ベルギーの独立系ナノエレクトロニクス研究機関Imecは、脳内の数百の神経信号を並列記録するための小型神経プローブ「Neuropixels(神経画素)プローブ」を開発したと発表した。

同プローブは、HHoward Hughes Medical Institute(HHMI)、Allen Institute for Brain Science、Gatsby Charitable Foundationなどで構成された国際コンソーシアムからの550億ドルの資金援助のもとに、HHMI、Allen Institute for Brain Science、およびユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究者らと共同で開発したもの。詳細は、科学誌「Nature」に掲載されたほか、米国ワシントンD.Cで11月11-15日に開催された「The Annual Meeting of the Society for Neuroscience (Neuroscience 2017)」で発表された。

回路基板や配線を含めた脳神経プローブ (出所:Imec)

脳神経プローブ部分と先端部 (出所:Imec)

数百のニューロンの活動を同時に記録

これまでの脳細胞の活動をマッピングする技術は、空間的または時間的な解像度が不十分で、数十個程度のニューロンの活動を記録するレベルであったほか、光イメージングでは個々のニュースの活動のスパイクを識別する分解能が不足していたという。Neuropixelsプローブは、これらの課題を解決するもので、数百の個々のニューロンの活動の正確なリアルタイム記録が可能だという。この性能についてImecでは、異なる脳領域にわたって神経活動を記録することが可能であり、これは脳領域の協調動作を研究するために必要な技術と説明しており、これにより最終的には、脳の疾患に向けた診断ツールや補綴ツールの開発につながるものとしている。

プローブの仕様としては、長さ1cm、幅70μmの薄型(20μm)のシャンク上に960個のセンサがタイル状貼られており、個々のセンサの測定範囲は12μm×12μmとなっている。シャンクは、9mm×6mmの基板部とともに一体化されており、数百のニューロンから分離されたスパイク活動の信号を並行して記録。同信号は、384の記録チャンネルを通して、ノイズ除去などが施されたデータとして出力される。

なお、2014年のノーベル生理学・医学賞受賞者であるロンドン大学のJohn O'Keefe博士は「同プローブが実用化されれば、単一細胞の活動を新しいレベルで関連付けることができるようになる」とコメントしており、これにより、ニューロンの活動に関する新たな解析の道が開かれることが期待できるようになるとしている。