【連載】

清水和夫の自動運転ソシオロジー

3 レベル3が分岐点に? 押さえておきたい「自動運転のレベリング」

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前回レポートしたロボットカーは地域限定のシティ・コミューターとして期待されるが、そのユースケースは限定的だ。それでは、一般公道や高速道路を走る乗用車や商業車の自動運転はどのように進んでいるのだろうか。それを理解するため、まずは自動化のレベリングの話をしておきたい。

現状はレベル2が上限

自動車メーカーが開発している自動運転車は、段階的に技術を積み上げて実現すると思うが、現状で実用化されているクルマは、「ドライバーが責任を持って運転するレベル2」が上限だ。レベル1は前後の動き(加速と減速)が自動化、レベル2は「操舵が加わる」と理解してもいい。

仮に自動でハンドルが操作されても、ドライバーが前方を監視し、安全運転の責任を持つならレベル2なのだ。だから、クルマが完全自動運転しても、「ドライバーが責任を持つ」とされるならレベル2になってしまう。レベリングは自動化を段階的に定義したものであり、責任問題を含めた自動運転車の運用を規定したものではない。

レベル3で問題になる“責任の所在”

ここでは、もう少し詳しくレベリングについて説明したい。「自動運転を定義するレベリング」は当初、米国政府が定めた4段階を日本政府も使っていたが、より細分化が必要だという認識のもと、アメリカ政府はSAE(Society of Automotive Engineers)が定めた5段階の定義を使うようになった。日本政府も2017年5月頃には5段階のレベリングを使うことになるはずだ。従って、本稿で使うレベリングはSAEの5段階を前提として話を進めることにする。

SAEによる5段階のレベリング(経済産業省 ビジネス検討会で公開された資料より)

従来のレベリングは4段階だった。5段階になったのは、半自動運転のレベル3を条件付き自動運転のレベル4と定義し直した結果だと理解できる。レベル5は条件なしの完全自動運転だ。

新しいレベリングでもレベル3は非常に難しい。というのは、運転責任がシステムと人の間を行き来するからだ。システムがドライバーに運転を移譲する際、運転に関与していなかったドライバーが、すぐに運転できるとは限らない。何秒前にハンドオーバー(人に運転を移譲すること)すればよいのか、人それぞれ対応が異なるので、権限移譲の時間を規定するのは難しいだろう。現在は、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)という人とシステムの関係についての研究が進んでおり、その中で権限委譲の時間を模索している段階だ。

メルセデス・ベンツが2015年の東京モーターショーで発表したコンセプトカー「Vision Tokyo」。完全自動運転、つまりはレベル5の世界観を表現したクルマだ

レベル3が難しいから一気にレベル4を目指しつつ、まずは高度に進化したレベル2を実現することが現実的だという意見も少なくない。自動化定義のレベリングにとらわれずに、安全運転の責任を明確にしながら、システムを進化させていくのが自動車メーカーの考えではないだろうか。

著者略歴

清水和夫(しみず・かずお)
1954年、東京都生まれ。武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして活動を始める。自動車の運動理論や安全性能を専門とするが、環境問題、都市交通問題についても精通。著書は日本放送出版協会『クルマ安全学のすすめ』『ITSの思想』『燃料電池とは何か』、ダイヤモンド社『ディーゼルこそが地球を救う』など多数。内閣府SIP自動走行推進委員の構成員でもある

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インデックス

連載目次
第9回 議論白熱の自動運転レベル3、積極的なアウディと慎重なメルセデス
第8回 自動運転レベル3の時代へ待ったなし、ホンダの現在地は
第7回 自動運転の捉え方は各人各様、アウディ「A8」登場で世界が変わる?
第6回 人よりうまく運転できる? もしもAIがドライバーだったら
第5回 運転支援システムと自動運転を分ける「ニューラルネットワーク」
第4回 自動運転の認知・判断を支えるセンシング技術とは何か
第3回 レベル3が分岐点に? 押さえておきたい「自動運転のレベリング」
第2回 いよいよ無人運転車が公道に? 自動運転を取り巻く環境が変わり始めた
第1回 目前に迫る自動運転社会、グランドデザインを描くのは誰か

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