ここまでは今回を説明するための前提として、基本回路を説明してきました。ここでそれらを、より実際の回路に近い場面として考えて応用してみます。

電球3個直列/並列につないで電流の様子を確認

図1-4-1(a)は電球を3個、直列/並列につないで、それに2Vの電圧をかけたものです。ここまで来るとかなり実際の回路のようすに近づいてきます。

ここでそれぞれの電球の明るさが図1-2-4(a)【基準】や、図1-3-1(a)の直列の例とも、図1-3-2(a)の並列の例とも、それぞれ異なっています。これは結構興味深いことです。

これらの関係も同図(b)にまとめて、ここまでのことがらを元に、電球をよく観察しながら考えてみましょう。

図1-4-1 電球を3個、直列/並列に接続した回路に2Vの電圧を加えてみる

(a) 実験の様子。すべての電球の明るさが図1-2-4(a)【基準】と異なっている

(b) 図(a)の関係をオームの法則と関連づけて考えてみる(バラつき吸収用抵抗は示していない。また図中の計算は「丸め誤差」がある)

電球を2個直列に接続した場合との差異を考える - ここ重要!!

まとめをかねてもう少し説明します。図1-4-1(a)の様子をよく観察してみてください。この様子を「イメージ」として、「体」でわかっていることが大切です。

1:直列に接続されている電球の明るさ

直列に接続されている電球と、図1-3-1(a)の回路(電球を2個直列にした回路に2Vの電圧を加える)の電球の明るさとを比較してみましょう。図1-3-1(a)よりも明るさが明るくなっていますね!

これは2つの電球が並列になっている部分は、図1-3-3(b)の「並列回路に直流電源から流れる電流は、1個の場合の2倍(2個の電球に流れる電流の合成だから)」という話のとおり、この合成抵抗量が小さくなり、回路全体に流れる電流量が増えているからです。

2:並列に接続されている部分の電球の明るさ

2つの電球が並列になっている部分は、図1-3-3(a)と同じ回路ですが、これに直列に接続された電球があるため、電源電圧の2Vを直接この部分に対して供給できず(並列の2個の抵抗に直列抵抗がつながっていることになるので)、電流量が少なくなり、並列に接続された電球それぞれに流れる電流も図1-2-4(a)【基準】と比較し、少なくなっています。

さらにこの2つの電球の明るさは1つの(直列に接続された)電球と比較してかなり暗くなっています。これは電流が2系統に分流し、それぞれの電球に半分ずつ流れているからです。

これらのことは図1-4-1でオームの法則と関連づけて考えてみるとより明確でしょう。

3:電源の電圧を4Vに増やしてみる

なお、このとき電源の電圧を4Vに増やしてみるとどうなるでしょうか。直列に接続されている電球は図1-2-4(a)【基準】と比較して明るくなっています。一方で並列になっている部分は、1-3-3(a)の並列回路と比較して暗くなっています。この理由はここまでの説明をもとに考えてもらいたいのですが(難易度が若干高い)、きっちり理論的なことと符合しています。

4:まとめてみる

ここまでの説明を表1-4-1にまとめてみましょう。単純な回路からこの回路まで説明してきましたが、実際の電子回路ではこの図1-4-1の接続のようなものが結構あります。オームの法則と視覚的な理解を合わせて活用できるようにしておきましょう。

図1-4-2 電球を3個、直列/並列に接続した回路に4Vの電圧を加えてみる

直列電球 並列電球(2個)
電流 2個直列
(図1-3-2より大きい)
電流量は2個直列の4/3
(33mA)
直列の分がさらに1/2になるのでかなり小さい
2個直列(図1-3-2)と比べて
2個並列なので抵抗が小さい
抵抗量 電球1個の抵抗40Ωに相当 電球2個が並列なため20Ω
加わる
電圧
電源電圧の2/3(1.3V) 電源電圧の1/3(0.7V)
表1-4-1 図1-4-1の電球を3個、直列/並列に接続した回路の観察結果をまとめてみる

「目と体で」イメージとして理解する - それがより高度な応用に生きる

これまでは電球を用いて回路理論の一番基本的なところ、特にオームの法則と抵抗素子との関係を説明してきました。あまりにも単純過ぎると思わず、これはより難しい交流回路などでも同じ考えで使える大切な基本ですので、きっちりと「目と体で」イメージとして理解しておきましょう。

この連載ではテスターだけで実験確認ができるようにします!

たしかに電子回路を設計するうえでは、一般的には少なくともオシロスコープ、さらには信号発生器やネットワークアナライザなどのいろいろな測定器を用いて、特性出しや検証を行います。しかしこの連載では、自宅で趣味程度でも実際に製作できるようにと考えて、測定器は図1-5-1のようなテスターだけで実験が可能になるように進めますので、ご期待ください(なお波形観測のデモンストレーションのためにのみ、オシロスコープを用いる)。

図1-5-1 この連載で実験に用いる唯一の測定器「テスター」(35年以上前からの筆者所蔵品……このテスターのストーリーは連載の途中にて)

どうすればアナログ回路がわかる技術者になれるか?

覚えることが多いアナログ回路技術ですが、基本的なところを覚えておけばかなりの場面で対応できます。

先に示したように、デジタル回路設計をする上においても、特にアナログ回路技術の「基本的なところ」が必要とされるようになってきています。

その「基本的なところ」を体得するのは、シミュレーションだけに頼らず(使うなということではありません)、実験とか試作を実際に自分の手を動かし実行してみることです。その結果「なぜ上手くいかないのか」という点が必ず出てきますから、ここを先輩に教えてもらうなり、書籍を読んで(またシミュレーションも利用して)理解して解決していく……、そのようなプロセスを繰り返すことです。この連載も「その手を動かし実行してみる」ことを主眼にしています。

著者:石井聡
アナログ・デバイセズ
セントラル・アプリケーションズ
アプリケーション・エンジニア
工学博士 技術士(電気電子部門)