全日本空輸(以下、ANA)の整備部門では、Kaseyaを利用し、Windows PC、全2,500台の設定変更をリモートで行った。このシステム変更業務を担当したのがANAのグループ会社であるANAシステムズ(旧ANAコミュニケーションズ)で、実際にKaseyaを利用した作業を行ったのが、PC-LCMサービスの提供ベンダでかつKaseyaのパートナーでもある野村総合研究所(NRI)だ。

ANAシステムズ(旧ANAコミュニケーションズ)があるビル

ANAの整備部門では、もともと独自のシステムを構築し運用していたが、システム更新に伴い、ANAグループ共通システムにアクティブディレクトリ(AD)のドメイン等を統合することになり、各PCの設定を変更する必要に迫られたのだ。

整備部門の端末は、日本全国の90以上の拠点に点在し、中には24時間稼動が求められている部署もあるという。そのため、いかに効率的なシステム変更を実施するかがプロジェクトの課題となっていた。

このあたりの背景について、ANAシステムズ サービス推進部 国内統括チーム リーダーである小林明弘氏は、

ANAシステムズ サービス推進部 国内統括チーム リーダー 小林明弘氏

「整備部門では、早くからARAGINと呼ばれる独自のシステムを構築していました。しかし、それが老朽化したことや、現在のグループ全体のガバナンスに完全に合わせられていないことなどからグループ統合システムへの移行が決まりました。設定変更作業自体はARAGIN端末の保守を担当していただいていた野村総合研究所様に依頼することにしましたが、拠点数、端末台数が非常に多く、効率的に作業を進めるためにリモートでの対応や自動化ができないかと相談した結果、提案されたのがKaseyaでした」と説明する。

従来、ANAシステムズでは、ドメイン移行等の複雑な作業については、実際に現場に出向いて行うオンサイト作業が基本であった。しかし、今回は端末台数も多いことから、リモートにて自動で行う方法が模索され、結果的に採用したのがKaseyaであった。

PCの設定全体をカバーできてコストメリットもあるKaseyaを選択

検討段階では、自動化するツールとして、Kaseya以外にもいくつか候補にあがったという。

ANAシステムズ サービス推進部 国内統括チーム シニアエキスパート 萩平吉彦氏

「端末のプロファイルのみを移行するツールは存在したのですが、全体を通して対応できるツールが必要でした。端末のさまざまな設定が変更できることや、比較的安価に利用できることでKaseyaを採用しました。日本での採用例が少ないことは気になりましたが、世界的にすでに多くの実績があるということを聞いていましたし、海外で航空会社での採用実績もあったので信頼できると判断しました」と語るのは、ANAシステムズ サービス推進部 国内統括チーム シニアエキスパートである萩平吉彦氏だ。

実際に、システム移行を目指してNRIとともに準備作業を開始したのは2012年4月。自動化のためのスクリプト作成やテスト作業などをKaseyaの協力を得ながら行い、実際の移行作業が開始されたのが2012年7月末のことだったという。

オンサイトと比較して約20%のコスト削減を実現

作業する端末のバリエーションが複数あり、また設定変更項目が非常に多く、複雑なため、端末の中にはテスト環境ではうまく動いていた部分でエラーが出るなど、いくつかの問題もあったが、スクリプトをその都度修正、ブラッシュアップを重ねながら問題に対応し、徐々に効率的な作業を実現していった。

「最初のうちは作業の余裕も考慮して、1日数十台からスタートしましたが、最終的には1晩で100~150台の作業ができるようになりました。これは非常に効率的でした。トラブルが発生した時にもKaseyaさんに原因と対応策を迅速に究明してもらえ、数百台分の手直しがわずか半日で完了するなど、対応力が高いことにも驚きました」と萩平氏は語る。

実業務に影響がでないように、基本的に作業は夜間に行われ、24時間体制の空港等については、同じ業務を受け持つ端末の中で実施日をずらし、業務が止まらないように工夫した。今回の実施された作業は、ファイルサーバやドメインの移行、IT資産管理ツール/ウィルス対策ソフトの更新、ドメイン変更に伴うユーザープロファイルの移行、DNS、Internet Explorerのホーム設定、拠点ごとのホスト名やIPアドレス変更などだ。これらを手作業でやった場合、1端末あたり2~3時間ほど必要になるが、ANAではKaseyaによる自動化を行ったことで、1晩で100台以上の端末設定を変更し、作業時間の大幅な短縮とコストメリットが得られたという。

「1晩に100~150台の作業ができるというのは非常に効率的でしたね。コスト面でもオンサイトで同じことをやった場合と比較して、約2割のコスト削減ができました。出張による移動工数も減り、交通費等も抑えられたことは大きな効果です」と小林氏は語った。

次回は、ANAシステムズの担当者が語った、プロジェクトを成功に導くためのポイントを紹介する。