こんにちは。

雨が多い8月が終わってそのまま秋に突入か? というような気候だったり、変に蒸し暑かったりと、季節の変わり目はとても不安定ですね。私は暑いのが苦手なので、これからの季節が楽しみで、早くもっと涼しくなってほしいと願っている今日この頃です。

さて、第17回と18回はどちらかというと、すでに3D CADの使用を開始した方向けのお話をしてきました。今回はまた以前に立ち戻って、これから導入を考えている方向けのお話をしてみます。

3D CADの操作を学習するのに腰が引ける、という方のお声は以前からよく耳にします。かねがね3D CADを使ってみたいと思っている、もしくは、取引先から3Dデータでの提出を求められるようになってきたので、いい加減使わないとまずいんだよな、という方も増えていると思います。

そこで、その「操作」についてのハードルを下げるようなお話をしたいなと思います。

ここ数年、機能的に斬新なものは出尽くした感があり、各CADベンダーは新バージョンのリリースごとに使用環境の向上を挙げることが多くなりました。つまり、ユーザーインタフェース(UI)の改善です。アイコンの配置を工夫したり、そもそもアイコンの意味を一目で理解しやすくしたり、右クリックやショートカットキーによる目的のメニューへ到達するより速い方法を提供したり、といったものです。

Microsoft社がOffice製品において採用している「リボンUI」と呼ばれるメニューアイコンの表示方法を採用しているCADも増えてきました。メニューアイコンを画面上部にまとめて、機能ごとにまとめられたものが「リボン」状に重なったような状態で配置されているものです。大きめで見やすいアイコンが機能ごとに分類されているので、目的のアイコンを探しやすいというメリットがあります。多分、世界で最も使用されているであろうMicrosoft Officeと同じようなUIの仕様にすることで、新たにソフトを使い始める人にとってのハードルを低くする狙いがあります。

Autodesk Inventorの例

図はInventorのUIです。「3Dモデル」とか「スケッチ」と並んでいるところを「タブ」と呼びますが、このタブをクリックすることで表示されているアイコン群が切り替わり、タブに記された機能グループのアイコンが表に出てきます。

10年ぐらい前のソフトウェアは、画面の上下左右にアイコンがずらっと並んでいて、機能が増えるごとにアイコンも増えていき、すごい状態になっているソフトウェアもありました。ですが、最近はこのようにきれいにまとまっているものが主流なので、見つけやすさはかなり改善されました。

ところで、そもそもコマンドの意味がわからない、という場合はどうしましょう? CADの用語はとにかくカタカナが多いです。「フィレット」、「シェル」、「スイープ」、「ロフト」、「ブレンド」、などなど。知っているかどうかの違いですが、知らないと何のことだかさっぱりわかりませんね。

特に3D CADは英語圏で開発されてグローバルに販売されているものがほとんどなので、英語版のソフトウェアに日本語訳の機能名を当てはめることになり、結果としてこのような日本人にとっては意味がわかりにくいカタカナ語のコマンドが散見されます。大半は、その機能を一言で表す日本語が無いので、カタカナで表現している場合が多いです。

また、CAD製品によっても同じ機能を示しているのに意味が異なる場合があります。Autodesk社製品(Inventor、Fusion 360)やSolid Edgeにおいては「ロフト」と呼んでいる機能が、SOLIDWORKSやPTC Creoでは「ブレンド」と呼ばれています。いくつかのCADを試しに使ってみるという場合には注意が必要です。

以下は各コマンドの意味です。

・フィレット:いわゆる「角R」です。個人的には「角R」でも良いような気がしますが、英語のfilletをそのまま採用しています。
・シェル:部品形状全体を薄肉にする機能。
・スイープ:1つの閉じたスケッチと1つの軌道を示すスケッチを使用して変化のある形状を作成する機能
・ブレンド、ロフト:2つ以上の閉じたスケッチを繋げて立体形状にする機能

英語圏の皆さんがこれらの単語だけで機能を理解できるものなのかよくわかりませんが、日本語では少なくとも意味を理解できるひとつの単語が無いので、英語のカタカナ化で対応しているのが実情だと思います。

そして、各用語がどういうものなのかを知りたい場合、数年前まではオンラインヘルプを開いてコマンド説明を読んで…というのが一般的でした。ここ最近はそのユーザーインタフェースの使い勝手向上の一環で、オンラインヘルプを開かなくても簡易的なヘルプを参照できる製品が増えてきました。その簡易的なヘルプも、文字だけではなく画像を用いてわかりやすくする工夫がなされています。

例えばこれはAutodesk Inventorの、コマンドアイコンにカーソルをあてた時に表示されるヘルプです。

スイープ

ロフト

こちらは Fusion 360です。

シェル

ここでご紹介していないCAD製品も、大なり小なり何らかのUIの工夫が多くなっている印象があります。したがって、以前に比べると、意味がさっぱりわからなくて使うのが億劫になる、という状況はかなり回避できるようになっていると思います。なかなか使用に踏み切れていない方も、まずはインストールしていじってみてはいかがでしょうか?

大半のCAD製品はWebからダウンロードしてすぐに使い始められる体験版が用意されているので、まずは体験してみることが大事だと思います! 製品によってはオンラインチュートリアルも用意されていて、まず何をしたら良いのか? から教えてもらえるコンテンツが揃っているものもあるので、気軽に比べてみることをお勧めします!

ではまた次回をお楽しみに!

著者紹介

草野多恵
CADテクニカルアドバイザー。宇宙航空関連メーカーにて宇宙観測ロケット設計および打ち上げまでのプロセス管理業務に従事し、設計から生産技術および製造、そして検査から納品までのプロセスを習得。その後、3D CAD業界に転身し、製造業での経験をもとに、ベンダーの立場からCADの普及活動を行う。現在は独立し、ユーザーの目線に立ち、効果的なCAD導入を支援している。 著書に「今すぐ使いたい人のためのAutoCAD LT 操作のきほん」(株式会社ボーンデジタル刊)がある。