カイシャの歩き方 職場で使える処世術、賢いオフィス・コミュニケーションや便利な言いまわしを、くまなく伝授します。

Vol.4:謝罪する ミスを自覚し、すばやく、かつ正直に謝る

「仕事をするということは、人間はかならず誤りを犯すという事実を学ぶことなんだよ」

私は昔、大先輩にこう教えられ、自分が何かミスをするたびにこの言葉を思い出しています。自分だけが誤りを犯すわけではない……そう考えると少し気が楽になるからです。もちろん、ミスをしないような努力は必要ですが、誰もが間違うなら、それにどう対処するかがもっと重要になってきます。そう考えると、ミスを自覚して、素早く、かつ正直に謝罪することの大切さがわかってもらえると思うのです。

まず謝罪、その後に原因究明や善後策を

自分のミスで仕事に支障をきたした場合、ともかくまず謝りましょう。原因究明や善後策を話し合うこと自体、自分のミスを認めたしるしで、それは謝罪と同じことだと思っている人も多いかもしれませんが、相手はそうは受け取りません。反対に、最初に頭を下げて謝れば、相手の気分は穏やかになり、善後策を話しやすくなります。

謝罪の言葉遣いですが、プライベートな場では「ごめんなさい」や「すみません」が一般的ですが、職場では「誠に申し訳ありませんでした」とか「大変失礼いたしました」のほうが適切です。

「私の不手際で、ご迷惑おかけしました」とか、「私の配慮が足りませんでした」、「私の責任です」と責任逃れをするつもりのないことをはっきり示せば、相手の信用を少し回復できるでしょう。こういった謝罪は、電子メールではしないこと。出向いていって謝るのがベストですが、相手が遠い所にいる場合は、電話でもいいでしょう。

誠意をわかってもらう手段を考える

誠意がなければ、謝罪の意味も半減します。単に頭を下げるだけでなく、「状況をよくするために、私に出来ることはあるでしょうか?」と聞いたり、「ミスをした自分が提案するのは厚かましいかもしれませんが」と断って、善後策を提示するような姿勢がいいと思います。

謝罪する相手が上司の場合は「こういう場合はどうしたらいいのでしょう。教えていただけますか?」と反対に聞いてしまってもいいでしょう。

さらに、同じミスを繰り返さないためのシステム作りをしましょう。ひとりで抱え込んで「今度は失敗は許されない」と緊張していると、かえって逆効果。同僚や上司に頼んで、グループでミスを未然に防ぐ方法を確立しましょう。

重大ミスの影には無数の小さなミスが

日本には「失敗学会」という、失敗の原因を解明し、それを未然に防ぐ方法を提供するユニークな非営利団体があります。

この失敗学会によれば、新聞に載るような大きな失敗の陰には29件の軽度のクレーム的失敗があり、その陰には300件の潜在的失敗(「マズイ」と思ったが実際には失敗に発展しなかったもの)があるそうです。

つまりそれは、クレーム的失敗の段階で処理する、あるいは「マズイ」と思ったときに原因を取り除いておけば、重大な失敗を未然に防ぐことができるということを意味しています。ミスを認める重要性はこんなところにもあるのです。

(2007年4月20日)

PROFILE 朽木ゆり子(くちきゆりこ)

東京生まれ。国際基督教大学卒、同大学院修士課程修了後、ニューヨークのコロンビア大学大学院で学ぶ。帰国後、フリーランスのライター・編集者を経て雑誌エスクァイアの副編集長に。94年、家族と共にニューヨークに移住。著作にはアート関係のノンフィクション『盗まれたフェルメール』(新潮社)『パルテノン・スキャンダル』(新潮社)など。その他『はたらく女性のための英会話レスキューブック』(集英社)では、仕事を助ける英語コミュニケーションを解説した。

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