日立製作所(以下、日立)は、米国のユタ大学が有する糖尿病患者の電子カルテデータを機械学習を活用して解析することで、糖尿病治療薬の効果を予測し、比較する技術を開発したことを発表した。

現在、患者への高品質な医療の提供と医療費削減を両立させるべく、医療データを活用した「バリューベース・ヘルスケア」の考え方が世界的に注目されている。また、米国では65歳以上の4人に1人は糖尿病と診断されているものの、糖尿病は、数カ月から数年以上にわたり患者の状態に合わせて薬の種類や量、組み合わせを調整する必要があるため、さまざまな投薬方法が存在する。

日立はこれまで、ITを活用した糖尿病対策に取り組んでおり、今回はユタ大学の協力のもと、糖尿病治療薬ごとの治療効果を予測しし、比較する技術を開発した。

開発にあたっては、まず、ユタ大学が有する匿名化された約9,000症例の糖尿病患者の電子カルテデータのうち、約6,800症例のデータを元に、薬の種類・量・投与期間・体重・検査値の推移などを、ユタ大学の医師、薬剤師と日立が培ってきた知見を活用して時系列的に解析した。

そこで得られたさまざまな情報を機械学習の技術で分析することで、HbA1c値を低減できる確率を、患者ごと、薬の種類ごとに予測可能なモデルを構築した。同技術を用いることで、米国において標準的な通院間隔である投薬開始90日後の治療結果を薬ごとに予測し、比較可能となるため、患者の特徴や状態に合わせた最適な薬の選択・判断を支援できるという。今回、同技術をユタ大学の持つ、残りの約2,200症例の糖尿病患者データに適用してシミュレーションしたところ、90日後の糖尿病の治療結果を高精度に予測できることを確認したという。

日立は、今後、ユタ大学と協力して同技術の実用化に向けた共同研究を行うとともに、ITを医療に活用するヘルスケアインフォマティクスを通じて、医師の支援や患者へのよりよい医療サービスの実現に貢献していくとしている。

なお、この成果の一部は、11月6日~8日に米国・ベセスダで開催された「IEEE-NIH Special Topic Conference on Healthcare Innovation and Point-of-Care Technologies」で発表された。