半導体市場調査企業IC Insightsは11月8日(米国時間)、今年中に発行予定の調査レポート「IC Market Drivers—A Study of Key System Applications Fueling Demand for Integrated Circuits(IC市場のけん引役 - ICの需要を支える主要な電子システムへの応用)」の概要を公表した。

将来の半導体市場の動向を予測するには、その半導体が適用される最終製品である電子システムの需要を調べる必要があるが、同レポートはそれに位置づけられるもの。それによると、車載電子システム販売額の2016~2021年の年平均成長率(CAGR)は5.4%で、ほかの産業/医療、通信、官庁/軍事、民生、コンピュータ(タブレット含む)といった市場を差し置いて、最大の伸びを示すと予測されている。

図1 電子システム販売額の2016年~2021年における年平均成長率予測(%) (ドル基準)。上から順に、車載、産業/医用/その他、通信、官庁/軍需、コンピュータ(タブレットを含む)となっている (出所:IC Insights)

エレクトロニクス化が急速に進む自動車分野

車載向け半導体市場は、2021年までに急速に成長すると予測されている。特に新車向けの電子システムの需要が高まっている。自動運転車、車車間(V2V)および路車間(V2I)の通信、安全性や利便性の向上、環境対策などがますます注目されるようになり、人々の電気自動車(EV)への興味も増してきているためである。車載エレクトロニクスは、ミッドレンジおよびエントリレベルの車でもさまざまな技術が普及し、消費者がその技術に裏打ちされた製品を採用するにつれて、成長してきている。アナログIC、MCU(マイコン)、および多数のセンサがこれらの自動車システムで必要とされるため、半導体サプライヤにとって、これは良いニュースとなっている。

また自動車関連の電子システム市場は、2015年には8.9%、2016年には9.0%とわずかずつ市場シェアを拡大してきており、2017年も1兆4900億ドル(図2)の9.1%へと増加すると言われているほか、2021年には9.8%にまで拡大すると予測されている。

図2 2017年の世界電子システム生産額(1.49兆ドル)の分野別内訳見通し (2021年の車載システムの生産額は、同年の世界電子システム生産額1.73兆ドルの9.8%に相当)(出所:IC Insights)

一方の産業用電子システム(医用システムを含む)も、ロボティクスやウェアラブル・ヘルス機器、およびIoTを推進するシステムが成長を促進するため、2021年までに車載に次ぐ2番目に高い成長率(4.6%)を達成すると予測されているほか、2017年においては全電子システム販売額に対して14.5%を占めると予測されるおり、これによりアナログICは、2017年に産業用IC市場の45%を占めると予測されている。

さらに通信用電子システムは、2017年の全電子システム販売額の31.8%を占めると予測され、電子システム中で最多のシェアを握っている。2016-2021年の間の年平均成長率は、4.2%と予測される。スマートフォンとその他のモバイルデバイスの世界販売額は飽和状態にあるものの、アジア太平洋地域は、通信システムの成長が期待できる地域で、2017年の通信IC市場の地域別シェア69%を占めると予測されている.

2017年の電子システム市場で11.9%のシェアを占めるコンシューマエレクトロニクス向け電子システム市場は、2021年に向けて年平均成長率2.8%で成長すると予測されており、そこに使われるIC市場は、2016-2021年の年平均成長率が2.4%になると見られており、その中でもロジックICが最大市場になるという。

そしてパーソナルコンピューティング・デバイス市場 (デスクトップ、ノートブック、およびタブレット)だが、2017年の電子システム市場シェアは26.1%で、従来どおり、通信システムに次いで大きな市場である。しかし、PCの需要はほとんど増えないことが予測されており、2021年にかけての年平均成長率は最も低い2.0%となると見られている。ただし、コンピュータ向けIC市場は、2017年に25%という例外的な成長率を記録することが予想されている。これは、コンピュータ向けDRAMおよびNANDの販売価格が年間を通して高騰しているためである。

なお2017年は、コンピュータの需要からそこに適用されるICの需要を予測する手法は、半導体メモリには適用できず、それに伴い半導体市場予測も再三にわたる修正を余儀なくされた。半導体メモリ、とりわけDRAMの異常とも言える価格高騰が長引いており、結果としてDRAM価格は前年比2倍以上へと高騰し、PCへ搭載されるDRAMの容量増加や、HDDからSSDへの変換も従来の見通し通りには進まない結果となっている。