国立天文台(NAOJ)は、半世紀以上にわたる太陽マイクロ波データを解析した結果、極小期のマイクロ波強度およびそのスペクトルが最近の5周期では毎回同じであることを明らかにした。

この観測成果は、国立天文台の下条圭美 助教を中心とする名古屋大学、京都大学、茨城大学の研究者からなる合同研究チームによるもので、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」2017年10月10日号に掲載された。

60年間の太陽マイクロ波観測で得られた太陽の変動と、各極小期での太陽マイクロ波スペクトル。背景画像は、ひので衛星搭載X線望遠鏡が捉えた極小期から極大期に向かう太陽X線全面像(出所:NAOJニュースリリース)

名古屋大学空電研究所豊川キャンパスで始まった太陽マイクロ波の強度モニター観測は、1994年国立天文台野辺山へのアンテナ移設を経て、今日まで60年以上継続されている。

このたび研究チームは、この半世紀以上にわたる太陽マイクロ波データを解析し、太陽極大期の活動度が太陽周期ごとに大きく変わるのに対して、極小期のマイクロ波強度およびそのスペクトルは最近の5周期では毎回同じであることを示した。

この観測結果は、黒点や太陽活動の源である磁場の太陽内部での生成・増幅を理解する上で、重要な鍵になると考えられる。同一観測手法によるデータの質が揃った長期観測データは黒点観測以外の太陽観測では珍しく、黒点数以外のデータで太陽周期を超える時間スケールの傾向を発見したことは非常に意義深いものだという。

研究チームは、今後も太陽マイクロ波モニター観測を継続し、世紀単位で太陽の長期変動がわかれば、新たな知見が得られると期待しているということだ。