東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は、筑波大学計算科学研究センターの田中賢氏と吉川耕司講師、同機構主任研究員で、東京大学大学院理学系研究科の吉田直紀教授、海洋研究開発機構の簑島敬氏らの研究グループが、ニュートリノや宇宙プラズマの運動を記述する基礎方程式「ブラソフ方程式」の高精度数値解法を開発したことを発表した。

この成果は、11月10日発行の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載された。

ブラソフ方程式(出所:ニュースリリース※PDF)

「ブラソフ方程式(無衝突ボルツマン方程式)」は、宇宙に広がる素粒子やプラズマ粒子などの様々な粒子の運動を記述する重要なもので、これを解くことで、粒子の数密度を位置や速度で表す分布関数が、時間と共にどのように変化するのかを厳密に求めることができる。

しかし、同方程式を用いたコンピュータ・シミュレーションには莫大なメモリ量が必要で、3次元空間での実行は不可能と考えられてきた。

一様な密度をもつ物質が自身の重力で収縮する様子(出所:ニュースリリース※PDF)

同研究グループは、ニュートリノや宇宙プラズマの運動を記述する基礎方程式「ブラソフ方程式」の高精度数値解法を開発した。従来のものと比較して、シミュレーション結果の 精度が飛躍的に向上し、これまで非現実的と思われるほどのメモリ量を使ってメッシュ数を増やさないと達成できないと思われていた計算精度が、現実的なメモリ使用量で達成できるようになった。同じコンピュータを用いても格段に精度が高く、より正確なシミュレーション結果が得られることを意味している。

同研究グループは今後、この数値解法を用いることで、粒子シミュレーションでは解明が困難な、宇宙大規模構造の形成過程におけるニュートリノの影響や宇宙プラズマの振る舞いに関する研究に取り組んでいくとしている。