バズを巻き起こしたAgar.ioやHappy Wheelsのときのように、Smashy Road: Wantedが、米国、カナダ、英国などのiOS App StoreとGoogle Playでダウンロード数を大きく伸ばしています。Google Playで何度もフィーチャーされ、モバイルでの人気が拡大しました。

Smashy Road: Wantedは、モバイルゲームの人気トレンドである8ビットゲーム風のデザインが、ダウンロード数の拡大につながりました。ただし、ゲームプレイとリテンション戦略は、コンソールゲームの名作であるGrand Theft AutoやGrand Theft Auto 2がお手本になっています。

警察とカーチェイスを繰り広げるこのアクションゲームが大成功を収めた要因を分析し、応用しましょう。

世界各地でダウンロード数が拡大

Smashy Road: Wantedは2015年10月にブームになり、iOSおよびGoogle Playの世界総合ダウンロード数が、IP(知的財産)が用いられていないゲームのなかでトップになりました。10月は、IPを利用したNeed For Speed No LimitsやMinions Paradiseなどが有力ゲームとして台頭しましたが、Smashy Road: Wantedの特筆すべき点は、有名なIPを持たない小規模パブリッシャーがこれほどの大成功を収めたことです。本ゲームのパブリッシャーであるRemco Kortenoeverは、まだ数本しかモバイルゲームをリリースしていません。

Smashy Road: Wantedは、英語圏の国のGoogle Playダウンロード数ランキングで現在も上位にランクイン

Smashy Road: Wantedの勢いは、2015年11月に入っても衰えていません。米国、カナダ、英国、オーストラリアなどの国では、Google PlayとiPhoneのゲームダウンロード数ランキングでトップ5に入っています。同時に、イタリア、オランダ、スイスなどの国でも、iPhoneのゲームダウンロード数ランキングでトップ25を維持しています。

ユーザーもうれしいマネタイズ戦略

成功した多くのモバイルゲームと同じように、Smashy Road: Wantedは一部でアプリ内課金を採用しています。しかし、マネタイズの中心はアプリ内課金ではありません。AdColonyやAdMobが提供するユーザー視点にたった広告によるマネタイズ戦略を採用しています。

AdColonyでマネタイズおよびパブリッシャーリレーション担当のシニアバイスプレジデントを務めるDavid Pokress氏は、Smashy Road: Wantedが短期間で成功を収めたことを喜んでいます。「広告がアプリ体験の一部となり、プレイヤーに特典が適切に与えられれば、広告は収益面でとてもすばらしい成果を上げられることがわかりました」と同氏は述べています。

新しい車を無料で獲得できるガチャを回すためのゲーム内通貨は、広告を見ることで入手できる

ユーザーは広告を見ることでゲーム内通貨を入手でき、その通貨でガチャを回し、無料で車を獲得できます。ガチャのシステムは、ゲームのマネタイズ戦略として日本でよく利用されており、欧米で発売されたBlood BrothersやRage of Bahamut(神撃のバハムート)でも大きな成功を収めました。

広告を1つ見るたびに20ドルのゲーム内通貨がもらえ、5つ見れば100ドルのガチャを回すことができます。たくさんの広告を見れば、すべての車を集められる可能性もあります。ユーザーにとっても、マネタイズを目指すパブリッシャーにとってもうれしい仕組みです。

「Smashy Road: Wantedのチームは、広告をゲームにうまく組み込んで、プレイヤーが広告と関わることでゲームプレイをより面白くできる魅力的な方法を編み出しました」とPokress氏は言います。

本格的な高速アクションゲーム

Smashy Road: Wantedは、すぐにプレイを始めることができ、高速アクションゲームを楽しめるようになっています。この点は、初めてプレイするユーザーでもすぐに主なゲームプレイや機能を楽しめるAgar.ioとよく似ています。

Grand Theft Autoの初期作を彷彿させるカーチェイスのトップダウンビュー

ワクワクするシンプルな高速カーチェイスは、Grand Theft Auto(GTA)シリーズの初期のゲームプレイを再現したものと言えます。1990年代後半にコンソールゲームとしてリリースされた、GTAシリーズの最初の2タイトルは、トップダウンビューによる警察とのカーチェイスが特徴でした。Smashy Road: Wantedも同じような魅力を取り入れたゲームで、そのノスタルジックなゲームプレイが人気を獲得したひとつの要因だと考えられます。

8ビットモバイルゲームの人気

多くのモバイルゲームが、1980年代に人気を博したレトロな8ビット風デザインに回帰しています。Minecraft、Crossy Road、Tiny Towerはいずれも、ビジュアルデザインがSmashy Road: Wantedに似ています。一部のアプリストアのブラウザは、このようなスタイルのゲームを同じデザイナーやパブリッシャーのゲームと勘違いしてしまうかもしれません。

App Annieでは、『Store Intelligence』を使用して、今挙げた4つの8ビットゲームを対象に、2015年1月から9月までの間に最もダウンロード数が多かった国を調べてみました。結果は、当然ながら米国がトップを独走し、大きく遅れて英国とカナダが続きます。英語圏以外の国では、日本、ブラジル、およびロシアが8ビットモバイルゲームのダウンロード数の増加に貢献していました。

Crossy Roadでは米国、英国、カナダでのダウンロード数が、8ビットゲームの全体的な人気に大きく貢献

成功の鍵はシンプルさ

Smashy Road: Wantedは、モバイルゲームのデザインとマネタイズに関して、すばらしい示唆をくれました。ヒット作を作ること、アプリ内課金(IAP)と広告の両方で大きな収益を上げること、これらを達成するために大企業である必要は必ずしもありません。ノスタルジックで心地よいゲームプレイとデザインを採用することで、アプリストアでのダウンロード数を増やし、ユーザーを引き止めておくことは十分に可能なのです。また、ゲーム内通貨の獲得に広告を利用する巧妙な仕組みで、プレイヤーに無料で特典を提供しながら、収益を維持することができます。

規模が小さいゲームデベロッパーが、Smashy Road: Wantedの成功を再現したいと考えるなら、以上のことがヒントになるかもしれません。

本稿は、App Annie 公式ブログ にて2015年11月6日に公開されたコンテンツを転載したものです。

執筆者紹介

App Annie

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