KDDIは11月16日、都内で記者会見を開き、2018年1月から携帯電話網を活用したIoT向け通信技術であるセルラーLPWA(Low Power Wide Area)通信サービス「KDDI IoT コネクト LPWA(LTE-M)」、IoTデバイスと通信モジュールを遠隔で管理可能な「KDDI IoT コネクト デバイス管理(LTE-M)」、3GPP標準規格のLTE-M(Cat.M1)対応のIoT利用に適した超小型のLTE-M通信モジュール「KYW01」の提供を、それぞれ開始すると発表した。

月額40円から利用できる「KDDI IoT コネクト LPWA」

KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 部長の原田圭吾氏は「これまでのIoTは、スマートホームや自動車、自動販売機など高価なモノを中心に取り組みが進められていたほか、電源確保とコスト負担の2点が普及の壁となっていた」と指摘した。

KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 部長の原田圭吾氏

原田氏は、新サービスの特徴として省電力、エリアが広い、低コストの3点を挙げた。省電力については、単三電池2本で10年間使用できる。エリアが広いことに関しては、基地局からこれまでより広く電波が届くため、非居住地・地下室の一部もエリアに含まれる。低コストについては、月額40円/回線からのIoT通信サービスを可能としている。

「KDDI IoT コネクト LPWA(LTE-M)」の特徴

KDDI 技術企画本部 技術企画部 グループリーダーの松ヶ谷篤史氏は、省電力とカバーエリアの広さについて次のように説明した。

KDDI 技術企画本部 技術企画部 グループリーダーの松ヶ谷篤史氏

「省電力を実現するため、待機電力削減技術としてeDRX(extended Discontinuous Reception)とPSM(Power Saving Mode)と呼ばれる技術を活用している。従来、LTE端末は1.28秒間隔で休みなく基地局をサーチするため電力消費が多かったが、eDRXは電波サーチの間隔を最大43分延ばす機能、PSMは最大13日電波サーチを止める機能となるため、消費電力を抑制できる。また、エリアカバレッジ拡張技術により、近距離の場合であればデータを再送しないが、遠距離の場合は同じデータを複数回送信し、接続を確保(最大32回)する。同じデータを複数回送信することで弱電界でも受信できる確率を向上させており、見通しが利く場所では5km以上エリアの拡大を可能としている」

待機電力削減技術の概要

エリアカバレッジ拡張技術の概要

「KDDI IoT コネクト LPWA」の機能としては、リアルタイムにSIMの有効/無効の制御を可能にするSIM制御、オンラインでSIMを発注するSIM発注、トラフィックデータや課金データなどをオンラインで提供する各種ログ情報提供、オプションとして顧客サーバと機器間を閉域網で接続するVPN、SIMから発行した暗号鍵で不正アクセスを防止するSIMセキュリティを備える。

「KDDI IoT コネクト LPWA(LTE-M)」の機能概要

なお、専用料金プランは月間のデータ通信量に合わせ「LPWA10」「LPWA100」「LPWA500」の3種類から選択できる。

専用料金プランの概要

リモートで設定を可能にする「KDDI IoT コネクト デバイス管理」

KDDI IoT コネクト デバイス管理は、大量のセンサーの設置などモノの管理に必要となる機能を提供し、回線状態管理、デバイス状態管理に加え、オプションとしてデバイス遠隔設定、ファームウェア更新がある。

回線状態管理は、ネットワークアタッチ/省電力モードの設定値からIoTデバイスが正常/圏外/電源OFFなどを総合判定するほか、デバイス状態管理はバッテリー残量、電波受信状態の見える化とアラーム通知を行う。

また、オプションであるデバイス遠隔設定は省電力モードの設定変更などを顧客業務に合わせリモートでパラメータ変更を行い、ファームウェア更新は長期間利用可能な顧客製品モジュールのアップデートができるという。

「KDDI IoT コネクト デバイス管理(LTE-M)」の機能概要

原田氏は「これまでIoT分野のニーズは『端末が多いため可能な限り1カ所から集中管理したい』『できるだけ現地での作業は避けたい』というものがあった。最近ではリモートで回線・デバイス状態管理やデバイス遠隔設定、ファームウェア更新などがニーズとして存在するため、KDDI IoT コネクト デバイス管理で対応する」と述べた。

価格は契約台数1~1万台で月額50円~、オプションのデバイス遠隔設定は10円(1台1回あたり)、ファームウェア更新が50円(同)。

1円玉サイズの超小型モジュール「KYW01」

KYW01は、eDRXとPS、カバレッジ拡張技術に対応し、単三電池2本分の電源で10年以上の駆動(1週間ごとに1度、1KBのデータを送信した場合)と、LTEの通信エリアに加えて山間部や建物の奥などのエリアでも通信が可能だという。KYW01が準拠しているLTE-M(Cat.M1)は、既存の4G LTEネットワークエリアで展開される省電力かつ広域なエリアカバレッジを特徴とする3GPPリリース13に基づくLTE標準規格。

超小型モジュール「KYW01」

さらに、通信モジュールの簡素化と独自のセラミック基板技術により、1円玉サイズの超小型化を実現し、これまで通信モジュールを取り付けることは難しかったさまざまなモノをインターネットにつなげる可能性を広げ、多種多様な分野でのIoT活用をサポートするとしている。価格はオープン。

最後に原田氏は今回発表したIoTソリューションの展開について「現状、IoTはテレマティクスやスマートメーターなどへの活用が盛んだが、われわれとしては工場などにおける遠隔監視、物流をはじめとした追跡・管理、セキュリティ・見守り、ヘルスケアをはじめとした領域に拡販していきたいと考えている」と、意気込みを述べていた。