2009年から販売しているPorsche(ポルシェ)の4人乗り・4ドアセダン「パナメーラ」が7年ぶりにフルモデルチェンジした。この新型パナメーラ(図1)は、常時LTEセルラーネットワークと接続され、インターネットにつながる「コネクテッドカー」となっている。

図1 ポルシェの新型パナメーラ

新型パナメーラにはLTE通信モジュールを搭載しており、クルマは常にインターネットとつながり、さまざまなサービスを受けられるようになっている。もちろん、GPSも内蔵しているため、位置情報も把握できる。この結果、Google Mapやストリートビューを12型ディスプレイ(図2)で見ることはもちろん、GPSシステムと連動させ、位置情報に交通情報をかぶせてリアルタイムで位置を更新できる。所在地の検索にもGoogleを連動できるだけではなく、音声による目的地情報なども活用できる。いわゆるパソコンやスマートフォンで利用しているサービスをほぼそのまま受けることが可能だ。

図2 新型パナメーラに搭載されている12型ディスプレイ

クルマのインフォテインメントシステムがインターネットとつながることにより、ドライバーのスマホからクルマに旅行計画や目的地を選定することが家の中からできる。つまりスマホと車両のインフォテインメントシステムの間で同期をとることが可能になる。そのためのアプリケーションソフト「Porsche Connectアプリ」をApp StoreやGoogle Play Storeからダウンロードすることができる。

さらにLTE通信モジュールは、セルラーネットワークにつなぐだけではなく、Wi-Fiゲートウェイの役割も持つ。同乗者がタブレットやPCを持っていれば、それらをインターネットにつなげ、欲しい情報を検索したり、ブラウジングを楽しんだりすることもできる。スポーツカーとはいえ4ドアセダンだけに後部座席(図3)に乗せた家族とのドライブの楽しみ方ができる。

図3 後部座席にはディスプレイもある

AudiはBluetoothで携帯電話やiPodなどの携帯音楽プレイヤーとつないだり、ハンズフリー電話やクルマのステレオシステムともつないでスマホや音楽プレイヤーのコンテンツをクルマのステレオで聴くことができるが、通信速度の点ではBluetoothよりもWi-Fiの方が速いため、ポルシェのほうが応用は広いといえる。Bluetoothだと音楽や通話程度しか使えないという制限がある一方で、Wi-Fiは同乗者のデバイスをネットに接続して、新たな楽しみを見つけることが可能となる。

LTE通信モジュールによるインターネット接続については、レストランや航空機の予約といったサービスを提供するコンシェルジェサービスも2017年1月から導入される予定だ。これはクルマからサービス業者のオペレータと会話してレストラン情報などを聞くもの。ただし、2018年から欧州で販売される新車には設置が義務付けられるeCallサービスには対応していない。eCallサービスは、常にインターネットとの接続を通じて「交通管理センター」につながっており、万が一事故を起こしてドライバーが意識を失っても救急車が即座に駆けつけてくれることによって、命を救うというもの。2017年の発売ではまだ対応できない。

新型パナメーラの技術として、LEDヘッドライトにインテリジェント照明が使われている。可視光カメラと赤外線カメラを搭載し、前方を見て人や動物など35~40℃の体温を持つ生物を光が届かない場所でも検出する。いわゆるナイトビジョン機能だ。検出したら12型ディスプレイに人や動物の姿を黄色い枠で囲み、ドライバーに認識させる。人や動物にさらに近づくと、ディスプレイ上で警告を発する。同時に歩行者にも短時間照らして注意を促す。

最近のクルマは、前方に対向車を検出したら、その部分だけのハイビームをロービームに落とすというスマートライティングシステムを採用し始めている。新型パナメーラも合計84個のLEDヘッドライティングを用いている。84個のLEDは前方を照らすシーン全体を分割して照らすため、対向車を照らす部分のLEDを自動的にロービームに落とす。これは、搭載されたカメラを活用したもので、カメラで対向車をとらえた領域を照らすLEDのブロックだけを消すことで全体はハイビームのままでも対向車に対してはロービームとなり、ライトの切り替え作業を行わなくても、まぶしく感じさせずに済ませることができる。

図4 新型パナメーラのヘッドランプ。合計84個のインテリジェントLEDヘッドライティングシステム。カメラで対向車をとらえると、自動的にその領域だけ、ロービームに切り替えることができる

また、新型パナメーラには、4隅にセンサを配置し、近づくクルマを検出し警告を鳴らす機能もある。ただ、センサが20数GHzのミリ波なのか超音波なのかは明らかにしていない。2017年2月より納入が始まる予定である。