総合ファッション EC サイト「MAGASEEK」を運営する、マガシーク株式会社。インターネット通販の黎明期より EC 事業を続ける同社は、長年蓄積してきたデータを多角的に分析することで、サービス品質の向上に役立てています。2015 年 8 月には、それらデータのさらなる活用を目的とし、MAGARepo (マガレポ) と呼ばれる新たなデータ分析基盤を構築。その結果、ユーザーによる分析レポートなどの利用率は従来比で 20 倍も向上し、データを活用するという風土が全社的に定着しています。

同基盤のプラットフォームは、オンプレミスやクラウド サービスなど、さまざまな選択肢から比較検討されたうえで、優れたレポーティング機能と高い分析性能を備える、SQL Server と Azure Virtual Machine を採用しています。マガシーク株式会社では今後、Azure HDInsight や Azure Machine Learning の採用も検討を進めていくことで、同社のビジョンである「欲しい瞬間を演出し、解決する」ためにまい進していきます。

プロファイル

総合ファッション EC サイト「MAGASEEK」や、国内最大級のアウトレット ファッション EC サイト「OUTLET PEAK」などの事業を展開する、マガシーク株式会社。インターネット通販黎明期より事業を続ける同社のサービスは、総勢 200 万人以上もの会員が利用しています。マガシーク株式会社では、2015 年より稼働を開始した新たなデータ分析基盤「MAGArepo」を活用することで、サービス品質のさらなる向上へまい進していきます。

導入の背景とねらい
優れたレポーティング機能と高い分析性能をもって全社的なデータ活用を推し進めるべく、SQL Server と Azure を採用

インターネット通販黎明期の 2000 年に「MAGASEEK」をオープンし、以後 16 年にわたって EC 業を展開してきた、マガシーク株式会社 (以下、マガシーク)。「欲しい瞬間を演出し、解決する」をビジョンに掲げる「MAGASEEK」は、メンズからレディス、ドメスティックからインポート ブランドまで、650 以上の幅広いブランドを取り扱う総合ファッション EC サイトとして、高い人気を博しています。

マガシーク株式会社が運営する総合ファッション EC サイト「MAGASEEK」

古くから EC 事業を続けてきた同社には、ネット ビジネス事業者として大きな強みになるさまざまなデータが蓄積されています。2015 年 8 月には、これらデータをより有効に活用するべく、新たなデータ分析基盤を構築しました。「MAGARepo」と呼ばれるこのデータ分析基盤は、商品データ、購買データ、在庫データ、会員データ、顧客行動ログといったさまざまなデータの横断的な活用を支援しています。

マガシーク株式会社
システム開発部
副部長
嘉松 孝友 氏

MAGARepo の構築を指揮した、マガシーク株式会社 システム開発部 副部長 嘉松 孝友 氏は、同システムを構築した背景とねらいについて、次のように説明します。

「当社が掲げる『欲しい瞬間を演出し、解決する』ことをインターネット上で実現するためには、お客様ごとに合った商品を、欲しいと思うタイミングで、より良いチャネルを通して提供する必要があります。そのためには、データの活用が不可欠です。しかしこれまで、複数のシステムからデータを抽出して、Excel でデータを加工するといった手作業が発生しており、また一部のデータについてはシステム部門にデータの抽出を依頼する必要があったため、データ活用が思ったように進まなかったのが現状です。データを横断的に、迅速に活用するためには、統合化した分析基盤が不可欠だと考え、プロジェクト化してそれを進めることに決定しました」(嘉松 氏)。

「社内情報活用強化プロジェクト」と称して 2015 年 4 月より発足された同プロジェクトでは、複数システムのデータを統合した「データ活用基盤の整備」に加え、「指標・レポート体系の整備」と「情報活用体制の整備・人材育成」、以上 3 つを柱とし、検討が進められました。

データ活用基盤の整備において、マガシークではまず、オンプレミスでの DWH 構築と BI ツール採用を検討しました。しかしそこには、コストや性能試算が難しいといった面で、課題があったといいます。

「オンプレミスの場合、まず巨額のイニシャル コストが発生し、システムの構築にも長い期間を要します。また、数年先のデータ量を見越したサイジングや、用途と使用頻度に応じたパフォーマンス チューニングも必要となり、データ活用をこれから本格化しようというフェーズにおいて、その試算は難しい状況でした。そこで、まずはクラウド上に分析基盤を置き、ETL ツールで社内基幹システムと連携する構成をもってスモール スタートすることを考えました」(嘉松 氏)。

その後、マガシークでは、Amazon Redshift と BI ツールを用いた分析基盤の構築について、検討と検証が進められました。しかしこれもまた、マガシークが求める現場要件には合致しなかったといいます。

株式会社ジール
SIサービス第三本部
BIソリューション事業部
島村 学 氏

株式会社ジール
SIサービス第三本部
BIソリューション事業部
リーダー
川名 秀之 氏

MAGARepo の開発を支援した、株式会社ジール SIサービス第三本部 BIソリューション事業部 島村 学 氏は、同構成へマガシークが抱いていた懸念について、次のように振り返ります。

