アクセンチュアは11月16日、API連携を通じて社内外のシステムやアプリケーションからの情報を集約、顧客理解に資するデータを収集・分析し、顧客ごとにパーソナライズされたサービス提供の支援まで一貫した機能を提供する統合ソリューション「ACTS(Accenture Connected Technology Solution )」の本格展開を開始したことを発表した。

ACTSは異なるデジタルソリューションを1つのプラットフォーム上で連携し、顧客体験(サービス)の提供から顧客関係管理(CRM)に至るまで、一貫した機能を提供するソリューション。アジャイル開発やDevOpsにも対応する開発環境が用意されているため、新規ビジネスの創出、新商品・サービスの市場投入のスピードを高めるとともに、技術やトレンドの変化にも迅速に対応できるという。

アクセンチュア 執行役員 金融サービス本部 統括本部長の中野将志氏は「これから日本の金融機関は、デジタルエンタープライズ化が進展する。これまで人が行っていた業務をテクノロジーが行うようになり、個別領域での最適化から横展開を前提とした全社的なITプラットフォームの構築が求められるようになる。そして、既存業務プロセスにRPAなどを組み込むのではなく、業務そのものをゼロから再構築するようになるだろう。日本より約2年ほど先を進んでいる欧州の金融機関が描くデジタル変革のロードマップでは、究極的には営業とデジタルなイニシアチブを進めていく2種類の人材のみを残し、非営業業務の70%削減を目標に掲げている」と述べた。

アクセンチュア 執行役員 金融サービス本部 統括本部長の中野将志氏

同社では、そのためのフレームワークとして、セールスやコミュニケーションなどを自動化する「デジタルワークフォース」、サイバーセキュリティやコンプライアンスから構成される「デジタルセキュリティ」、データマネジメントやコネクションマネジメントの「デジタルプラットフォーム」による「デジタルエンタープライズフレームワーク」を提案する。

なかでも、社内の既存システムや外部のシステムと容易に連携できる仕組みとして「コネクションマネジメント」が重要だが、世の中のサービスであまりみられなかったため、今回ACTSとして提供するに至ったという。

デジタルエンタープライズ フレームワーク

ACTSは「ACTS モバイル・ドメイン」「ACTS コア・サービス・ドメイン」「ACTS CMS/デジタルマーケティング/ビッグデータ分析ドメイン」という3つのコンポーネントから構成され、オンプレミスとクラウドどちらでも対応できるが、ソリューションの特性上クラウドへの配置が価値を発揮しやすいという。また、コンポーネント間はすべてAPIを通じて行われるため、カスタマイズへの対応も可能だ。

「ACTS モバイル・ドメイン」では、外部サービスやIoTセンサー情報を活用した、モバイルアプリケーションやWebアプリケーションを構築。同社のサービス企画担当、モバイルUX(ユーザー エクスペリエンス)デザイナー、アプリ開発者が同一拠点に集まり、三位一体となって開発することで、新たなトレンドや技術を取り入れた顧客目線での商品・サービスの早期市場投入を可能にする。

「ACTS コア・サービス・ドメイン」は、APIマネジメントツールを通じて、EC(電子商取引)、決済、ヘルスケアといった社外の各種アプリケーションから得られた情報と社内の基幹システムや既存情報を連携した上で、新たなビジネスや顧客ニーズの変化に対応しながら、各種アプリケーションと疎結合されたデジタルサービス基盤。既存システムと連携は、さまざまなAPI方式に対応するほか、RPAの活用により、既存システムを改変することなく、API連携の実現が可能だ。

「ACTS CMS/デジタルマーケティング/ビッグデータ分析ドメイン」のビックデータ分析では、収集した顧客行動情報や基幹系システムからの情報を集約し、ビッグデータ分析を行う基盤。Apache Hadoop/Sparkを導入し、リレーショナルデータベースでは扱えなかったデータ(非定型データ、ソーシャルグラフデータ)を蓄積して多様な角度からの分析を可能にする。また、CMS/デジタルマーケティングは、ビッグデータ分析の結果をもとに、個々のユーザーに対してパーソナライズされたアクションを実施するためのコンテンツ基盤とマーケティングオートメーション基盤だ。

アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 マネジング・ディレクターの山根圭輔氏は「デジタル時代では、テクノロジーに求められる要件は変わらないが、実現方法は変わっていく。さまざまな既存業務や基幹システムとの接続容易にし、アナリティクスやAIとの連携まで想定したシステム構成が必要になってくる。特にIoTやモバイルアプリなどから得られる今までにないデータが手に入るようになってきているが、これらはめまぐるしく移り変わっていく。その変化には対応していかなければならない」とデジタルソリューションのあるべき姿を述べた。

アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 マネジング・ディレクターの山根圭輔氏

デジタルソリューションのあるべき姿

デジタルソリューションのあるべき姿とACTSのマッピング

また、同社では、これまで人を前提とした業務プロセスから脱却し、デジタル前提に業務プロセスを再構築する「ZBP(Zero-Based Process)」について、コンサルティングサービスを実施する。アクセンチュア 金融サービス本部 マネジング・ディレクターの下野崇氏は「自動化されても、作業そのものは長年同じことをしているという現状を変えたいと考えている。これまでのプロセスそのものを自動化するのではなく、部署を越えたプロセスを見直すことで業務を再構築できる」と述べた。

アクセンチュア 金融サービス本部 マネジング・ディレクターの下野崇氏

ZBPの考え方

なお、すでにACTSはふくおかフィナンシャルグループの金融サービスプラットフォーム「iBank」事業や、第一生命保険ならびにネオファースト生命保険の健康増進アプリ「健康第一」などでの導入実績がある。今後は金融機関のみならず、他業界にも導入していく予定だ。