試作してみる

それでは、図4-2-1の回路を実際に製作してみましょう。もともと連載第15回で説明したように、拡張性を考えて基坂の端の方を空けてあり、今回拡張できるように作っておきました。このスペースに今回の追加回路を実装していくことにします。またさらに次回以降で、もう一歩回路を拡張していきますので、まだ実装できる余裕は残しておいてください。

試作技術については、これまで示したとおりですので、ここではクッキング番組ではありませんが、出来上がった基板を図4-3-1に示します。

図4-3-1 AD737を追加して出来上がった基板

各部の電圧をテスターで確認してみる

作り方は延長だとしても、配線が間違っていないか、また各部分の電流や電圧を測定することは大切ですので、是非、連載第16回で示したようなチェックは行ってください。

AD737の各端子の電圧は大体決まっていますので、図4-3-2に記載してあるAD737の各端子電圧と、実際に製作した回路の電圧が同じ程度になっているかを確認してください。

図4-3-2 出来上がった基板の各部の電流と電圧を測定し、きちんと動作するかどうかを確認する。特に追加したAD737を主として測定する

メータをつないで回路の動作を確認する(また成功するととても嬉しい)

それでは第16回の時と同じように、入力は基板上のマイクとし、出力にはヘッドフォンの代わりにテスターをつないでみましょう。テスターをメータ代わりに利用しています。

マイクを口に近づけて声を出すと、テスターのメータが振れることがわかりますね。またここでも、製作した電子回路をうまく動かすことができました(図4-3-3)。

筆者としても、原稿執筆を目的として製作をしているわけですが、やっぱり思ったとおりに動くとうれしいものです(とはいえ残念ながら、生じているノイズなどによりメータがゼロまで下がりきらない)。

図4-3-3 テスターをメータ代わりに接続して製作した回路が動くことを確認する

またまた筆者も失敗するのだ

「失敗」というか、原稿執筆の都合上の問題についてお話しておきます。本連載では電源は特別な電源を用いずに、乾電池を片側2本ずつ(±3V、合計4本)で実験をしようという筋書きにしてあります。

一方で図4-4-1のようにAD737ARZは、マイナス側の電源電圧仕様が少し高めで、-3.2Vからが素子の動作保障範囲になっています。今回の実験では、上記理由によりこの規格に対して少し不足しているという点があります。素子自体にマージン(余裕度)が少しありますので、実験デモでも動く結果にはなっています。

一方電池についてですが、電池は新品だと1.6~1.7Vあります。そのため新品のうちはこの規格に合致する電圧を素子に供給できています。使いきるころには0.9Vくらいになります(これを「終止電圧」と呼ぶ)。

正しい電子回路設計では……

しかし本来であれば、正しい設計(とくに商品となるもの)をする際には、このような規格に対して適合した電源電圧を使うことが大前提になります。きちんとデータシートの各部をよく読んで、素子の動作範囲内で使用していただくことを推奨いたします。

また電池駆動の場合には、「終止電圧」まで回路が動くように設計することも大切です。

図4-4-1 AD737の電源電圧の仕様

著者:石井聡
アナログ・デバイセズ
セントラル・アプリケーションズ
アプリケーション・エンジニア
工学博士 技術士(電気電子部門)