こんにちは。連載も早、第4回目となりました。この連載では、今さら聞けないCAD関係の基礎知識を、こっそり読んで身につけていただく手助けとして役立てていただければいいなと考えています。

そこで今回は、いろんなCAD製品の説明文によく出てくる、わかってるようでよくわかってないかもしれないカタカナ用語について解説してみたいと思います。

以下は、架空の3D CAD製品の特徴を説明した文章です。

この製品は、パーツ設計機能においてパラメトリック モデリング、およびダイレクト モデリングと2つのモデリング手法を使用することができ、設計する製品の特徴や設計の仕様に合わせて柔軟に使い分けながら設計を進めることができます。また、ソリッド モデリングのみならず、サーフェス モデリングも可能で、デザインを重視して滑らかな曲面が必要となる製品の設計にも柔軟に対応することができます。

いかがでしょうか?

この文章の中で、わかっているようでわかってないかもしれないと思われる用語を太字にしてみました。「モデリング」と付く用語がこの数行の文章の中で4種類あります。

では、これらの言葉の意味を解説していきますが、そもそもこれら4つは大きく2つのグループに分けることができるので、比較しながら説明します。

1. ソリッドとサーフェス

・ソリッドの特徴
作成した立体は必ず体積があります。つまり、3次元的な立体で、その形状は必ず閉じられた形状です。閉じられた内部は詰まった状態を表現しています。従って、重心の位置を算出することができます。ほぼすべての3D CADは、その立体に対して属性(プロパティと呼ぶことが多い)を設定することができますが、その中で使用する材料の密度を設定し、重量を算出することもできます。

・サーフェスの特徴
サーフェスは、「面」を作成するモデリング手法であり、ソリッドと異なって閉じた形状である必要はありません。表面のみで形状を表現するモデリング手法です。作成する「面」は厚みが0なので、重量も常に0です。また、体積もありません。表面積は、算出できるCADがほとんどです。

ソリッド モデルとサーフェス モデルの比較(サンプルとして Autodesk Inventorを使用)

ソリッドモデル:材料の密度が示されており、質量や体積などが算出されています。

サーフェス モデル:無理やり材料の情報を設定しても、質量や体積などは算出されません。

2. パラメトリックとダイレクト

これは、モデリング手法の用語です。主にソリッドモデリングの際の手法として使われています。

・パラメトリック
立体の形状をパラメータで制御し、フィーチャー(パラメトリック モデリングでは手順ごとに作成する各「形状」のことをこのように呼びます)を積み重ねて部品を作り込んでいくモデリング手法です。3D CADの中でのパラメータとは主に、「形状の大きさを決定するための寸法値を示す」とまずは覚えましょう。

パラメトリック モデリングではフィーチャーを作成する際に、その大きさを定義するための寸法を与えながら作り込んでいきます。そして、大きさを変更したい場合は、与えた寸法の値を新しい数値に書き換えると、それに伴って形状が更新されます。フィーチャーはすべて作成順に履歴として登録されており、以前作成したフィーチャーの履歴に戻って形状の変更をすることができます。

また、部品全体の設計条件を表すために、寸法同士に関連性をもたせる計算式を利用することができるようになっています。

例えば、「四角形の縦横比を常に同一に保ちたい」という設計条件がある場合、その条件を計算式で表現しておくことで変更ミスや変更漏れを防ぎ、常に設計条件に合致した形状を保つことが可能になるというのが、このモデリング手法の大きなメリットです。

パラメトリック モデリングの例:「height = width/2」と指定しておくことで、widthの寸法値を変更すると、heightの値は自動的に1/2の値に更新される。

・ダイレクト
ダイレクト モデリングは、立体形状を作成する過程で面やエッジや点を、現在ある地点から移動させたり回転させたりなどして形状を作り込んでいく手法です。ソリッド モデリングのような「フィーチャー」という概念はありません。また、履歴が無いので形状の変更は、現在の形状をもとにしてさらに変化を付けて完成形状を目指すことになります。この結果、ソリッド モデリングのようにシステマティックな変更ができない代わりに、直感的に柔軟な修正を加えられることが特徴です。

ダイレクトモデリングの例 その1:既にある形状の表面を回転させて、斜めの面にする

ダイレクトモデリングの例 その2:既にある面を平行移動し、突起部分の大きさを変える

いかがでしたか?

ソリッドとかサーフェスとか、なんとなくわかっているつもりでも、いざ「説明してください」と言われると、きちんと説明できないことがあると思います。説明ができるということは、自分でそれを理解できているということであり、正しく理解できていて初めて、そのテクノロジーやテクニックを、意思と自信を持って使うことができます。

今回はモデリングと付く用語を集めてみました。

次回もまたこのような感じで、正しくわかっているかどうか怪しいかも?というような用語をピックアップして解説してみたいと思います。

お楽しみに!

著者紹介

草野多恵
CADテクニカルアドバイザー。宇宙航空関連メーカーにて宇宙観測ロケット設計および打ち上げまでのプロセス管理業務に従事し、設計から生産技術および製造、そして検査から納品までのプロセスを習得。その後、3D CAD業界に転身し、製造業での経験をもとに、ベンダーの立場からCADの普及活動を行う。現在は独立し、ユーザーの目線に立ち、効果的なCAD導入を支援している。