仁科記念財団はこのほど、原子物理学とその応用分野での優れた業績をたたえる2017年度の仁科記念賞を、武居弘樹(たけすえ ひろき)・NTT物性科学基礎研究所上席特別研究員(46)、安達千波矢(あだち ちはや)・九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター長(54)と、東京大物性研究所で研究を続けた甲元真人(こうもと まひと)氏(67)の3人に授与することを決めた。授賞式は12月6日に東京都内で行われ、受賞者に賞状、賞牌と副賞が贈られる。

左から武居弘樹氏、安達千波矢氏、甲元真人氏
(いずれも仁科記念財団提供)

武居氏の授賞理由は「大規模コヒーレントイジングマシンの実現」。量子力学的な手法を用いて従来のコンピューターでは計算できない難問を瞬時に解く量子コンピューターの大規模化などの研究に貢献した。安達氏は「熱活性化遅延蛍光現象を用いた高効率有機 EL の実現」が授賞理由で、日常生活での多方面での活用が期待されている第3世代の有機ELの研究開発に貢献した。

また「トポロジカル量子物性物理学の創始」が授賞理由の甲元氏は、数学の一分野で、数学を使って物や空間の性質を調べる「トポロジー」(位相幾何学)の概念を用いた「トポロジカル量子物性物理学」の創始者の一人としてその基礎を築き物性物理学に新たな研究舞台を切り拓いた。

仁科記念賞は、原子物理学者の故仁科芳雄博士(1890~1951年)の功績を記念して1955年創設された。これまでの受賞者からは、江崎玲於奈、小柴昌俊、小林誠、益川敏英、中村修二、梶田隆章の6氏のノーベル物理学賞受賞者を輩出している。

関連記事

「仁科記念賞に高柳氏 『量子もつれ』を公式で説明」

「仁科記念賞に松田祐司、小林隆、中家剛氏」