2018年に5Gの実用的なサービスが立ち上がることが本格的に予測されるようになった現在、そうした5Gローンチ直前、夜明け前とも言える2017年は、さまざまな動きが各地でアグレッシブに起きた年となりました。そこで、今回は、筆者が「Microwave Journal」のブログに掲載した記事から、2017年に世界で起きた5Gに向けた動きを振り返ってみたいと思います。

2017年初頭 - 2016年12月に3GPPがウィーンで5Gのワークショップを実施、そこで語られた最新情報とは?

2016年12月、オーストリアのウィーンで開催された3GPP(3rd Generation Partnership Project) RAN #74 TSGのミーティングに出席しました。2017年3月にクロアチアのドゥブロヴニクで開催された5G RAN #75のミーティングでは5GのWI(Work Item)が正式に決定されましたが、ウィーンのミーティングはその前に行われる最後の全体会議でした。

3GPPのメンバーとして参画している企業は、5G(第5世代移動通信システム)のアーキテクチャに求められる要件を満たすための新たな技術や方式の研究に多くの資金を注いできました。初めての大きなマイルストーンがこの3か月後に迫っていたわけですが、3GPPで5Gを扱うワークショップは、以下に示すような重要な懸案事項を指摘していました。

1つ目の懸案事項は次のようなことです。多くの企業は、自社が提唱するコンセプトや技術が最初のWIに含まれるよう働きかけを続けてきました。しかしながら、期限も迫ってきています。2017年3月には、5Gフェーズ1のWIがスタートしますが、これが、5Gの最初の仕様(3GPP Release 15)のベースになります。3GPPはフェーズ1の18か月後にフェーズ2を開始する予定です。ただ、フェーズ1に含まれていないユースケースや技術についてはスタートまでさらに18か月待たなければなりません。このことは一部の企業にとってビジネスの面で大きな問題になる可能性があります。

一方で、3GPPのリーダー層は、2017年3月というデッドラインと、最終的には2018年8月に仕様を完成させるという目標を達成する確率を高めるために、フェーズ1の一部の作業範囲を狭めるべきだという提案を行いました。ウィーンで実施されたミーティングでは合意に至りませんでしたが、前進するためには何かを犠牲にする必要があることは明らかです。時間というのは、ある意味でイコライザのような役割を果たすものだと言えます。研究を完了し、合意に達したうえで初めて定義の段階に進めるという現実に鑑みると、イノベーションの追求は少し控える必要があるのかもしれません。

同時に3GPPは、特にIoT(狭帯域のIoT)、MTC(LTE MTC:Machine Type Communication)、V2X(車車間/路車間通信)のユースケースに向けてLTE/4Gを発展させようとしています。実際、これらのユースケースに関連して進化を遂げた新たなLTE技術が、IMT-2020の要件に対応できるかどうかを評価するために、5Gの作業を遅らせるよう提案を行っている企業もあります。3GPPは、すでにフェーズ1の主なユースケースは「eMBB(Enhanced Mobile Broadband)」になることを示唆しています。これがフェーズ1の作業の主な成果になるかもしれません。

また、eMBBとしては、マルチキャリア対応のOFDM(直交周波数分割多重方式)と、最小帯域幅が100MHzの最大8つのコンポーネントキャリアを利用するミリ波/センチ波ベースのシステムが対象になりそうです。すでに、データ用に提案されたLDPC(低密度パリティ検査符号)ベースのチャンネルコーディングと、制御チャンネル向けのポーラ符号については合意に達しています。2つの符号化方式が使われるのは珍しいことです。なぜなら、物理レイヤにそれぞれの方式に対応する仕組みを用意し、リンクの状態に応じて切り替えが行えるモバイルデバイスが必要になるからです。このことは、コストと複雑さの増大を意味します。どちらの方式にもメリットはありますが、2017年3月のミーティングで現状のまま放置されるかどうか興味深いところです。

最後に、3GPPは5Gの用語についても合意しました。5Gの新たな物理レイヤは正式に「NR(New Radio)」と呼ばれることになりました。また、5Gの新たなコアネットワークは「5G CN」と呼ばれることになります。5G NRと5G CNの間の接続は「NG」という名称になります(この議論では、マーケティングの専門家の欠席が目立っていたのでしょう)。今後、ドゥブロヴニクで行われるミーティングに注目する必要がでてきました。

著者プロフィール

James Kimery
National Instruments(NI) RF研究/SDR担当ディレクタ

今回の記事は「Microwave Journal」の筆者によるブログ(2017年1月13日に掲載)を邦訳したものです