総務省が2016年に公表した「平成28年版情報通信白書」では、クラウドサービスを全面利用、一部利用、もしくは今後利用する可能性があると回答する企業の割合が59.5%と半数以上に達していることを報告しています。クラウドファーストの波は、もはや流行ではなく、本質的に訪れているといえるでしょう。

こうした時代の変遷を見定め、全国2,000か所を超える店舗、事業所のIT支援実績を持つ株式会社エヌワークでは、従来のオンプレミスを主とした事業モデルのクラウドシフトを検討しています。実は同社は、これまで幾度かクラウドシフトを検討したものの、その都度それを見送ってきた経緯を持ちます。クラウドインテグレーションの技術、ノウハウを独力で身につけなければならないことが大きな障壁となっていた中、同社ではマイクロソフトの提供するクラウドスターターパックを契約し、クラウドシフトに向けた挑戦を再開。わずか4か月という短期間で、クラウド時代にも対応できる事業体制を整備しました。

株式会社エヌワーク

プロファイル

1973年の設立後、大手家電量販店のPOS関連システムの開発、運用を担い続けてきた株式会社エヌワーク。そこで培ったノウハウを活用し、同社は流通業や製造業、外食産業など、多様な業界に対するシステム開発とソリューション提供に取り組んでいます。

導入の背景とねらい
本質的なクラウドファースト時代の到来を受けて、事業のクラウドシフトを検討

クラウドコンピューティングの普及、浸透によって、IT業界の構造そのものが変革しつつあります。ITシステムを構築する場合、かつてはハードウェアを設備内に設置し、ネットワークを張り巡らせてそれらを構築、運用することが不可欠でした。しかし昨今のITシステム構築では、クラウドの活用を第一に考える「クラウドファースト」が、多くの企業の方針として掲げられています。

企業のITインフラに携わってきたSI(システムインテグレーション)事業者もまた、クラウドの波への対応が強く求められています。しかし、従来のシステム、ネットワーク構築とは異なるノウハウがそこで必要となることもあり、戸惑う事業者も少なくありません。こうした状況の中、Microsoft Azureを効果的に活用することで、ビジネスのクラウドシフトを実現しているのが、株式会社エヌワーク (以下、エヌワーク) です。

エヌワークは全国2,000か所を超える店舗、事業所のIT支援実績を持つSI事業者です。大手家電量販店の流通ネットワークを長年担当している同社は、そこで培ったノウハウを活かした受託開発とその運用管理を主軸に、小売業だけでなく製造業や病院など幅広い顧客から高い評価を獲得しています。

株式会社エヌワーク 取締役 情報通信本部長 堀場 敦氏

株式会社エヌワーク 情報通信本部 ネットワークソリューション部 部長 小木曽 直幸氏

近年は事業拡大に向けて、ソリューション ビジネスにも注力する同社ですが、エヌワーク株式会社 取締役 情報通信本部長 堀場 敦氏は、受託案件とソリューション ビジネス双方のプラットフォームとして、クラウドの有用性が大きく高まっていると語ります。

「クラウドファーストという言葉が示すとおり、近頃はITシステムを構築する場合、あるいはパッケージ ソリューションを検討する際に、クラウドという選択肢が真っ先に挙がるようになりました。これは『流行だから』というスタンスではなく、お客様自身で情報を集め、クラウドに対して検討を重ねたうえでの判断です。こうしたお客様側のクラウドに対するリテラシーの高まりは、大きな変化だといえます。当社では業務遂行に不可欠な商用サービスの基盤を支援する場合が多いため、従来は信頼性を懸念して、なかなかクラウドへの舵を切ることができませんでした。しかし、技術の進化やお客様側のリテラシーも高まるにつれ、近年、商用システムの案件でもクラウドを選択する事例が現れています。いよいよ事業をクラウドシフトすべきときが到来したのだと感じていました」(堀場氏)。

堀場氏の言葉にも表れるように、エヌワークは過去、事業のクラウドシフトを検討したことが幾度かありました。しかし、当時はまだクラウドへの理解を顧客側に得ることが困難であり、またクラウド環境でのシステムインテグレーションに自社が対応するための障壁も高く、クラウドシフトを見送ってきたといいます。この障壁について、株式会社エヌワーク 情報通信本部 ネットワークソリューション部 部長 小木曽 直幸氏は次のように補足します。

「コンピューティング、ネットワーク、ストレージ、アプリケーションと、総合的なSIを当社は提供していますが、中でもネットワーク技術は、他店舗間のセキュアな接続を構築、運用してきた我々ならではの強みだといえます。一般にはあまり知られていないことですが、実は回線事業者ごとに接続に必要となる知識や技術、あるいは作法が異なっています。こうしたノウハウを持っていることが、お客様が当社をお選びになる理由にもなっているのです。オンプレミスの場合はこの優位性を最大限に活かすことができるのですが、クラウドの場合、クラウド事業者と通信事業者の組み合わせやその特徴をまず把握する必要があります。まったくのゼロからこれを身につけなければならず、大きな工数負荷が予想されました」(小木曽氏)。

