【連載】

PDF徹底活用術

59 PDFにフォントを埋め込まないとどうなるか?

井村克也  [2014/09/17]

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PDFのファイルサイズを小さくするテクニックとして、PDFにフォントを埋め込まない方法があります。しかし、フォントを埋め込まないと、元文書と見た目が変わります。今回は、フォントの埋め込みについて説明します。

PCとフォントの関係

パソコンで文書を作成する上で、フォントの選択は重要なポイントです。レイアウトにメリハリを付けたり、重要な部分に太字のフォントを使うことで、わかりやすい文書となります。

PDFは、設定によってフォントを埋め込むかどうかを設定できます。
埋め込みがよくわからないという方のために説明すると、埋め込みとはPDFファイルの中にフォントデータを内包させることです。

フォントはOS(WindowsやMacOS)が管理しているもので、WordやExcelで使用できるフォントは、そのパソコンにインストールされているフォントに限定されます。

そのため、文書ファイルをやりとりをする場合、特殊なフォントを使うとトラブルの原因となります。
たとえば、あるパソコンに入っている「フォントA」を使ったWord文書のデータを、「フォントA」が入っていない他のパソコンで開くと、その文書データは「フォントA」の文字の形状でなく、代替文字を使って表示されます。
これは、互換性を重視するための機能ですが、レイアウトの再現性は損なわれています。

PDFでは、文書のレイアウトの再現性を高めるために、文書内で使用したフォントデータそのものをPDF内に埋め込めます。フォントを埋め込めば、PDFを閲覧するデバイスのフォントに関係なく、埋め込まれたフォントデータを利用して元文書と同じ状態を表示できるわけです。

ただし、フォントを埋め込むと、フォントデータの分だけPDFのファイルサイズは大きくなります。
そのため、ファイルサイズを小さくするためのテクニックとして、フォントを埋め込まない方法がとられるわけです。

埋め込まないとどうなるかのテスト

PDFを埋め込まないとどうなるかを、実際にテストしてみましょう。

テスト用に、Wordで多くのフォントを使用したファイルを作成しました。この文書は、上から段落ごとに「MS明朝」「MSゴシック」「MS P明朝」「MS Pゴシック」「HG 丸ゴシック M-PRO」「HGP創英角ポップ体」「HGP 行書体」「HGP明朝 B」を適用し、段落内のテキストには使用したフォント名が入っています。この文書を、PDFに変換します。

Wordで作成した元文書。各段落ごとにフォントを変えてある

1つめは、PDF設定を「標準」に設定します。PDF設定は「Acrobat」タブの「環境設定」で選択できます。
「標準」設定では、フォントは埋め込まれます。ファイル名は「フォント_標準.pdf」とします。

なお、PDF設定とフォントの埋め込みについては、第5回を参照してください。

PDF設定を「標準」に設定

作成されたPDF

続いて、PDF設定を「最小ファイルサイズ」に設定してPDFを作成します。「最小ファイルサイズ」設定は、フォントは埋め込まれません。ファイル名は「フォント_最小.pdf」とします。

PDF設定を「最小ファイルサイズ」に設定

作成されたPDF

さて、2つのPDFのサイズを比較してみましょう。
「フォント標準.pdf」は441KBに対して、「フォント最小.pdf」は8.13KBですから、フォントが埋め込まれていない分、「フォント_最小.pdf」のほうが小さくなります。

ファイルサイズは、フォントを埋め込んでいない「フォント_最小.pdf」のほうが小さい

では、再度作成されたPDFを見てみましょう。

「フォント_標準.pdf」

「フォント_最小.pdf」

どちらも、元文書と同じフォントで表示されており、差異はありません。

AcrobatまたはAdobe Readerでは、PDFにフォントが埋め込まれていなくても、表示するデバイスにそのフォントがインストールされている場合は、そのフォントで表示されます。

