回路には「クリーン」な電源が必要

よく電子回路の専門誌などで、図2-4-1のような回路図を見ることがあります。連載2回目の図1-2-4では電球を光らすために直流電源を用いました。実際問題として電源がなければ電球は光りません。

回路図上で電源は「あるもの、当たり前のもの」(だがとても重要)

図2-4-1のような回路でも、当然のこととして、図に書かれていない電源回路が必要になります。この電源は「あるもの、当たり前のもの」ということで回路図からは省かれていますが、実はこの電源というのがとても重要なのです。

デジタル回路では「まあこの程度」という電源でもよい場合が多いのですが、アナログ回路では低ノイズ回路を実現する場合など、とてもクリーンな(ノイズの無い)電源が求められます。電源がクリーンでないと、電源のノイズが信号出力に現れてしまい、信号がノイズに埋もれてしまったり、目的の性能が出ないなどの問題が生じてしまいます。

一例をあげれば、ヘッドフォンで聞くポータブルオーディオも、実はかなりこの電源のノイズに敏感な回路が使われているシステムなのです。

図2-4-1 電子回路の回路図の例

「ノイズの少ないクリーンな」電源が求められる

一方でおもしろいもので、デジタル回路では電源電圧は高い精度が要求される場合が多いのですが、アナログ回路の場合には電圧自体の精度を高く要求されることはあまり多くありません(用途によっては高い精度が要求される場合もあるが)。

それよりも「ノイズの少ないクリーンな」電源が求められます。その点では図2-4-2のような「スイッチング電源」と呼ばれる、デジタル回路などで簡易に用いられるものは避けたほうがよいと言えます。

ところが現在市場に出回っている電源はこのスイッチング電源がほとんどで、逆になかなか実験で電子回路で遊んでみるという人に対して、簡単に購入できる安い「ノイズの少ないクリーンな電源」というのは意外と市販されていません。ACアダプタなども現在はほぼすべてスイッチング電源になっていると言えます。

図2-4-2 ACアダプタなどもスイッチング電源

クリーンかつ簡単な電源を使いたいときには

クリーンかつ簡単な電源を使いたい、という人には乾電池が適切です。乾電池はここまで説明してきたようなノイズは発生しません。結構便利に使うことができます。この連載でも製作のときには、乾電池を使った回路を例として取り上げたいと思います。

いずれにしても、電源は「ノイズの無いクリーンな」ものを使うことが、アナログ回路設計での基本です。

なお、スイッチング電源を使う場合には、ノイズ除去のフィルタ回路というものを追加して、十分にクリーンにしてから回路に電源として与えるか、最悪はノイズを少し我慢して使用することになります。

著者:石井聡
アナログ・デバイセズ
セントラル・アプリケーションズ
アプリケーション・エンジニア
工学博士 技術士(電気電子部門)