システム概要と導入の経緯
クラウド スターターパックによる密な支援によって、クラウドシフトをスムーズに推進できると確信

障壁の高さからクラウドシフトを見送ってきたエヌワークですが、クラウドへのユーザー理解は日に日に深まり、時代は着実にクラウド化の方向に進んでいます。このクラウド化の波は、ソリューションビジネスを強化するエヌワークにとっても追い風といえる状況をもたらしていました。しかし、商用サービスとしても通用する高品質なクラウドインテグレーションを提供するためには、当然、社内のエンジニアがクラウドに関する十分な知識、技術、作法を習得していなければなりません。

かつて障壁に阻まれたエヌワークが事業のクラウドシフトに向けて再び走り出したのは、2016年5月のことです。そのきっかけとなったのは、日本マイクロソフトが国内のSIやISVを対象に提供する「クラウドスターターパック」の存在でした。

株式会社エヌワーク 情報通信本部 情報通信営業部 部長 多田 裕行氏

株式会社エヌワーク 情報通信本部 ネットワークソリューション部 ネットワーク支援課 鷲見 健一氏

同ソリューションは、Azureの技術トレーニングやアプリケーション移行支援サービスなどをパッケージで提供するもの。マイクロソフトの担当者から案内を受けた際の印象について、株式会社エヌワーク 情報通信本部 情報通信営業部 部長 多田 裕行氏は、次のように当時を振り返ります。

「話を聞いて真っ先に感じたのは、当社のようなパートナーへの支援がとても充実している、ということでした。『クラウドスターターパック』として目に見えるソリューションが存在することも然ることながら、電話でお願いした数分後には情報をメールで連絡いただけるなど、営業担当や技術部門のQA(品質保証)が驚くほど迅速かつていねいだったのです。過去にクラウドシフトを検討した際もいくつかの事業者へ問い合わせをしましたが、これほどの対応力を持った事業者はなく、独力でノウハウを身につけるしかないと思っていました。自社だけで技術、知識を蓄積することはどうしても限界があり、それがビジネス シフトを躊躇する要因でもあった中、マイクロソフトからこれだけ強固なサポートを受けられるならばクラウドシフトを安心して進められると判断しました」(多田氏)。

クラウドスターターパックの案内を受けた翌月、エヌワークは同ソリューションの採用を決定。事業のクラウドシフトをこれほどすばやく決断できた背景には、多田氏が感じたサポート面の充実に加えて、マイクロソフトのクラウドをプラットフォームとすることが事業自体の価値を高めるという期待もあったといいます。株式会社エヌワーク 情報通信本部 ネットワークソリューション部 ネットワーク支援課 鷲見 健一氏は、この点について次のように説明します。

「当社では商用サービスの多くでWindows Serverを利用しています。これは信頼性の面でOSSに懸念を抱くお客様が一定数いること、高い信頼性を持つWindows Serverでのシステム稼働を多く希望いただくことが背景にあります。リテラシーが高まってきているとはいえ、当社のお客様にはまだまだ、クラウドに対してセキュリティや可用性といった面を不安視するお客様がいらっしゃいます。しかし、Windows Serverを提供する『マイクロソフトのクラウド』ならば、信頼性についてゼロから説明しなくてもすぐに納得してもらえると考えました。当社で今後展開していくソリューションビジネスの信頼性を高める意味でも、Azureをプラットフォームとすることは大きな意義があったのです」(鷲見氏)。

導入効果
事業のクラウドシフトが、高付加価値なサービス提供の実現性を高める

エヌワークではクラウドスターターパックの契約を完了した2016年7月より、社内エンジニアのトレーニングを開始。日本マイクロソフトの名古屋オフィスに40名以上を派遣して2日間にわたる技術指導を受けるなど、クラウド上でシステム開発を進めるための教育を一気に進行しました。トレーニングを経た10月には、当初オンプレミスでの提供を予定していた新サービス「店舗障害アラート通知サービス」について、Azureを提供基盤としてサービス提供することを決定。それからわずか1か月後には、同システムをサービス インしています。

契約から第一のサービスを提供開始するまでの期間は、4か月かかりませんでした。ここまですばやくクラウドシフトを進めることができた理由として、堀場氏は、マイクロソフトの密な技術支援を挙げます。

