「開かれた議会」の実現に向けた各自治体の活動を「議会映像のインターネット配信」で支援する、株式会社ジェイ・フィット。同社のサービスは、利用自治体の数において、業界トップレベルのシェアを誇っています。これまで同社では、Windows Serverが備えるWindows Media Servicesで構築したオンプレミス環境のシステムで同サービスを提供してきました。しかし、顧客となる自治体、および映像を閲覧するユーザーの増加を背景に、同基盤を見直す必要が生じたといいます。

提供基盤の見直しが必要となった理由は、ユーザー数増加に伴う「稼動性担保に求められるIT要件の増幅」と、モバイルデバイスの浸透に伴う「マルチOS対応」の2点です。株式会社ジェイ・フィットではこれらを解決すべく、パブリッククラウドの採用を前提に検討を進行。複数サービスを比較検討した結果、ビデオストリーミングがフルマネージのPaaSとして提供される点を評価し、Azure Media Servicesの採用を決定しました。同社はAzure Media Servicesを採用したことで、サービス提供の安定化とマルチOS対応、そして、今後のサービス品質向上に向けた拡張性の確保を実現しています。

株式会社ジェイ・フィット

プロファイル

会議、イベント、広告などのライブ中継、オンデマンド配信といった、映像配信にかかわる総合的なサービスを提供する、株式会社ジェイ・フィット。地方自治体での実績を数多く持つ同社は、議会映像配信の分野におけるリーディング カンパニーだといえます。同社は今後も、社是である「すべては、お客様のために」のもと、映像にまつわるお客様の課題を支援していきます。

導入の背景とねらい
自治体から得る高い評価を継続するうえで、稼動性の向上とマルチOS対応は必須だった

住民から信頼を得る「開かれた議会」の実現に向けた活動が、全国の自治体で進められています。議会における傍聴席の設置、議会報告会の実施などに加え、近年は、ICTを活用することでいっそうの「透明化された情報公開」を目指した取り組みも活発化しています。こうした各自治体の活動を、議会映像のインターネット配信というアプローチから支援しているのが、株式会社ジェイ・フィット(以下、ジェイ・フィット)です。

ジェイ・フィットが2004年から提供する「インターネット議会映像配信サービス」は、新しい情報公開のしくみに敏感な自治体が利用する、業界をリードするサービスといえます。インターネット動画配信の台頭ともいえる「YouTube」の登場が2005年であることからも、黎明期より映像配信事業を展開する同社の歴史がうかがえるでしょう。

株式会社ジェイ・フィット 技術部 部長 西本 由之氏

株式会社ジェイ・フィット 技術部 部長 西本 由之氏は、同サービスの提供を開始した背景と、多くの自治体から選ばれる理由について、次のように説明します。

「当時、ICTを活用した議会の情報公開としては、Webサイトでの会議録の掲載くらいしかありませんでした。当社では、視聴者へ議場の生の臨場感をライブ映像で提供することが開かれた議会の支援につながると考え、まだストリーミング配信のサービスが一般化していない2004年よりサービスを開始してきました。長年のサービス提供で培った技術とノウハウを最大限に発揮し、会場や設備の事前点検から配信運用まで一気通貫したサービスを提供できる点が、当社サービスの強みだと考えています。ネットワーク技術の発展に伴って市場ニーズも高まり、現在は多くの自治体やすそ野の広がった視聴者から利用されるサービスへと成長しています」(西本氏)。

同サービスは、録画映像をオンデマンドで配信する「VOD(Video On Demand)」と、議会の模様を生中継する「ライブ配信」の2種類の配信方式に対応しています。ジェイ・フィットではこれまで、Windows Serverが備えるWindows Media Services(Windows Server 2008 R2まで搭載)で構築したシステムをもって、サービスを顧客へ提供してきました。しかし、顧客数の増加や閲覧するユーザー側の変化を受け、提供基盤の見直しが必要になったといいます。

西本氏は、次のように当時を振り返ります。

「これまではデータセンターに構築したオンプレミス環境をサービス基盤としてきましたが、議会映像を閲覧するユーザー数が大幅に増加したことで、ネットワークやサーバーのキャパシティに対する先行きの不安を感じていました。特に致命的なのが、"リアルタイムの情報提供"という意義自体を損失するライブ配信の運用トラブルであり、この発生だけは絶対に避けねばなりません。しかし、閲覧ユーザーの傾向はたいへん予測しづらく、サーバーやネットワーク側のリソースを増強するにしても、サイジングが非常に困難でした。そのため、当時の基盤のまま運用を継続するのではなく、スケーラビリティを持ったインフラの採用など提供基盤自体を見直すことが根本的な解決になると考えたのです」(西本氏)。