元文書の作成に使ったフォントがインストールされているPCでPDFを表示しているわけですから、フォントの埋め込みに関係なく、元文書のフォントで表示されるわけです。

フォントの埋め込みを確認する

インストールされているフォントが使用されるため、画面上でフォントが埋め込まれているかどうかはわかりません。確認するためには、PDFのプロパティを使用します。

「ファイル」メニュー>「プロパティ」を選択し、「フォント」タブを開きます。

フォントを埋め込んだPDF「フォント_標準.pdf」では、「(埋め込みサブセット)」と表示されます。

フォントを埋め込んだPDFの「文書のプロパティ」ダイアログボックス。埋め込まれたフォントは「(埋め込みサブセット)」と表示される

フォントを埋め込んでいないPDF「フォント_最小.pdf」では、「(埋め込みサブセット)」は表示されず、「実際のフォント」で、表示に使用されているフォント名が表示されます。ここでは文書内のフォントと「実際のフォント」は同じフォントです。

フォントを埋め込んでいないPDFの「文書のプロパティ」ダイアログボックス。「(埋め込みサブセット)」は表示されず、「実際のフォント」で、表示に使用されているフォント名が表示される

他のPCで表示する

作成したPDFを、フォントのインストール環境の異なるPCで表示してみましょう。

Microsoft OfficeがインストールされていないWindows7で、Adobe Readerで表示したものです。

「フォント_標準.pdf」

「フォント_最小.pdf」

比較するとわかりますが、フォントを埋め込んでいない「フォント_最小.pdf」では、「HG 丸ゴシック M-PRO」「HGP創英角ポップ体」「HGP 行書体」「小塚ゴシック Pr6N B」を使った下の4つの段落では、フォントが置換されています。

「フォント_最小.pdf」の文書のプロパティを表示して確認すると、表示に使用されているのは「MS Pゴシック」と「MS P明朝」であることがわかります。

「フォント_最小.pdf」の文書のプロパティ。表示に使用されているのは「MS Pゴシック」と「MS P明朝」

このように、フォントが埋め込まれていないPDFでは、表示するデバイスにPDF内のフォントがインストールされていないと、代替フォント(ここでは「MS Pゴシック」と「MS P明朝」)で置換されて表示されます。

どのフォントに置換されるかは、元のフォントがゴシック系か明朝系かによって、Acrobatが自動で判断します。

また、今回のテストでは、Windowsでは「MS Pゴシック」と「MS P明朝」に置換されましたが、Macでは「ヒラギノ角ゴシックPro W3」と「ヒラギノ明朝Pro W3」に置換されました。「MS Pゴシック」も「ヒラギノ角ゴシックPro W3」に、「MS P明朝」も「ヒラギノ明朝Pro W3」に置換されています。

Macで表示した「フォント_最小.pdf」

Macでは「ヒラギノ角ゴシックPro W3」と「ヒラギノ明朝Pro W3」に置換された

フォントの埋め込みの使い分け

PDFにフォントを埋め込まないと、表示するPCやデバイスの環境によって、PDFの見え方が異なることはおわかりいただけたと思います。

フォントを埋め込まなければ、ファイルサイズは小さくなります。しかし、元文書との再現性は損なわれるわけです。
どちらを優先するかは、PDF文書の内容次第です。どうしても、フォントの違いで表現しなければならない文書であれば、埋め込みは必須です。テキストが読めて、内容が伝わればよいなら、埋め込みはさほど重要ではありません。

Windowsに標準的にインストールされていると思われるフォント

ビジネスの現場で、WindowsパソコンにMicrosoft Officeがインストールされているのが一般的です。このPC環境であれば、以下の和文フォントがインストールされています。
PDFを渡す相手がWindowsと限定されているのであれば、下記のフォントを使用していれば、フォントを埋め込んでいなくても、元文書と同じフォントで表示される確率が高くなります。

  • MS 明朝、MS P明朝
  • MS ゴシック、MS Pゴシック
  • HG ゴシック E、HGP ゴシック E、HGS ゴシック E
  • HG ゴシック M、HGP ゴシック M、HGS ゴシック M
  • HG 明朝 B、HGP 明朝 B、HGS 明朝 B
  • HG 明朝 E、HGP 明朝 E、HGS 明朝 E
  • HG 行書体、HGP 行書体、HGS 行書体
  • HG 教科書体、HGP 教科書体、HGS 教科書体
  • HG 創英角ゴシック UB、HGP 創英角ゴシック UB、HGS 創英角ゴシック UB
  • HG 創英角ポップ体、HGP 創英角ポップ体、HGS 創英角ポップ体
  • HG 創英プレゼンス EB、HGP 創英プレゼンス EB、HGS 創英プレゼンス EB
  • HG 丸ゴシック M-Pro
  • HG 正楷書体 PRO
  • メイリオ

