調査データは楽観的だが……
実は諸外国に比べても、サービスイン(または稼働)後の不具合の数から言えば、日本人が作るシステムの品質は決して悪くはないようです。 表1のデータは日本と海外との不具合(欠陥)の数の違いを示した調査結果です(※2)。 このデータは、発注側、受注側の両者が開発の初期からサービスインに至るまで、様々なもどかしさを抱えながらも、そこをうまくすり合わせた結果「欠陥」の少ないシステムを作り上げているということを示している可能性があります。
"欠陥を抑え込む開発を行うためには、しっかりとした品質保証の体制を持つことが必要であることは、言うまでもない"
このような考え方がシステム開発を行う組織のトップダウン(経営層)、ボトムアップ(現場)の両方から理解されるとともに、組織体制にも反映されつつあるようです(図1)。この結果として、品質保証に携わる専門スタッフのプロジェクトへの関与が増える傾向にあるとのコメントが付いています(実際にそうなのかどうかは、もう数年傾向を見るべきでしょうが)。
こうのような調査結果を見る限り、仮に開発過程が決してスムーズだとは言えなくても、欠陥そのものは何とか抑え込めているという見方ができます。
※2:Cusumano, M., et. al., "Software Development Worldwide: The State of the Practice",IEEE Software, Vol.20, No.6, 2003, p.28-34.
表1 パフォーマンスのデータ
インド |
日本 |
米国 |
ヨーロッパ&その他 |
トータル |
|
調査対象 プロジェクトの総数 |
24 |
271 |
31 |
22 |
104 |
アウトプット (中央値)注1 |
209 |
469 |
270 |
436 |
374 |
欠陥密度 (中央値)注2 |
263 |
20 |
400 |
225 |
150 |
注1:新規コード行数(LOC)/(スタッフの総数×プログラムに費やした総工数)(単位:人月)
注2:稼働後12ヵ月以内に顧客から報告された欠陥の総数N/ソースでの総LOC
執筆者プロフィール
大西建児 (Kenji Onishi)
株式会社豆蔵 シニアコンサルタント。国内電機メーカー、外資系通信機器ベンダーで培ったテストや品質保証などの経験を生かし、テスト手法や技術の普及、発展に取り組む。NPO法人ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)副理事長。JaSST'08東京 共同実行委員長。著書に「ステップアップのためのソフトウェアテスト実践ガイド」(日経BP社)などがある。
『出典:システム開発ジャーナル Vol.1(2007年11月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。