は、地域により多少異なり、自治体の方で案内をしてくれるが、自分でメーカー指定のリサイクル工場に持ちこむというのが基本だ。

まず、家電リサイクル協会のサイトで、指定引き取り場所を調べる。どこでもかまわないが、数は多くなく、またリサイクル工場ということから街の中心部からは外れている場合が多い。この指定引き取り場所に電話をして、自分のテレビが引き取り可能かどうか、いつ持ちこめばいいのかなどを確認する。

次に、リサイクル料金の支払いだ。これも家電リサイクル協会のサイトで、テレビのメーカー、型番、年式などを確認して、リサイクル料金を調べる。なぜなら、リサイクル料金はテレビによって異なっているからだ。その金額をメモして、郵便局に行き、家電リサイクル協会あてにリサイクル料金として振りこみ、家電リサイクル券を発行してもらう。この券とテレビ本体を指定引き取り場所に持ちこんで終了というわけだ。

このコラムを読んでいる方の多くにとっては、面倒なだけでたいして複雑ではないように見えるかもしれない。しかし、たとえば高齢者などにとっては、ほとんど無理ともいえる方法ではないだろうか。まず、「家電リサイクル協会のサイトで、指定引き取り場所を確認する」といっても、インターネットが使えなければもちろん調べようがない。役所に電話をすれば、口頭で教えてくれるだろうが、今度は自分でテレビのメーカー、年式、サイズを調べなければならない。裏を見れば、必ず書いてあるが、機械が苦手な人にとってはかなり戸惑ってしまうだろう。そして、さらに、車がなければどうしようもない。結局、運搬費用を支払って、訪問回収をしてもらう以外ないだろう。

ところで、こんなことに困り果てていると、表の道路を「テレビ、洗濯機、パソコンなどを無料回収いたします。壊れていてもけっこうです」という音声を流している回収車が通りかかる。ついつい声をかけてしまうのも無理はないだろう。もちろん、きちんと運営している業者が大多数だとは思うが、中には詐欺的な回収業者もいる。お年寄りがこういった悪徳業者にひかかってしまうのも無理もない状況なのだ。

次回は、このような無料回収についてご紹介したい。もちろん、悪徳業者もいるが、安心できる良心的な業者もいる。両方を紹介してみたい。

このコラムでは、地デジにまつわるみなさまの疑問を解決していきます。深刻な疑問からくだらない疑問まで、ぜひお寄せください。(なお、いただいた疑問に個々にお答えすることはできませんので、ご了承ください)。

家電リサイクル協会のサイト。自分でメーカー指定工場に持ちこみをしたい場合は、このサイトで、指定工場の場所、リサイクル料金の価格、支払い方などを確認する必要がある。手順はちょっと複雑だ。

指定引き取り場所も家電リサイクル協会のサイトで調べることができる。ただし、一県に5ヶ所程度で、数は決して多くない

リサイクル料金の振りこみは、郵便局でおこなう。メーカーのコード、品目コードなどを入力しなければならないのが面倒。郵便局にコード表が置いてあるので、そちらを参考にしながら記入しよう