【連載】
薄型テレビの価格はこの1年で大幅に下がってきている。エコポイントも考えると、実質5万円もあれば変えてしまう時代になった。3年前と比べると、半分以下か、下手をすると1/4の価格だ。消費者にとってはうれしい事態だが、メーカーにとってはつらい時期。売っても売っても利益がでないということになるからだ。そこで、登場するのが新技術。新しい技術を投入して、付加価値を高め、利益を確保しようとするわけだ。最近でも、3D、LEDバックライト、さらにはシャープアクオスの四原色「クアトロン」など、さまざまなものが登場してきている。
ところで、多くの人は3Dテレビを購入しようかどうか迷うところだろう。3D機能がないよりはあった方がいいに決まっている。問題は、一般のテレビとの価格差を支払って、その分の楽しみが得られるのかどうかという点だ。
3D映画を自宅で楽しみたい人であれば、3Dテレビはお薦め。ひとつは、3D Blu-Rayの規格はすでに確立しており、しかも3D Blu-Rayは、3Dプレイヤーで再生すれば3D映像が、普通のBlu-Rayプレイヤーで再生すれば従来通りの2D映像が再生されるという仕組みなので、レンタルDVD店への浸透もかなり速いと考えられるからだ。
また、ハリウッドは積極的に3D映画を制作し、3Dコンテンツを供給していくことは間違いない。よほど3Dが不人気だとかいう事態にならない限り、早晩3Dコンテンツは揃ってくると考えておいていいと思う。それにはハリウッドの事情がある。ひとつは、ハリウッドにとって3Dは悲願でもあることだ。ハリウッドの最大の敵は、テレビの登場だった。そこで、テレビではできない映画館だけで上映できる新技術がどうしても必要になった。3Dもそうだが、カラー映画、シネスコープなどのワイド画面、サラウンド音声、体感型シアターなど、映画にまつわる新技術はほとんどすべてが「対テレビ対抗策」だったのだ。その中でも3Dの歴史は長い。意外と知られていないことだが、アルフレッド・ヒッチコック監督、グレース・ケリー主演の「ダイヤルMを回せ」(1954年)は、3D映画として制作された。つまり50年以上も前から、ハリウッドは3D映画に挑戦し続けてきた。
もうひとつは、海賊版が結局排除できないという悩みがあることだ。DVDは事実上、プロテクトが完全に破られてしまい、コピーし放題になっていた。Blu-Rayでは高度なプロテクトがかけられ、簡単にはコピーができないようになっているが、技術は日々進歩する。未来永劫にわたってコピーされないとはだれにも保証ができない。さらに、現在多いのは、映画館の中で画面を撮影して作ってしまう海賊版だ。「そんなもの画面が暗くて、画質がものすごく悪いのではないか」と思われるかもしれないが、現在のカムコーダーは小さく性能が極めて優れている。撮影した映像を、ちょっとしたPCで補正すれば、けっこうな画質の海賊版ができあがってしまうのだ。もちろん、日本のような国の映画館の中では、カメラを設置して撮影するような大胆不敵なことはまずできない(犯罪行為)が、世界のあらゆる映画館で取り締まりをすることは不可能だ。
しかし、3D映画であれば、カムコーダーで撮影することはできない。3Dはハリウッドにとって、最高のプロテクトでもあるのだ。このような理由から、ハリウッドは3D映画をどんどん作っていくだろうし、それをBlu-Rayで供給することも積極的に行うだろう。長年、ハリウッドにとってテレビは敵であり、利益を損なう煩わしい存在だったが、3D映画では、映画館のスクリーン以外にも家庭にもスクリーンが設置されるような話で、共存共栄ができる関係になれるのである。
3Dテレビの最大の落とし穴は、「消費者から無視される」というところなのかもしれない。日本経済新聞が報じた、調査会社BCNが発表した3Dテレビの売り上げ(5月31日から6月6日までの一週間)では、金額ベースで3%が3Dテレビだったが、販売台数ベースは0.9%だった。100台に1台の割合だ。関係者によると「まずまず」の評価から「予想よりもいい」あたりの評価だが、まだまだ普及の軌道に乗ったとはいい難い微妙な数字だ。「3Dテレビがほしい」という消費者は、まだそう多くなく、「いいテレビがほしい。だったら3D機能もついているものがいい」という「ついでに買う」感覚の人が多いという。必要なのは、3D映画「アバター」のようなポテンシャルのあるコンテンツだ。ハリウッドとテレビメーカーがどこまで協力態勢を築けるか、そこに3Dテレビの命運がかかっている。
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