4月下旬は、日本ではiPad発売で大騒ぎだろうが、実は地デジ関連でも、スーパーアイテムが登場する。東芝 レグザ チューナー D-TR1だ。まだアナログテレビを使っている方だけでなく、すでにデジタルテレビを購入して、これからレコーダーの購入を考えている人は、レグザチューナーを見てから、テレビやレコーダーを考えてもいいだろう。

レグザチューナー D-TR1

この製品を「地デジチューナー」というジャンルに分類してしまうと、その素晴らしさがわかりづらくなってしまう。本質は、アナログ放送と地デジ放送の間に横たわる谷にかけられた橋的な製品なのだ。

たとえば、まだブラウン管テレビを見ている人は、「そろそろテレビ買い替えなきゃ」と思っているだろう。しかし、一方で、故障もしていないテレビを買い替えるのに抵抗感があったり、自分のせいではなく出費を強いられることに理不尽さを感じている人も多いはずだ。かといって、安価なチューナーを取りつけるのもなんだかなあと思っている人は、レグザチューナーを検討すべきだ。

地デジ、BSデジタル、CSの3波に対応しているので、これで地デジ対策はOK。しかも、USB HDDを接続(4台まで)して、ハイビジョン放送の録画もできる。HDDはどんどん安くなってきて、最近では1TBでもセールでは1万円前後で販売されている。レグザチューナーの実売予想価格が2万5000円前後だから、3万5000円ほどの予算で、地デジ+レコーダーの環境が整ってしまうのだ。

もうひとつ、ぜひにお薦めしたいのが、アナログの液晶テレビ、プラズマテレビをお使いの方。この方たちは、アナデジ問題の被害者だともいえる。薄型テレビが登場したばかりの頃に購入した人たちで、プラズマテレビなどは平気で100万円越えだった。しかし、当時は地デジチューナーは内蔵していなかったので、地デジチューナー内蔵のテレビに買い替えなければならない。納得がいかないだろう。プラズマテレビは当時だって、画質的にはかなり優れたものも多かった。しかも、未だにじゅうぶん見られる。なんの問題もない。買い替えるのにしのびない。そういう方はレグザチューナーだ。HDMI端子またはD3端子で接続できるのであれば、超解像度技術を応用した「レゾリューションプラス2」が機能して、精彩感のある映像にコンバートしてくれる。アナログ薄型テレビでも、デジタルハイビジョン画質に近い感覚で楽しめるのだ。アナログテレビをお使いの方は、レグザチューナーで地デジに対応し、アナログテレビが故障したら、デジタルテレビに買い替えればいい。「来年7月までにどうしてもテレビを買い替えなければならない」ということがなくなるので、テレビ選びの幅もぐっと広がることだろう。

さらに、すでに地デジテレビは購入したが、まだレコーダーを買っていないという人にもおすすめなのだ。今、レコーダーを買うなら、当然BD対応のものを買っておきたい。さらに、HDDの容量もできるだけ多いものを買っておきたいだろう。量販店の店員にお客のふりして聞いて見たところ、今の主流は完全に750GBか1TBになっていて、500GBのものは価格をかなり下げるなどしないと売りづらくなっているという。しかし、BD+1TB HDDとなると、やはり10万円越えだ。

しかも、最近では1TBでも容量不足だという人が出てきている。よくレコーダーの広告には「最長録画時間490時間」などと書いてあることがあるが、これはもちろん画質を落とした場合の最長時間。せっかくのハイビジョン放送なのだから、ハイビジョン画質で録画しておきたいのが当然だ。かならずカタログでHD画質モードでの録画時間をチェックしておいた方がいい(1TBで100時間ちょっとが普通)。中には「ニュースなどでは画質を落とし、ドラマや映画は最高画質で取ればいい」と考える人もいるだろうが、私の経験からいうと、途中で必ず面倒くさくなってしまう。また、HDDに録画はしたものの、なんとなく見るのが億劫だが、かといって消したくはない、いつかは必ず見るという番組もけっこう出てきてしまうので、100時間といっても、割とすぐに使い切ってしまうのだ。

これが、レグザチューナーだと4台までのHDDが接続できるので、事実上無限に容量を増やしていくことができる(4台というのは同時に4台なので、使わなくなった小容量のHDDを外して、新しく購入した大容量HDDに置き換えることが可能だ)。さらに、HDD間のムーブもできる。もちろん、番組表が表示され、そこから録画予約する仕組みなので、使い勝手は一般的なレコーダーと変わらない。レコーダーとしても、容量重視の人にとっては、もっとも低価格の製品になる。

ただし、知っておきたい欠点もある。それは、BDやDVDドライブがないということだ。レンタルやセルのBD、DVDを見るだけであれば、プレイヤーの価格は安いので別に購入すればいい(BDプレイヤーもいずれ価格は下がってくるだろう)が、BDに番組を保存したいという希望がある人は、レグザチューナーではやりようがない。もうひとつ、チューナーは3波それぞれひとつだけなので、2番組同時録画はできない。また、アナログテレビを使っている場合は、番組を見ている最中に裏番組を録画することはできない。「BD保存」「2番組同時録画」にこだわる人には、レグザチューナーはちょっと難しい。しかし、「夜帰ってきてテレビをつけても見たい番組がない」という程度の人であれば、昼間外出中に留守録をさせておき、夜にはそれを見るということでじゅうぶんなはずだ。

あと、意外な盲点かもしれないが、テレビラック裏がややごちゃつくかもしれない。レグザチューナーにUSBハブをつけて、HDDを4台接続し、USB電源で動作しないHDDを接続するのであれば、HDDの電源も取らなければならないし、さらにBDプレイヤーをテレビに接続するかもしれない。ラック裏のレイアウトをうまく考えないと、かなりのスパゲッティ状態になってしまうだろう。

このような欠点が気にならないのであれば、個人的にはいち押しの製品だ。前に紹介したソニーのPS3用地デジチューナー「トルネ」と合わせて、地デジ対策の第3の道を考えてみていただきたい。「地デジに対応する=テレビを買い替える」ではないのだ。

このコラムでは、地デジにまつわるみなさまの疑問を解決していきます。深刻な疑問からくだらない疑問まで、ぜひお寄せください。(なお、いただいた疑問に個々にお答えすることはできませんので、ご了承ください)。