こうした稼動性にかかわる部分とは別に、ユーザーが使用するデバイスが多様化してきたことも、提供基盤の見直しを計画した動因にありました。これまでユーザーが動画を閲覧する際、その多くではWindows PCが利用されてきました。しかし、スマートフォンやタブレットデバイスが普及したことで、各種モバイルデバイスからも快適に視聴可能な環境を整備する必要が生じたのです。同社のサービスは自治体から高い評価を得ています。この評価を今後も継続していくには、マルチデバイス、マルチOSへの対応が必須といえました。

株式会社ジェイ・フィット 技術部 古屋 大亀氏

この点について、株式会社ジェイ・フィット 技術部 古屋 大亀氏は、次のように説明します。

「マルチデバイス、マルチOS対応というニーズが増え始めたのは、2010年ごろです。しかしそこへの対応は、単にシステムを構築するだけでは果たせません。構築後も、頻繁に登場する多種多様なデバイス、定期的にアップデートが繰り返されるOSにその都度最適化していく必要があるのです。エッジ キャッシングやレイヤー構築との連携なども検討する必要があり、これを従来のサービス基盤、運用人員で実現するのはきわめて困難でした。また、Windows Media Servicesが2020年にサポートを終了することもアナウンスされていたため、サービス提供を今後も継続していくには配信のしくみ自体を見直す必要がありました」(古屋氏)。

システム概要と導入の経緯、構築
Azure Media Servicesであれば、高い水準のサービス提供が、最小限の工数のもとで実現できた

ジェイ・フィットは 2014年12月より、サービス提供基盤の見直しを開始。稼動性の向上、マルチ OS対応のいずれも、それを進めるためにはまず人的リソースの確保が必要です。そこで同社は、インフラの構築、管理工数が削減でき、高いスケーラビリティも確保できるとして、パブリッククラウドに着目。Azureを含む4種類のサービスで比較検討を実施しました。

同社はこの検討において、信頼性とセキュリティ レベルを比較項目に設定し、検証作業を進めました。そのような折、2015年4月にAzure Media Servicesのパブリック プレビューが提供開始されたことを受け、Azure の採用が濃厚になったといいます。西本氏はAzure Media Servicesに期待したことについて、次のように語ります。

「選定候補となったサービスはいずれも高い水準で信頼性とセキュリティを備えており、サービス提供の安定性は十分に確保できると感じました。しかし、マルチOSに対応したストリーミング配信を行ううえで必要となる構築、管理は、当社として初めての作業となります。パブリッククラウドの活用でインフラ面の管理負荷がなくなったとしても、やはりその作業には大きな不安がありました。Azureが提供を開始したビデオ ストリーミング サービス『Azure Media Services』は、PaaSという特性から、構築工程を大きく圧縮できます。また、OSやデバイスへの最適化もサービス側が担ってくれます。類似機能を備えるサービスはほかにほとんどなく、今の人的リソースのままサービス品質の向上を目指す場合、Azureの採用が最適だったのです」(西本氏)。

Azure Media Servicesが本当に有効に機能するかどうかを判断するには、検証作業が欠かせません。同社ではこの作業について、まずジェイ・フィットで検証を実施し、そこで得られた Azure Media Services側の課題をマイクロソフトへフィードバック。マイクロソフトによるそこへの対応を経て、再度ジェイ・フィットで検証を行うというPDCAサイクルで進めました。この検証作業を通じ、サービスの有効性だけでなくマイクロソフトへの信頼感が生まれたことも、Azure Media Servicesを正式採用するに至った大きな理由だと古屋氏は続けます。

「パブリックプレビューが提供された 2014 年 4 月の段階では、まだ採用できる水準とは言いにくい状態でしたが、PDCAを経る中でAzure Media Services自体の品質が高まっていきました。こうしたPDCAの取り組みは、マイクロソフトの柔軟なサポートと迅速なエスカレーションがあったからこそ実現できたと感じます。特にサポート対応は、エバンジェリストの方が情報提供や技術支援のために九州本社まで足を運んでくれるなど、たいへん素晴らしかったですね。Azure Media Servicesを提供基盤とした場合、マイクロソフトは当社の事業を支えるきわめて重要なパートナーとなります。検証作業を通じて得られた信頼は、今後の継続的かつ手厚い支援への期待にもつながるものでした」(古屋氏)。

ジェイ・フィットでは、Azure Media Servicesがライブ配信に対応した2015年より、同サービスの採用を正式決定。まずライブ配信の基盤に Azure Media Servicesを加え、そこでの稼動状況を見極めた後、VOD環境について対応を進める予定です。ライブ配信基盤としては、既に千葉県茂原市をはじめとする数十の自治体において、Azure Media Servicesを基盤に議会映像の配信が行われています。