個人的には、ディスク容量が増え、LANが普及してインターネット回線が高速になった現在、フォントは埋め込んでおくほうがベターだと思います。

フォントを埋め込まないPDFの作成の際は、見た目が変わることを十分注意してください。

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インデックス

連載目次
第60回 テキスト編集とフォントの埋め込みの関係
第59回 PDFにフォントを埋め込まないとどうなるか?
第58回 検索機能を使いこなそう
第57回 Illustratorで作成したPDFのサイズを小さくする
第56回 PDFの画像を編集する
第55回 PDFのテキストを編集する
第54回 PDF作成時にセキュリティで保護するように設定する(2)
第53回 PDF作成時にセキュリティで保護するように設定する(1)
第52回 PDFに透かしを入れる
第51回 「PDF Pack」をAdobe Readerから使う
第50回 オンラインサービス「PDF Pack」を使う
第49回 PDFの内容を再利用する
第48回 ヘッダーやフッターに画像を入れる
第47回 ヘッダーとフッターを挿入する
第46回 ページ数の多いPDFを細かく分割する
第45回 Acrobatでのページ操作を使いこなそう(2)
第44回 Acrobatでのページ操作を使いこなそう(1)
第43回 FormsCentralで作ったPDFフォームを公開する
第42回 FormsCentralでPDFフォームを作成する
第41回 共有フォルダーを使ったPDFフォームの配布 -PDFフォームの配布(4)-
第40回 Acrobatからのメール送信によるPDFフォームの配布 -PDFフォームの配布(3)-
第39回 FormsCentralでの回収データの操作 -PDFフォームの配布(2)-
第38回 FormsCentralを使ったPDFフォームの配布と回収 -PDFフォームの配布(1)-
第37回 リセットボタンを付けよう -PDFフォーム(3)-
第36回 フォームフィールドを編集しよう -PDFフォーム(2)-
第35回 入力欄のあるPDFを作ろう -PDFフォーム(1)-
第34回 大切なメールをPDFにバックアップする
第33回 PDFにナビゲーション用のボタンを付けよう(2)
第32回 PDFにナビゲーション用のボタンを付けよう(1)
第31回 Webの情報をPDFで保存しよう
第30回 Acrobatのメニューバーとツールバーが表示されなくなったら?
第29回 スキャンしたデータのPDFを検索できるようにする
第28回 ひとつのPDFを並べて表示する
第27回 ツールバーをカスタマイズして使いやすくしよう
第26回 保護されたビューで安全にPDFを見よう
第25回 移動先を使ったリンクを作成しよう
第24回 特定ページへのリンクを作成しよう
第23回 他のPDFやWebページへのリンクを作成しよう
第22回 注釈の見た目を変更しよう
第21回 注釈の色を変更しよう
第20回 オリジナルのスタンプを作成しよう
第19回 AcrobatでPDF文書を比較する
第18回 プレゼンテーションにPDFを使う
第17回 PDFポートフォリオでPDFをフォルダーとして使おう
第16回 アクションを使ってセキュリティ設定を自動化しよう
第15回 配布用PDFのプロパティをチェックしよう
第14回 セキュリティ設定でPDFの内容を保護する
第13回 手作業で注釈データをやりとりする -PDFのレビュー(6)
第12回 注釈のリストを使い修正漏れを防止する -PDFのレビュー(5)
第11回 トラッカーでレビューを管理する -PDFのレビュー(4)
第10回 複数の校正担当者と注釈をシェアする共有レビュー -PDFのレビュー(3)
第9回 メールにPDFを添付して校正を依頼する -PDFのレビュー(2)
第8回 文書校正にはPDFが最適。簡単なルールで運用がポイント -PDFのレビュー(1)
第7回 ページ数の多いPDFには「しおり」をつけよう(2) 手動設定編
第6回 ページ数の多いPDFには「しおり」をつけよう(1) Microsoft Office編
第5回 PDF設定をカスタマイズしてオリジナルのPDF設定を作成する
第4回 PDFファイルの最適化設定をマスターする(2) - フォント設定編
第3回 PDFファイルの最適化設定をマスターする(1) - 画像設定編
第2回 他のユーザーが作ったPDFファイルのサイズを縮小する
第1回 ドキュメントの共有はPDFで!! - マルチデバイス対応&軽量なファイル形式

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