九州大学(九大)は、中国でのPM2.5排出量・濃度の減少と化学輸送モデルによるソース・リセプター解析を使って調査した結果、中国でのPM2.5排出減少率がこのまま継続すると、1年~2年の内に日本国内でのPM2.5高濃度越境問題は改善に向かうと考えられると発表した。

同成果は、同大 応用力学研究所の鵜野伊津志 教授によるもの。詳細は、「大気環境学会誌」などに掲載された。

(a)2013年度~2016年度の4年間平均のPM2.5濃度分布。(b)~(e)各年度平均PM2.5濃度から(a)の4年平均値を差し引いた濃度。濃度の減少が2015年度以降に全国的にほぼ同程度の大きさで生じていることが分かる。図中の数字は日平均PM2.5濃度が35μg/m3を超過した日数 (出所:九州大学Webサイト)

中国北京周辺での高濃度大気汚染が大々的に報道された2013年1月以降、中国大陸からの越境輸送などによる国境を超えた高濃度汚染の影響が危惧され、なかでもPM2.5による大気汚染は大きな環境問題となっている。

日本では2009年にPM2.5に対する大気環境基準が設定され、現在は1000か所以上でPM2.5の常時監視が実施されるなど、汚染状況の把握が進められている。近年では、年平均PM2.5濃度は全国的に減少し、環境基準達成率も一般環境測定局で2014年の37.8% から2016年には約88% と大幅に改善されている。

今回、研究グループはこの理由を、中国での排出量・濃度の減少と化学輸送モデルによるソース・リセプター解析を使って調査した。

中国の地上のPM2.5濃度や衛星計測SO2、NO2濃度は年率約10% で減少している。これは排出量の減少によると考えられる。ソース・リセプター解析の結果は、中国での濃度が20% 低下した場合、福岡のPM2.5年平均濃度は約12% 減少することを示しており、これは2014年~2016年にかけての福岡市で観測された減少量(約10% ) に相当していることが分かった。

同成果により鵜野教授は、中国でこの排出減少率が継続すると、1年~2年の内にPM2.5年平均基準を満たす地点が増加し、日本国内でのPM2.5高濃度越境問題は急速に改善に向かうと考えられると説明している。