大画面が魅力の「Cintiq 27QHD」。肝心のペンでの描写能力だが、筆圧感知2048レベル、分解能0.005mmと従来のCintiqやIntuos Proと同等の性能だ。その安定した高性能については、今さら述べるまでもないだろう。

ブレのない、安定した筆致

Cintiq27QHDに付属するのはこれまで13HDシリーズにのみ付属していたプロペン(上)。旧来のグリップペン(下)と見た目は若干異なるが、性能は同等

実際にCintiq 27QHDで描いてみると、ごく自然に、快適に描写できる。古い液晶タブレット機種では、画面との干渉でマウスポインタのブレが見られたが、現在のCintiqではこの減少は画面の隅々まで皆無だ。

画面が小さい液晶ペンタブレットでは、ペンの座標調整がシビアで、画面位置によりペン先と座標がずれてしまうことがあるが、27HDではペンの座標調整も的確に行われ、画面の隅々まで、ペン先とポインタがずれることはなかった。もっとも、ペン先と、実際の液晶面との間には距離があるため、場所によっては視差によるズレは感じるが、これは構造上いたしかたないところだろうし、すぐに慣れる。

画面の上部と下部での、ペン先とポインタの位置。位置によるずれがないのがわかる(横から撮影しているので、ガラス面の厚みでずれているように見える)

画面の平滑度は滑りすぎず、適度な摩擦がある。標準のペン先でも様々な描き方に対応してくれるだろう。筆で描くようなより軽い感触が得られるストローク芯、マーカーのような抵抗のあるフェルト芯も利用できる(より抵抗の大きいエラストマー芯は画面を痛めるため使用できない)。

大画面ならではの快適さを感じるのは、まずは絵の具的な表現だ。大きめのブラシで、ザクザクと色を置いて、画面上で混色を楽しむ。専用スタンドなら、キャンバスのように垂直に立てて描くこともできる。精度を要求されるペン画でも、ストロークが一発で決まり、非常に快適だ。27QHDならマンガの見開き原稿を原寸で表示できるだけの面積があるので、大きなコマでも全体を見ながら書き込みができる。

キャンバスに絵の具で描くように描いてみた。大きな画面が気持ちいい

マンガのような線画では一本一本の精度が重要。細かい部分もブレなく描ける

大型画面で改めて重宝するのが、ペンの後端にある消しゴム機能だ。ペンタブレットでの使用時はキーボードショートカットを使うので、ペンの消しゴムはあまり使わないのだが、大型画面だとキーボードに手を伸ばす方が面倒なので、このペンの後端の消しゴムがとても重宝する。

気になる表面温度の上昇は?

液晶ペンタブレットで気になるのが、表面の温度上昇だ。バックライトを内蔵したディスプレイなので、どうしても画面の温度が上昇し、夏場など手のひらに不快感を感じてしまうことがある。

Cintiq 27QHDでの画面温度がどうなっているのかを調べてみたところ、机の盤面が26度の室内環境で、盤面下部の画面外で26度、画面下部~中央では約28度、画面上部では31度、画面外の上端で約34度だった(画面は水平において、30分ほど放置したものを測定)。

画面のそれぞれの部分を表面温度計で測定した。画面上部では下部と比べて約4度温度が高かった(画像を拡大すると、本体上端、画面上端、画面中央、画面下端、本体下端の温度比較を確認できる)

描写を行う画面中央から下にかけて、ほとんど温度上昇がなかった。ベゼル下部が「ひんやり」しているのに対し、画面内は「常温」な感じで、これなら夏場でもさほど不快感は感じないだろう。

メニューのある画面上部では手にはっきりと温度を感じるが、このサイズでは画面上部で描くことや、手のひらを画面につけることはまずない。メニュー操作時に熱を感じる程度で実際の利用では問題にならないだろう。大画面に直接描けるのはやはり、快適この上ない。画面解像度も適度であり、ストレスとなる部分は感じられなかった。

次回は大型液晶タブレットならではの、設置環境についてレポートしたい。