世界にまだ2台しかないAiboQube

幕張メッセにて11月8日から10日の3日間にわたり開催された「Japan IT Week 秋 2017」。今回ピックアップするのは、Japan IT Week秋会場内でも一際注目を集めていたウェアラブルデバイスを展示していたクオリカだ。

製造現場密着型IoTを標榜したクオリカブース

工事現場でよく見掛ける作業用安全帽に骨伝導スピーカー&マイクや小型プロジェクターを搭載、シースルースクリーンに映像を投影するという、見た目にも近未来感満載なデバイス「AiboQube(アイボキューブ)」は、製造業や建築業の作業現場での利活用が想定されている。昨今、作業現場においてもスマートフォンやタブレット端末といったデバイスの利活用が浸透しIT化が進んできているが、いざ実際に作業者が利用するとなると両手がふさがってしまい使い勝手に難がある……。そういった現場の声をキャッチアップして誕生したのがAiboQubeというわけだ。じつはこのクオリカという企業、全世界で厚い信頼を得ている建設機械業界の雄、小松製作所の全額出資による情報システム会社として誕生した沿革を持つ。それ故、「製造業・建築業で真に求められているソリューション」に対して的確なアプローチのプロダクトを輩出してきているのだ。

こちらがAiboQubeの試作品。まだ開発中とのことだが、実際の作業現場で作業員は手に軍手をしていたり汚れている場合も多いなか、骨伝導技術を活用し音声で操作できるというのは大きなメリットになりそう

ブースでは実際にAiboQubeを体験することもできた。今後煮詰まれば現場作業員の負荷は軽減していくだろうし、他の業種でもその“両手をふさがない”というAiboQubeのメリットは活きてくるだろう

さて、注目のAiboQubeだが、説明員によれば「じつはまだ世界に2台しかないんですよ」とのことで現在鋭意開発中だそう。先にも述べたが、装着した作業員の手をふさぐことのないヘルメットマウントディスプレイで情報を閲覧でき、音声等を用いて必要な情報を検索・閲覧することが可能となれば、作業の手を止めることなく安全な作業支援が行えるようになる。また、Wi-Fi機能を有した専用端末と組み合わせることで、Web上に数多ある情報へのアクセスも可能としているほか、気温や湿度、バイタル情報等を測定するセンサーと組み合わせ、例えば夏期の熱中症予防にも寄与することが可能なのでは、とは解説員の方の言葉だ。長年製造業・建築業の現場を見続けてきたクオリカだからできる「次世代の作業員ワークスタイル」の提案だといえるだろう。

製造業の業務を知り尽くすクオリカのソリューション

その他、クオリカブースでは、スマートデバイスを腕の動きだけで触れることなく操作できるモーション認識システム「MAQube」や、製造業の保守・保全業務に特化した遠隔監視・予防保全ソリューション「CareQube+」、工場の見える化を実現するソリューション「FactoryQube」などが展示されプレゼンテーションを交えながら紹介されていた。

筆者がその中でも気になったものが、IoTを活用して高齢者の生活を見守る「CarePAD」だ。CarePADは、これから超高齢化社会が本格化していくなか、例えば「親は元気でやっているだろうか?」といった何気ない思いを解決してくれるソリューションで、導入デバイスに搭載された照度・温湿度・人感センサーで室内環境の変化や行動の様子を遠隔地からでも伺い知ることが可能となる。また、非接触流水センサーをトイレ配管に設置することでトイレの使用頻度といった情報からも様子を知ることができるようになり、健康状態を推測する手助けになってくれるのだ。その他、キーホルダー型のデバイスで外出管理を、緊急ボタンの増設で仮に寝たきりであっても異常を伝えることができるなど、必要に応じて接続機器が追加できる仕組みとなっている。

こちらがCarePAD。写真中央にあるデバイス(時刻が映し出されているもの)で室内環境や健康状態を類推することが可能なソリューションだ。写真左の水道パイプに取り付けられているのが非接触流水センサー。もちろん、各種の情報をPCで見ることもできる

製造業の業務を知り尽くし、製造現場と真摯に向き合ってきたクオリカだから提案できるIoTソリューションの数々。近未来的なヘルメットマウント型ウェアラブルデバイスを、実際の現場で見る日が早く来ることを望んでやまないと感じたのは筆者だけではないのでは?