今日の
ライター:
根岸達朗
根岸達朗
かつて娯楽の少なかった時代には、東京にも数多くあったといわれる貸本屋さん。(貸本屋とは、その名の通り本を貸してくれるお店です)先日、近所を散策していたところ、ふいにそんな昔ながらの貸本屋さんに出会いました。極小のスペースに所狭しと並べられた本やマンガの数々。図書館やレンタルショップではなかなかすぐには借りられないような新刊のラインアップもあります。ぐっと興味をそそられた私、その存在自体が希少になりつつあるこのお仕事について、少しお話を伺ってみることにしました。
目黒区のゆたか書房さんにお聞きします。
――貸本屋さんという存在に出会ったのは始めてです。このお店を初めてどのくらいになるのですか?
「うちは50年。ちょっとした節目の年だよね。昔は都内でもこういう貸本屋が3000軒くらいあってね、この辺にも結構あったんだけど、それが今は4軒だってさ。テレビが広まる前はそこそこ盛り上がってたんだけど、なんていうかね、テレビに負けちゃったんだよね。最近は携帯に負けたっていうか」
――なんでそんなに減ってしまったんでしょうか。
「経済的にも経営的にも、時代の流れに合わなくなってきたんだろうね。レンタルショップの影響っていうのもあるけど、例えば図書館なんてほら、結局はタダで借りられるんだから。ま、商品のラインアップなら敵じゃないっていうのもあるんだけどさ、お客さんからしたら、うちの貸本くらいだって、ちょっと高いなってことになっちゃうんだろうね。あとはまあ、ひとり当たりの借りる量ってのも減ってきてるしさ。自分で棚をじーっと見てね、あ、これおもしろそうだなっていう感じで借りていく人も少なくなったよ」
――なんだか、さみしい話ですね。
「それはもうしょうがないんじゃないね。どんな職業でも栄枯盛衰はあるよね。ひところ貸本屋がいっぱいあった時代を称して『貸本文化』なんて言葉も生まれたみたいだけどね。 戦後のなにもない時代に貸本屋ってのが登場して、当時はなにもないわけだから、娯楽として貸本屋に行くよね。貸本屋向けにマンガを書く人なんかも増えてきて、一時期は盛り上がったんだよね。ただ今みたいな時代になれば貸本屋に行かなくたって、どこに行っても読めちゃう。そうなってくれば、(貸本屋が減っても)しょうがないわけだ」
――個人的にはすごく興味を持ちましたし、勝手な思いとはいえ、これからも続いてくれたらうれしいのになと単純に思ってしまいました。やはり続けていくというのは大変ですか?
「こういう商売ってのは休みがないんだよね。そもそも商売ってのはひとりもお客さんがこなくても開けてなくちゃちゃいけないわけ。カーテンを閉めたら、あの店はもう終わっちゃったのかっていう印象にもなる。こういう小さな店でもなかなか大変なの。でもね、今でも常連さんがいて、新しい本を待ってくれている。『明日、お店を閉めます』なんていったら、そういう人たちがかわいそうだなっていうのもある。どのぐらい続けられるかはわからないけど、できるところまではやりたいよ」
ありがとうございました。このあとなぜこのお仕事を続けているのかとお聞きしたところ、「生活のためだよ」という実にシンプルなお答えをいただきました。どんなに多様化した社会にあっても、生きていくには働かなくてはならないという意味で、すべての仕事の根ざすところは同じなのではないかという思いがしました。それ以上でも、それ以下でもなく、当たり前のことは常に目の前にある。明日からまた頑張ろうと思います。
(根岸達朗 /プレスラボ)
【関連リンク】
ゆたか書房
今回お話をお聞きした「ゆたか書房」さんのウェブサイトです。お近くの方はぜひ利用してみてはいかがでしょうか
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