「Amazon Redshift と BI ツールの組み合わせは、採用実績も多く、自由分析と呼ばれる『蓄積データの深い分析』を行うには有効な選択肢です。しかし、マガシーク様が求めておられたのは、社内のあらゆる業務上で、あらゆるユーザーがデータを積極的に活用する基盤の実現でした。分析の深さに加え、こうした一覧性も重要視する場合、先の組み合わせでは対応が難しいことも考えられます。そこで当社からは、レポート作成から自由分析にいたる基盤を柔軟に構築するべく、SQL Server を使った構成を提案しました」(島村 氏)。

株式会社ジール SIサービス第三本部 BIソリューション事業部 リーダー 川名 秀之 氏は、同社が提案した「Azure と SQL Server を組み合わせた構成」のメリットについて、次のように説明します。

「SQL Server には OLAP 機能や ETL ツール、BI ツール、Web レポーティング機能など、マガシーク様が必要とする機能がワン パッケージで提供されています。Azure 上で運用すれば、スモール スタートも可能ですので、マガシーク様の要件には最適だと考えました」(川名 氏)。

ジールより提案を受けた構成を評価し、マガシークは新たなデータ分析基盤への、SQL Server と Azure の採用を決定しました。嘉松 氏は、同構成であれば、マガシークが求める「データを活用するという風土」の全社的な定着が期待できたと、採用の決め手について語ります。

「全社的なデータ活用のためには、ユーザーに『使い勝手がよい』と感じてもらいながら、日々それを利用してもらう必要があります。同構成は Excel ライクなユーザーインター フェースも備えていますので、当社の理想を実現できる可能性が最も高いと判断しました」(嘉松 氏)。

システム概要と導入の経緯、構築
DWH と BI の運用サイクルを最適かつ迅速に回すべく、短期開発に注力

MAGARepo の開発は、SQL Server と Azure の採用を決定した 2015 年 6 月より開始されました。短期でのサービス インを目標に掲げた同開発は、データ分析基盤という比較的規模の大きなシステムながら、約 2 か月半という短期間で完了。同年 8 月には、最初のリリースとなる MD (マーチャン ダイジング) 向けサービスの提供を開始しています。

短期開発を進めることができたポイントについて、島村 氏と川名 氏は次のように説明します。

「当プロジェクトにおいては、アジャイルの手法を取り入れて開発を進めました。また、生産性を高めるために、レプリカ テーブルという基幹システムと同じ構造のテーブルを、Azure 上の DWH に作成しました。レポートや分析に用いるデータは、おのおのの要件ごとに、このレプリカ テーブルを加工して作成します。基幹システムのデータがきちんと正規化されていたこともあり、アジャイルの手法と DWH 構築の工夫だけで、構築期間の圧縮は可能でした」(島村 氏)。

「基幹システムとレプリカ テーブル間の同期は、データの種類によって処理パターンを変えています。件数の少ないデータ用の『全件方式』、件数の多いデータ用の『差分方式』、変更履歴を保持するデータ用の『差分履歴方式』、以上の処理パターンごとに開発手法や手順を最適化したことで、当初の予想よりも 10 倍以上、開発効率を高めることができています。この点も、短期開発を進めることができた大きなポイントです」(川名 氏)。

マガシークがこうした短期開発にこだわった理由は、DWH と BI の運用サイクルを、最適に、迅速に回す点にあったと、嘉松 氏は続けます。

「MAGARepo の開発は、細かな要件定義書をあえて作らず、少しシステムを構築しては現場に見せ意見を聞くという、改善サイクルを回す形で進めました。たとえば、出力するレポートに必要な要素は、時期や状況によって変化します。最初から仕様を固定してしまうと、こうしたビジネス状況の変化に対応しにくくなるのです。現場が使いやすい分析基盤を作るためには、常に最適なシステムへ更新しながら運用していかなければなりません。そこへ向けて、まずは現場のニーズを聞くべく、短期でのサービス インにこだわりました」(嘉松 氏)。

こうした短期開発の実現においては、Azure や SQL Server が備えている機能が大きく貢献していると、川名 氏はいいます。

「Azure のメリットは、インフラ構築がしやすい点にあると考えています。Azure は、管理ポータルからわずか数クリックで環境構築ができ、デプロイ時間も早く、環境のスクラップ & ビルドも自由自在です。また、SQL Server では従来、自由分析を行う場合に多次元キューブを定義する必要がありましたが、SQL Server 2014 で利用可能な表形式キューブにより、それも必要なくなりました。こうした Azure や SQL Server が備える優れた開発環境は、そこに要する期間の短期化や運用の効率化に大きく貢献していると思います」(川名 氏)。

MAGARepo は 8 月のサービス イン後、マーケティング向け、経理向け、経営層向けなどを順次リリースし、利用者や利用されるレポートは今も日々増え続けています。

