【連載】
さらに拡張していってみましょう。製作した基板では、メータの振れる様子を見てみると、何となく安っぽく感じるのではないでしょうか。高級オーディオのアナログメータとか、カーオーディオのスペクトラム表示のように、針が立ち上がるようすは「びゅっ」と勢いよく動き、針がゼロに戻っていくときは、ゆっくりと穏やかに戻ってほしいと思います。
これを波形的に考えると、図4-5-1の左のような信号の大きさとメータへの電圧波形の関係になります。この動作を実現するには、同図右のように、立ち上がりのときにコンデンサを充電して目的の電圧までもっていき(「びゅっ」と勢いよく動かす)、ゼロに戻っていくときは、充電した電圧を徐々に吐き出していく(ゆっくりと穏やかに戻る)ような回路動作になるわけです。
この機能を実現する回路構成を図4-5-2に示します。ここでは3章で示したダイオードという素子(片方向しか電流を通さない)が使われます。このダイオードは図のように片方向しか電流が流れません。そこで、その流れた電流でコンデンサを充電して、目的の電圧までもっていく(「びゅっ」と勢いよく動かす)ようにします。
しかしダイオード単独では、ゼロVからすぐに電流が流れるというわけではなく、電圧がだいたい0.6Vから0.7Vくらいから流れるようになります。そのためこの部分に入力される電圧の大きさが、0.7Vより小さい場合には、電流が流れないので出力に電圧が表れず(コンデンサが充電されず)、その結果としてメータが振れないことになります。
そこで図4-5-3に示すようにOPアンプの力を借りて、入力電圧がゼロVからでも、出力端子(ダイオード出力に相当する)に電圧が表れる、つまりコンデンサが充電されるようにしてみます。コンデンサが一旦充電されると、回路の入力電圧がこの充電された電圧から低下してくると、ダイオードに相当する回路はオフになります。そのためコンデンサの電圧は抵抗R41を通してゆっくりと放電していくことになります。
しかしコンデンサをそのままメータに接続してしまうと、本来抵抗R41からだけ放電してもらいたいところが、メータ内部の抵抗部分からも電流が漏れ出して、その結果としてコンデンサが放電していってしまいます。ゆっくりゼロVに戻るといった目的が実現できません。
そこでここもOPアンプの力を借りて、コンデンサの電圧がR41以外の余計な経路から放電していかないようにします(U4、AD8607ARMZの右側)。連載第10回で説明したように、OPアンプの入力端子には電流が流れ込みませんから、このU4により、電流が流れてしまう余計な経路が無くなると考えることができます。
また表4-5-1に、ここで使用する(追加する)素子の部品表を示しておきます。
だいぶ連載も終わりに近づいてきました。では実際に図4-5-3の回路を製作してみましょう。
図4-6-1は実際に製作した基板です。ここまで作ってきた基板に「継ぎ足し」した形になっています(右端が追加した部分)。まずは電源を入れる前に配線を確認し、次に図4-6-2のようにテスターで回路に流れる電流量と、各部分の電圧レベルを確認しておきましょう。 それではいよいよ、テスターをメータの代わりとして基板に接続します。そうすると、テスターの針は音の立ち上りは勢いよく、ゼロに戻っていくときは、ゆっくり戻る、結構おしゃれな動きになっているはずです。
なんとか無事にゆっくりゼロに戻っていくメータを実現する回路を作ることができました。しかし市販のメータと比較すると、実はこれでもまだ物足りないのです。
市販のメータは音の入力レベルを「対数(ログ)」という大きさに変えてメータを振っています。この対数特性というのは図4-6-3のような曲線で、入力が大きくなってくるとメータの振れる変化幅が少なくなってくるものです。これは人間の聴覚特性(音が大きいか小さいかの大きさを判断する)に合っている特性なのです。
実際は対数特性のアンプ(ログアンプと呼ばれる)を用います。OPアンプとトランジスタでもできますが原理が少し複雑であり、また安定に動かすための補正回路なども必要なため、これも市販のログアンプ専用IC(AD8307など)を用いたほうが賢明でしょう。
著者:石井聡
アナログ・デバイセズ
セントラル・アプリケーションズ
アプリケーション・エンジニア
工学博士 技術士(電気電子部門)
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