本連載では、これまでファンクションポイント法の特徴、不得意分野などについて説明してきました。今回は、「業務パッケージを用いて開発コストを抑える」ということをテーマに、ファンクションポイント法を具体的に用いる方法を取り上げます。

業務パッケージを利用すると安くできる?

「業務PKG(パッケージ)を利用して開発コストを抑えます」という謳い文句をよく聞きますが、出来上がってみると必ずしもそうではないケースがあります。これをファンクションポイント法で説明してみましょう。

ファンクションポイント法の活用例

まず機能要件を1000FPとします。業務PKGそのものの機能が1000FPだとして、業務PKGの機能のうち80%となる800FPはノンカスタマイズで使用できるとします。この場合、200FPは新たに追加作成しなければならない機能となります。

この時の費用は、PKG本体の購入費用と追加作成分の費用を足したものになります。これは、PKGの未使用分の機能を合わせて1200FPの機能に対してかかった費用です。

これと1000FPをスクラッチで作成した場合の費用と比較すると、どちらが安くできるかがわかります。ノンカスタマイズで使用できる機能の比率によって、どちらがお得なのか変わってくるのです。

PKGカスタマイズの場合、ついつい追加で作成しなければいけない部分の費用に目が行ってしまいがちですが、PKG本体の費用も考える必要があるのです。

加えて忘れがちなのは、「設計や試験にかかる費用は追加作成分の200FPに対してではなく、システム全体の1000FPに比例する」ということです。そのためには追加作成部分だけでなく、機能要件そのものを見積もり、費用を算出しないと過少見積りになってしまいます。

また、ファンクションポイント法はユーザーの視点に立った定量化手法ですので、機能仕様がわかれば業務PKGそのものも定量化することができます。

PKGのカスタマイズのように、要求仕様のサイズと実装サイズに大きな差がある場合は、プログラム行数だけではうまく定量化できません。ぜひファンクションポイント法を活用してほしいと思います。

執筆者プロフィール

藤貫美佐 (Misa Fujinuki)
株式会社NTTデータ SIコンピテンシー本部 SEPG 設計積算推進担当 課長。IFPUG Certified Function Point Specialist。日本ファンクションポイントユーザー会の事務局長を務める。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.5(2008年7月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは 異なる場合があります。ご了承ください。