2月。寒いのが苦手な筆者はこの時期は毎年のように海外取材に逃亡する。今年はコストパフォーマンスのよい買い物とグルメで最近お気に入りのクアラルンプールに出かけようと、航空券を検索してみた。

LCCなのに……あんまり安くない

当然、安く行きたいからまずは低コスト航空会社(LCC)のエアアジアXの空席を照会。この原稿を書いている2月13日現在、羽田 - クアラルンプール線を希望日程の2月26日出発、29日帰りで探す。結果は、行きが3万8,000円、帰りが2万8,000円、合計6万6,000円(諸税別)。

……あんまり安くない。

ならばと、大手マレーシア航空の成田 - クアラルンプール線を検索すると、同じ日程で往復6万円(諸税別)の席が空いていた。空港までの電車代を考えても、こっちの方が安い。

クアラルンプールにあるエアアジアの簡素なターミナル

マレーシア航空の設備の整った豪華なターミナル

いまは燃油代が高いので、それを考慮するとエアアジアXの方がやや安いのだが、マレーシア航空には好評な機内食が往復とも付いているしお酒も飲めるから、やっぱりマレーシア航空の方が割安に思える。これで、燃油サーチャージが安い時期ならマレーシア航空が安いと断言できるだろう。

「LCCは安い」というイメージが浸透しているが、しばしばこうした"逆転現象"が起きる。特に、直前予約の場合がそうで、検索した2月13日は出発日の2月26日から逆算すると2週間前を切っており、航空業界的にはかなりの直前予約で、LCCは早めに予約すれば安いが、多くの席が予約で埋まってしまうと高い席しか残らない。

実際、検索した時点で、エアアジアXの同じ羽田 - クアラルンプール線を5月1日から6月30日の間に乗れば片道1万円で予約できた。直前予約の3万8,000円と比べると約4分の1の値段である。LCCは行きと帰りを片道ずつ買うため、行きか帰りの航空券代が高いと往復の金額が大手を上回るケースもある。

大手航空会社が直前でも安い理由

LCCは使っている飛行機が小さめで、ウェブサイトでの直予約で多くの客を集めてしまうが、大手はそう単純ではない。長年の商習慣で消費者との間に多くの旅行会社が入っており、その旅行会社がお客欲しさにギリギリまで安く売る傾向があり、逆に出発日が近づくほど値下げすることもある。旅行会社は座席を多く売ると航空会社から報奨金(ボーナスのようなもの)をもらえるので、航空券は安くても、お客を多く集めることができれば採算がとれるのである。

また、乗り継ぎ便なら大手にはもっと安い航空券がある。実際、同じ日程で検索したところ、成田発ハノイ経由クアラルンプール行きのベトナム航空が往復4万円前後だった。これだと燃油代2万円を足してもベトナム航空の方が安い。

LCCの簡素なターミナルは施設も少ない。両替所は1カ所で長蛇の列も当たり前(写真左)。LCCは誘導路に停まった飛行機からタラップを使って降りて、こうした長い通路を歩いてターミナルまで移動することも多い(写真上)

今のところ、日本はLCC後進国でまだまだ飛んでいるLCCが少ないのも、大手より高い"逆転現象"が起こりやすい一因だろう。

ちなみに、ソウル線は大手航空会社の間の料金競争があまりに激しく、航空券も相当に値下がりしている。特に、数日の短期旅行ならLCCより大手の方が常に安い傾向にある。格安航空券探しの"常識"として知っておくといいだろう。