「マイクロソフトの支援プログラムを経たことで、クラウドインテグレートに必要な基礎技術を迅速に習得することができました。トレーニングからそれほど間を空けずに『店舗障害アラート通知サービス』の開発に着手しましたが、基礎技術とWeb上に充実している技術ドキュメントを参照するだけで、概ねの作業は進めることが可能です。仮に自力では難しいとなった場合でも、マイクロソフトにていねいにサポートいただけるため、大きな安心感がありました。クラウドでのシステム開発は初の試みでしたが、従来の開発と比べて遅延がないどころか、1か月というきわめて短期間でのサービス インを実現しています」(堀場氏)。

クラウドでのシステム開発はあくまで手段であり、本当に目指すべきは高付加価値なサービスの提供にあります。オンプレミスでのシステム開発では、まずサーバーのサイジングや調達を経て初めてプロジェクトがスタートしますが、クラウドではハードウェアの調達を必要とせず、大幅な短期化が可能です。こうしたクラウドならではの迅速性、拡張性といった利点は、今後ソリューション ビジネスを展開していくうえで特にメリットが大きいと、小木曽氏は笑顔で期待を寄せます。

「ソリューションビジネスの成功において重要なことは、サービスインまでのリードタイムです。新サービスではその時々の社会課題やニーズを踏まえたものを提供するわけですから、いかに早くサービスを提供できるかが成否を分ける鍵となります。また、ニーズがあると考えて提供しても反響がほとんどなかった、というケースも往々にして発生しますが、クラウドならば早期に開発するだけでなくサービスを即座に止めることもできます。大きな反響があった場合には、リソースを拡張することも可能です。AzureはAzure Web AppsやAzure SQL DatabaseといったPaaSも充実しており、開発や機能拡張をスムーズに進めることができるでしょう。今後Azureを使いこなしていくことで、高い価値を持ったサービスを提供するまでの期間を最小化できると考えています」(小木曽氏)。

今後の展望
オンプレミスでは不可能だった領域のサービスを具現化し、さらなる事業拡大を目指す

事業のクラウドシフトは、従来は実現できなかったソリューションの提供も可能にします。そのひとつとして挙げられるのが、BCP対策です。近年、東日本大震災や熊本地震などの自然災害が多発していますが、クラウドを活用することにより、有事の際にもシステムの稼働を維持する環境を構築することが可能です。

既にエヌワークでは、災害が起きた際に『各店舗の営業可否』『施設の被害状況、交通インフラの稼働状況の可視化』といった状況が確認できる"広域災害時店舗状況確認ツール"の開発に着手しています。こういったサービスはオンプレミスを主とした従来の環境下では企画自体が難しく、クラウドシフトによる大きな成果だといえるでしょう。

また、オンプレミスの場合、リソースの背景から一定期間内で対応できる案件数には限りがあります。一方、ハードウェアや下層レイヤーの管理が不要なクラウドであれば、従来よりも省リソースで案件対応が可能です。こうした利点も、エヌワークがクラウドシフトの推進によってソリューションビジネスや受託開発の顧客数を拡大していくうえで、有効に機能していくに違いありません。

堀場氏は、こうしたクラウドシフトによる事業の拡大構想について、ハイブリッドクラウドをキーワードに挙げて説明します。

「現在開発を進めている『契約書管理システム』についても、Azureでの提供を予定しています。こういったソリューションビジネスだけでなく、受託案件についても積極的にクラウドを組み合わせて提案していきたいと考えています。受託案件の場合、全システムをクラウド上におくことは現実的ではありません。オンプレミスと連携したハイブリッドクラウドをとるお客様も増えていくでしょう。そこに向けて、現在、クラウドとオンプレミスの両システムを一元管理できるOMS(Microsoft Operations Management Suite)について、採用を見据えた検証を進めています。Azure という信頼できるプラットフォームのもと、お客様が扱う重要な情報を安全に運用するためのサービスを、安定的に提供していきたいと考えています」(堀場氏)。

大手家電量販店のシステム開発、運用で培った技術を、製造業や病院など多様な業界へ横展開することで事業を拡大してきたエヌワーク。蓄積した技術をもとに新たなサービスを創造できる同社の強みは、Azureという新たなプラットフォームの獲得によって、さらなる価値を社会に生み出していくでしょう。

「マイクロソフトの支援プログラムを経たことで、クラウドインテグレートに必要な基礎技術を迅速に習得することができました。トレーニングからそれほど間を空けずに『店舗障害アラート通知サービス』の開発に着手しましたが、基礎技術とWeb上に充実している技術ドキュメントを参照するだけで、概ねの作業は進めることが可能です。仮に自力では難しいとなった場合でも、マイクロソフトにていねいにサポートいただけるため、大きな安心感がありました。クラウドでのシステム開発は初の試みでしたが、従来の開発と比べて遅延がないどころか、1か月というきわめて短期間でのサービスインを実現しています」



株式会社エヌワーク
取締役
情報通信本部長
堀場 敦氏

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