MAGARepo のシステム構成

導入ソフトウェアとサービス

  • Microsoft Azure Virtual Machine
  • Microsoft SQL Server 2014

導入メリット

  • SQL Server と Azure 上でデータ分析基盤を構築したことで、レポートと自由分析の利用率が、従来比で 20 倍も向上。データを活用するという風土が全社的に定着した
  • 容易に環境構築やデプロイを行える Azure を採用したことで、2 か月という短期間で、データ分析基盤の開発が完了できた
  • 機械学習や DWH を PaaS として提供する Azure を基盤に採用したことで、発展性をもったデータ分析基盤が獲得できた

導入の効果
レポートと自由分析の利用率が、これまでと比較して 20 倍も向上

Azure や SQL Server を基盤に採用した MAGARepo は、2015 年 8 月の稼動後、マガシーク内で多大な効果を生み出しています。

その効果の 1 つとしてまず、データが見える化されたことが挙げられます。これまで個別のシステムや部署ごとで収集していた、販売や受注、在庫、Web ログといったデータは、MAGARepo によって 1 つのレポート上でまとめて閲覧することができるようになりました。

また、システム部門の負荷も、大きく削減されています。これまでユーザーからの依頼で行っていたデータ抽出作業は、MAGARepo によって不要となり、ユーザーはさまざまなデータからすぐに必要なレポートを作成することが可能です。これはシステム部門の負荷軽減だけでなく、ユーザーの利便性にも直結しています。事実、MAGARepo のサービス イン後では、レポートの閲覧回数が大幅に増加したと、嘉松 氏は笑顔で語ります。

「各部門のニーズを聞きながら開発と運用を行っていますので、ユーザーは見たい情報をわかりやすく確認できます。以前は、システム部門に依頼してから数日かかるケースもありましたが、今ではほんのわずかな時間でレポートを入手でき、自由分析の機能を利用することで、システム部門に頼らず、必要な分析をユーザー自らが行うことも可能です。レポートと自由分析の利用率は、以前と比較して 20 倍以上になっており、データ活用が大きく進んだことを実感しています」(嘉松 氏)。

こうした利用率の向上を行っていくうえでも、Azure と SQL Server の採用によりシステム改善のサイクルを回しやすくなったことが大きなメリットになっています。さらに、マガシークでは、Azure が備えるスケーラビリティを生かすことで、利用率の向上に併せて MAGARepo の規模も拡大しています。

「本格稼動後、パフォーマンスの向上を目的に SSD を利用するインスタンスへの切り替えを行いましたが、非常にスムーズにその切り替えを完了することができました。これにより、アクセス速度はもちろん、バックアップやデータ同期などの処理性能も大きく向上し、約 14 時間かかっていたバッチ処理の時間は約 70% も圧縮できました。システムの規模や性能を適宜変更できることは、まさにクラウドの恩恵であり、Azure を基盤に採用したことが間違いではなかったのだと感じています」(嘉松 氏)。

今後の展望
ユーザー層の拡大と深化した分析をもって、ビジョンの実現へまい進

MAGARepo のサービス インにより、全社的なデータ活用が進んだマガシーク。同社は今後、マガシークの社員だけでなく、メーカーの担当者へもユーザー層を拡大していくことを計画しています。

「分析データをメーカーと共有することで、たとえば売れ筋商品とそうでない商品を見分けて在庫数を迅速に調整したり、消費者の声や実際の販売動向を分析しながら共同で新商品開発を行ったり、といったことも将来的には考えていきたいと思っています。セキュリティや運用ルールなど、検討が必要な項目がまだまだ多くありますが、早期に実装していきたいと考えています」(嘉松 氏)。

また、社内利用についても、レポートや自由分析だけでなく、より細かい粒度のデータを使った高度な分析に今後取り組んでいく予定です。マガシークでは現在、Web サイトのアクセス ログについて、サマリー情報を中心に DWH へ蓄積しています。これらをユーザー属性ごとの行動把握にまで掘り下げて分析するべく、同社は Azure HDInsight の利用も検討しているといいます。

「Azure HDInsight だけでなく、Azure Machine Learning も、近い将来で活用していくべく検証を進めています。クラスター分析などを利用すれば、ユーザーの行動特性に合わせたレコメンドも行うことができ、『欲しい瞬間の演出』へ向けたさらなる一歩を踏み出せます。Azure はさまざまな機能や PaaS をもっていますので、状況に合わせて、SQL Data Warehouse や PowerBI なども検討していきたいです」(嘉松 氏)。

今後さらなる発展が期待される MAGARepo。マガシークでは同分析基盤をもって、サービス品質のさらなる向上を推し進めていきます。

ユーザー コメント
「本格稼動後、パフォーマンスの向上を目的に SSD を利用するインスタンスへの切り替えを行いましたが、非常にスムーズにその切り替えを完了することができました。これにより、アクセス速度はもちろん、バックアップやデータ同期などの処理性能も大きく向上し、約 14 時間かかっていたバッチ処理の時間は約 70% も圧縮できました。システムの規模や性能を適宜変更できることは、まさにクラウドの恩恵であり、Azure を基盤に採用したことが間違いではなかったのだと感じています」

マガシーク株式会社
システム開発部
副部長
嘉松 孝友 氏

パートナー企業

  • 株式会社ジール

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