ジョージア工科大学(Gatech)の研究グループは、サファイア基板上に形成した窒化ガリウム(GaN)のガスセンサデバイスを金属箔や高分子材料などさまざまな基板に転写移植する技術を開発したと発表した。サファイア基板から他の基板に転写することでセンサの性能が向上する効果があることも発見したという。ウェアラブル携帯機器、使い捨てセンサ機器などにGaNデバイスを幅広く応用可能にする技術として注目される。研究論文は「Scientific Reports」に掲載された。

今回作製されたAlGaN/GaNセンサの動作テストの様子(出所:Gatech)

今回開発されたGaNデバイス転写技術では、サファイア基板上に形成した窒化ホウ素薄膜を犠牲層として利用することでGaNセンサを形成した後、このセンサを剥離して、銅箔、アルミ箔、フレキシブルな高分子材料などに転写する。

具体的には、まず2インチのサファイアウェハー上に1300℃程度の温度条件での有機金属気相エピタキシー(MOVPE)によって窒化ホウ素の単層薄膜を形成する。この窒化ホウ素薄膜は膜厚数nmという薄さであり、水平方向には強固な結晶構造をもつが垂直方向の結合は弱いという特性がある。

次に1100℃程度の温度条件でのMOVPE法によって、窒化アルミニウムガリウム/窒化ガリウム(AlGaN/Gan)デバイスを窒化ホウ素薄膜の表面に形成する。このデバイスは弱いファンデルワールス力だけで窒化ホウ素薄膜表面に付着した状態となるので、物理的な力で引き剥がすことができる。剥離したデバイスは損傷させずに他の基板に転写することが可能で、デバイス形成に使用したサファイア基板は再利用することができる。

この方法で作製したGaNガスセンサによって、気体に含まれるアンモニアをppb(10億分の1)レベルの感度で検出できるという。また、一酸化窒素、二酸化窒素、アンモニアといった種類の異なる窒素含有ガスの識別にも使える。センサのサイズが100μm×100μm程度と小さいため、種類の異なる気体用のセンサをひとつのデバイス上に集積することも可能であるという。同技術をもとにして、オゾンや二酸化炭素など窒素ガス以外の気体を検出するセンサをつくることもできると考えられている。

基板転写後のデバイスの性能を評価する実験からは、サファイアウェハー上よりも金属箔や高分子基板上のほうがセンサの性能が向上するという結果も得られた。センサの感度が2倍になり、応答速度は6倍速くなったという。転写後の基板のほうが熱伝導率が高いことが影響していると考えられている。