新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、国際航業、エンルート、東北大学未来科学技術共同研究センター、工学院大学、フィールドプロが、国土交通省の協力のもと、長崎県の雲仙普賢岳において11月24日、自律飛行型マルチローター機と各種センシング技術の統合システムとして土石流シミュレーションの実証実験を行うことを発表した。

データの遠隔取得装置を運搬する自律飛行型マルチローター機のイメージ

日本には活火山が多数分布し、火山周辺など立入制限区域内における早期の現場調査が課題となっている。NEDOは「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」を推進し、「土石流災害」に着目した研究開発テーマを実施している。

土石流災害に対する避難計画を検討するには、高精度な予測シミュレーションが必要であり、その予兆と発生範囲を正確に予測することが重要である。そのためには、地形情報や降灰量、灰の性質、降雨量のデータが欠かせない。火山噴火の際に、人の立ち入りが困難な区域でロボット技術を活用して地形情報、降灰量、灰の性質、降雨量のデータを遠隔取得することができれば、精度の高い土石流シミュレーションを実現でき、社会的に有効な防災システムとなる。同プロジェクトは、これらの必要なデータを遠隔取得することにより、精度の高い土石流シミュレーションの実現を目指すもの。

ピラミッド形状の投下型降灰厚スケール。大きさの異なるスケールの埋まり具合の画像から降灰の厚みを測定する(それぞれ深さが、赤色3cm、黄色2cm、緑色1cm)

今回、国際航業らが共同で行う実証実験は、11月24日に国土交通省九州地方整備局雲仙復興事務所の協力のもと、長崎県の雲仙普賢岳の水無川1号砂防堰堤左岸で自律飛行型マルチローター機と各種センシング技術の統合システムとしての土石流シミュレーションである。

マルチローター機

雲仙普賢岳で噴火があった場合を想定し、下記の通り実証実験を行われる。

(1)噴火の前兆現象が発生したと仮定し、噴火後の降灰厚を取得するためにGPS誘導でマルチローター機を自律飛行させ、マルチローター機からつり下げた投下機構によって、ピラミッド形状の投下型降灰厚スケールを観測地点に事前に投下し、一定時間後に再度マルチローター機を飛行させ、画像情報を取得して降灰量を測定する「降灰量の測定」。

(2)噴火後を想定し、GPS誘導でマルチローター機を自律飛行させ、土石流発生の恐れがある渓流の画像取得と三次元情報取得を行う「地形情報の測定」。

(3)火山灰の粒径や透水性などの性質を確認するため、火山灰採取装置を吊下げたマルチローター機をGPS誘導で自律飛行させ、火山灰の採取と表面の画像取得を行う「灰の性質の計測」.

(4)噴火継続中の雨量を計測するため、雨量計を搭載した小型移動ロボットを吊下げたマルチローター機をGPS誘導で自律飛行させ、小型移動ロボットを現場に設置し、遠隔操作により降雨量の定点観測を行う「降雨量の測定」。

(5)上記が取得した地形情報、降灰量、灰の性質、降雨量のデータを用いて、土石流が到達する範囲や堆積する深さを予測する「土石流シミュレーション」。

雨量計を搭載した小型移動ロボット(約40cm角)