読者からの悩み
「コミュニケーション能力がなく、仕事で後悔してばかりです。特に、会議で意見を求められたり、相手先でのプレゼンの場でうまく話せません。」(27歳、メーカー、営業)
「コミュニケーション能力がなく、仕事で後悔してばかりです。特に、会議で意見を求められたり、相手先でのプレゼンの場でうまく話せません。」(27歳、メーカー、営業)
人前で話すのは僕もいまだに苦手なんです。昔から、基本的に他人が言うことは客観的に聞いて納得してしまうから、とくに質問も反論も出てこないし、「そりゃ違うだろ!」と熱くなるようなこともない。
でも、発言が少ないとあいつは真剣じゃないと誤解されますから、若い頃はいろんな手を考えました。たとえば人の発言を丸受けして、「なるほど、それは○○ということですね?」と、おうむ返しするだけでも、積極性は見せられます。仮に解釈の仕方が間違っていても、理解しようとする姿勢は伝わります。そうして自分に余裕が出てくれば、相手が何を求めて発言しているのかも捉えやすくなるはず。同意させたいのか、理解を促したいのか、それとも意見を求めているのか。
プレゼンも同じです。マニュアル通りの話術には、少なくとも僕は誠意を感じません。ちゃんと準備をしていれば、自然と自分の言葉になりますし、自分の手で直接集めた資料には自ずと説得力がにじむものですよ。
穏やかな物腰は、一見すると野心を感じさせない。しかし、それでも一介の社員からトップにまで上り詰めた人物である。上野氏はどのような「20代」を過ごしたのだろうか?
「基本的にキャリアプランなんてまったく考えない20代でした。けど先日、当時会議中に書いていたノートが見つかったんです。意見や企画に対する考察、メモ書き、あるいは落書きなど何でも書いてるノートなのですが、見るとこれがなかなか賢いんです。というのも、今と考えることがほとんど同じなんです。成長していないと言われたら身も蓋もないけど、自分の思考パターンやオリジナリティというのは、一生もんということですよ」
あるいは、当時のほうが純粋な気持ちで仕事に打ち込んでいたかもしれない。上野氏はそう言って笑う。
「20代というのはよく勉強し、ある程度完成している世代なのだとあらためて実感しましたね。それに当時感じたことというのは非常にピュアだし、その時の自分にしか得られない感覚です。おそらく30代になるとまた感性も変わっていくでしょうし、何に触れ、どう感じたかを記録しておくことは有意義でしょう」
もともと出世欲とは無縁であったが、転機となったのは係長(現在の呼称は「リーダー」)の役職を得た時であった。
「30代で係長になってみて初めて、この先どこまで出世すればいいんだろう、と思ったんです。なれるものなら社長にだってなりたい。そこで考えてみると、当時の社風からして社長になれそうな世代は、だいたい自分の世代に限られるんです。つまりライバルも限られる。入社がもう3年遅かったらこんなことは考えもしなかったのでしょうが、チャンスありと直感しましたね」
いかにも理系らしい"計算"と言えるかもしれないが、それが原動力となったのは紛れもない事実。他方、上野氏は自身がそうした「チャンスあり」の世代であることについて、「選ばれた者、つまりニュータイプだなと思いましたね」とニヤリ--------、キャラクターへの愛着もふんだんに感じさせる。