人の脳はどんな人工知能よりも遙かに優れ、その処理能力も超一級。中でも「入ってくる情報を瞬時に理解判断し、決断を下す」という能力は今のところどんなスーパーコンピュータよりも長けているんだそうで、これに欠かせない要素の一つが言語能力。そしてこの言語能力が誰もが人生の後年にかかりうる「Alzheimer、アルツハイマー(老年性認知症)」の発症を左右する(遅らせる)と言うのが今回の話。

今回行われた研究に参加したのは欠陥の程度的に見て同等とみなされる450人のアルツハイマー患者。ただしその半分は"bilingual(二言語使用者)"、そして残りの半分は"monolingual(単言語使用者)"。

何故このような2つの異なるグループの人たちが対象になったかと言うと : "bilingual"の脳と"monolingual"の脳ではその活性レベルに大きな違いがあるから。前者は後者に比べ、より柔軟で並行作業や多重作業に優れ、実行管理機能にも優れている。

"Both languages are essentially turned on all the time, but the brain learns to inhibit the one that is not needed、…………That is pretty constant activity."とあるように、"bilingual"の脳では2つの言語が常に「on」状態。そして必要でない方を「状況に応じ、抑止する」といった行為がコンスタントに行われており、それが"bilingual"と"monolingual"の脳の活性レベルの違いを生む大きな理由なんだとか。

で、今回の研究実験で得られたことは : "The bilingual patients had Alzheimer's symptoms and were diagnosed between four and five years later than the patients who spoke only one language."、「二言語使用患者の方が単言語使用者よりアルツハイマーにかかっても、症状が出始めるのを4年から5年程度遅らせることが出来る」ということ。

さらに記事によると二言語能力は、取得する時期は早いに超したことはなく、取得のレベルも高いに超したことはないとしながらも : 新たな言語を学ぶというプロセスがもっとも重要なんだとか。そして"If you start to learn at 40, 50, 60, you are certainly keeping your brain active."とあるように、何歳からの学習でも脳は活性してくれるんだそうです。

つまり、言語の学習さえ続ければ、それを極めようが極めまいが、どんなレベルであろうが、アルツハイマーの症状が出るのを遅らせることに繋がると記しています。

また面白いのがこの記事は何故大人になってからの言語学習が難しいのかにも触れ、"Scientists and educators know that it becomes far harder to learn a new language after puberty. Partly that's because adults' brains are so bombarded with other demands that they do not give learning a new language the same attention that a young child does."、あるように、「思春期以降の語学学習が難しい理由の一つは、大人になればなるほど脳は多種の要求に答えなくてはならなくなり、新生児や小さなこどもの時ほど言語学習に脳を集中させれれないから」だと言っています。これって意外と当たり前、でも意外と的を得た説なのかも…。

皆さんは何か語学を勉強されてますか? もしされていないなら、これを機に始めてみませんか? 誰もがかかりうる恐ろしいAlzheimer、少しでもその発症を遅らせることが出来るなら、その価値十分ありだと思いますけど。

今回のURLは、Speaking two languages may delay Alzheimer's - Health - Alzheimer's Disease - msnbc.com

興味がある方は是非チェックしてみてください。

英語ワンポイント :

今回注目すべきは :

単言語使用者 → monolingual
二言語使用者 → bilingual

で、これに"the"を付けて the monolingual、the bilingual と言うことで「単言語使用者たち(の人たち)」、「二言語使用者たち(の人たち)」といった言い方ができます。

また因みに、三言語使用者のことは"trilingual"とも言いますが、三言語以上を話す人のことは、通常は"multiligual"といった言い方になります。

ではまた次回。