実際にOffice 365を導入する場合、旧環境からの移行が気になるところでしょう。新環境をゼロから使うのであれば、新規にOffice 365テナントを構築するだけなので簡単です。しかし、旧環境のデータをなるべく移行したいという場合には面倒なことになります。

Exchange Serverからの移行

オンプレミスの環境でメールサーバーとしてMicrosoft Exchange Server 2003以降を使っているのでしたら、移行ツールを利用して多数のユーザーのデータを効率的に移行する方策があります。移行には、以下の4つのパターンがあります。

(1)リモート移動移行

Office 365とオンプレミスのExchange Serverを併用するハイブリッド環境にお勧めです。Active Directoryを同期させ、シングルサインオンを実現します。同期用のサーバーを用意しなければなりません。

(2)段階的移行

Exchange Server 2003または2007を使っていて、最終的に全ユーザーをOffice 365に移行するとき、段階的にバッチ処理で移行します。オンプレミスのドメインコントローラのActiveDirectoryをマスターとして、Office 365を同期します。

(3)一括移行

Exchange Serverから全ユーザーを一括してバッチ処理でOffice 365に移行します。ユーザーアカウントはOffice 365で管理します。

(4)IMAP移行

Exchange Server 2000までのExchange Server、あるいは他のメールサーバーから移行する場合は、IMAPを利用してOffice 365にデータを吸い上げます。連絡先(アドレス帳)に関しては、一度メールクライアントソフトでCSVファイルにエクスポートしてから、Office 365にインポートするといいでしょう。

実際の移行に当たっては、technetのページを参考にしてください。

Office 365のプラン変更

Office 365には、小規模向けのSmall Business、中規模向けのMidsize Business、汎用的なEnterprise、そして単体サービスと、複数のカテゴリのプランがあります。プランを変更する際、同じカテゴリのプランについては変更可能ですが、異なるカテゴリには変更できません。

たとえば、Small Businessで利用していたテナントを、同じカテゴリのSmall Business Premiumにライセンスを変更できます。この場合、ユーザーアカウントに対するライセンスの割り当てを変更する以外、何もする必要はありません。ユーザーの設定やデータもそのまま継続して利用できます。

しかし、異なるカテゴリのプランへの変更、たとえばSmall BusinessプランからEnterpriseプランへの変更はできません。その場合は、新たにEnterpriseプランを契約してテナントを作成し、ユーザーアカウントを作り直す必要があります。もちろん、メールボックス等のユーザーデータも移行できません。移行ツールも用意されていません。

 異なるカテゴリのプランにOffice 365テナントを移行して同じドメイン名を使いたいときは、以下の作業手順になります。

(1)旧テナントのメールアドレスを、すべて独自ドメイン名から既定のxxx.onmicrosoft.comに変更する。
(2)旧テナントから独自ドメイン名を解除する。
(3)新テナントを契約する。
(4)新テナントに独自ドメイン名を設定する。
(5)新テナントに旧テナントと同じ環境(ユーザーアカウント、共有メールボックス、サイト等)を新規構築する。
(6)新テナントが正しく構築されて問題が無いことを確認したら、旧テナントを解約する。

Office 365では、あるテナントに使用されているドメイン名を別のテナントに適用することはできません。そのため、旧テナントでドメイン名を解除しないと、新テナントにドメイン名を設定できません。また、移行するドメイン名が割り当てられているメールアドレスが1つでも残っていると、そのドメイン名をテナントから解除できません。前もってメールアドレスのドメイン名をすべて他のドメイン名(xxx.onmicrosoft.com等)に変更しておく必要があります。

ユーザーの編集で、新しいテナントに移行するドメイン名を別のドメイン名に変更します。

ドメイン名を別のドメイン名に変更

すべてのメールアドレスから、移転先テナントで使うドメイン名をはずしたら、ドメインの管理画面でそのドメイン名を削除します。

ドメインの管理画面でそのドメイン名を削除

個々のユーザーのメールボックスや連絡先(People)、予定表、タスクなどを移行するには、Outlook 2013を使うのが便利です。Outlookでは複数のテナントに同時に接続できますので、Outlookを介して、アイテムを旧テナントから新テナントのフォルダにコピーまたは移動します。現状、自動化する方法はありませんので、これも手作業となります。

Outlookのアカウント設定画面で、新旧2つのテナントのアカウントを登録します。

Outlookのアカウント設定画面で、新旧2つのテナントのアカウントを登録

Outlook 2013のフォルダーウィンドウで、旧テナントのアカウントのアイテムを、新テナントのアカウントのフォルダに移動またはコピーします。

旧テナントのアカウントのアイテムを、新テナントのアカウントのフォルダに移動またはコピー

※大量のデータを蓄積しているユーザーの場合、旧テナントのフォルダから新テナントのフォルダにまとめてアイテムをコピー(または移動)すると、途中でタイムアウトして処理が停止します。データの量が多いときは、Outlookに個人用フォルダ(ローカルPCに作成される)を作成し、旧テナントから個人用フォルダに保存した上で、個人用フォルダから新テナントのフォルダに移動すると、トラブルが軽減されます。

同じOffice 365のサービスでありながら、すべてを手作業で移行しなければならないのはユーザーフレンドリーではありません。異なるカテゴリのプランへもスムーズに移行できる様にシステムを改善するか、あるいは、移行ツールの提供をマイクロソフトに期待したいところです。

Office 365(旧BPOS)は登場して数年になりますが、まだまだ発展途上の感があります。一方で、Office 365は、オンプレミスサーバ不要で、手軽に必要な分だけを利用でき、しかも超高信頼性。さらにMicrosoft Officeにサブスクリプションと1ユーザー5デバイスという画期的な使いやすさを実現しました。従来のマイクロソフト製品では大企業でなければ利用できなかった環境(少なくとも数百万円の投資が必要だった環境を)SOHOでも…個人でさえ、気軽に導入できるようになりました。

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