Azure Media Servicesを用いたインターネット配信のシステム構成

導入の効果
提供基盤に関する顧客からの問い合わせはごくわずかに

ライブ配信の提供基盤にAzure Media Servicesを加えたことで、サービスの安定性は大幅に向上しました。西本氏は、自治体から寄せられる提供基盤に関する問い合わせが減ったことが、その成果を如実に表していると笑顔で語ります。

「サービスの安定稼動が保たれていれば、お客様が提供基盤に目を向けることはありません。逆に、何らかのインシデントが発生すると状況は一転します。お客様の意識は基盤へと向き、疑問や問い合わせの連絡が多数寄せられるのです。ライブ配信の提供基盤にAzure Media Servicesを採用したお客様からは、まだこうした連絡は受けていません。これは安定性の向上を果たせたことと同義だと考えています」(西本氏)。

また、運用体制や人員を変えることなくマルチデバイス、マルチOS対応が実現できたことも、同社にとってはきわめて重要な成果です。西本氏と古屋氏はこの点について、次のように語ります。

「もし仮にAzure Media Services以外で現在の提供基盤を構築した場合、サービス提供までに要するコストは膨大であったと思います。また、ITの市場は急速に変化するため、わずかなリードタイムがビジネスチャンスを逃す原因となる可能性もあります。こうした背景から、早期かつ廉価にマルチデバイス、マルチOSへの対応が実現できたことは、当社にとって非常に有益だったといえるでしょう」(西本氏)。

「リソース面の効果も見逃せません。自社だけで複数OSの最適化を意識した運用管理を行うのは困難です。もしそれが可能でも、定常運用だけで手いっぱいとなり、機能拡張など将来に向けた『攻めのIT』を実践することができなくなるでしょう。Azureでは、この攻めのITを進めるリソースも確保しながら、サービス提供の安定性を維持することができています。また、今回採用したAzure Media Services以外にも、Azureは豊富にPaaSを備えているため、機能拡張が容易になりました。今後、サービスのさらなる品質向上を企てられるようになった点も加味すると、Azureの採用は最適解だったと感じます」 (古屋氏)。

Azure Media Servicesを基盤に映像配信されている、千葉県茂原市のインターネット中継サイト(上)。同サイト上では、スマートフォン視聴用にQRコードも公開されている(下)

今後の展望
マイクロソフトの技術支援のもと、市場から求められる機能実装を進めていく

Azure Media Servicesの採用により、サービス提供の安定化とマルチOS対応、そして今後のサービス品質向上に向けた余力と拡張性の確保までも実現したジェイ・フィット。同社では現在、今回のライブ配信基盤での実績を踏まえてVOD環境についても、Azure Media Servicesへの対応を予定しています。

「Azure Media Servicesでは新たな機能が続々と追加されています。ライブ配信の提供基盤側でもこの新機能を活かすべく日々、改善とアップデートを実施しています。こうしたアップデートと並行してVOD環境についても、早期のAzure対応を計画しています。そのほか、2020 年に利用ができなくなる旧Windows Media Servicesをご利用中のお客様に対しては、Azure Media Services上の基盤をお使いいただくようアナウンスを進めていく予定です」(古屋氏)。

提供基盤側のアップデートやVODのAzure移行によって、ジェイ・フィットが提供するサービスはよりいっそう価値を高めてきます。西本 氏は今後、これまでは実装できなかったような機能の拡充も進めていきたいと意気込みます。

「スマートフォンがそうだったように、現在話題となっているAIなどの先端技術も、今後一般化していくことが推測されます。たとえば映像データをMicrosoft Cognitive Servicesで解析し、議員の発言ごとに自動でチャプターが区切れれば、VODのユーザーに対する付加価値を向上できるかもしれません。また、これは実装のハードルが高いかもしれませんが、閲覧状況をPowerBIなどで可視化すれば、お客様や議員の方々が議会への関心を把握するのに役立ちます。これは、開かれた議会を推進するうえで有益な情報となるはずです。今後マイクロソフトからも、こうしたアイデアを技術面から支援を受けて、機能拡充を進めていきたいですね」(西本氏)。

ジェイ・フィットはこれからも、市場に浸透する新たなテクノロジを見定め、そこへのサービス対応を進めていきます。Azure Media Servicesを基盤に提供される同社のサービスは、今後、各自治体の「開かれた議会」実現に向けた取り組みをいっそう発展させていくことでしょう。

「サービスの安定稼動が保たれていれば、お客様が提供基盤に目を向けることはありません。逆に、何らかのインシデントが発生すると状況は一転します。お客様の意識は基盤へと向き、疑問や問い合わせの連絡が多数寄せられるのです。ライブ配信の提供基盤に Azure Media Services を採用したお客様からは、こうした連絡は受けていません。これは安定性の向上を果たせたことと同義だと考えています」

株式会社ジェイ・フィット
技術部
部長
西本 由之氏

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