ソニーがネックバンドスタイルのワイヤレスイヤホンみたいな“集音器”「SMR-10」を11月25日に発売する。価格はオープンだが、35,000円前後で販売される見込みだ。SMR-10がどんな製品なのか、オーディオ・ビジュアル的な用途も含めて紹介しよう。SMR-10のカラーバリエーションはブラックとホワイトの2色で展開する。

ワイヤレスイヤホンのような集音器「SMR-10」

聴力をサポートする集音器にソニー独自のノウハウを投入

集音器とは、耳に装着して周囲の音を聞き取り取りやすくするためのデバイスだ。補聴器と違って医療機器ではないため、一般のエレクトロニクス機器として家電量販店やソニーのWeb直販サイトなどから購入できる。ソニーでSMR-10を開発した担当者は、「集音器の認知はまだ低く、難聴傾向で補聴器を使用していない方の生活をサポートするためのデバイスとして普及に力を入れていきたい」と目標を語る。ソニーでは、集音器の潜在ユーザー数が国内で約1,250万人いると見込んでいるようだ。

また、SMR-10を開発した背景について、ソニーの担当者は「大元になっているのはICレコーダーの技術。デザインはネックバンドタイプのワイヤレスイヤホンに近く、メモリーカードレコーダーのようにシンプルな操作性を持たせている。ビデオカメラの『ハンディカム』シリーズに搭載してきたボイスキャンセル技術も乗せた」として、ソニーの様々な音響技術の集合体であると説いている。

ヘッドセットはネックバンドタイプのイヤホンのような外観をしている。送信器と充電器を兼ねたスタンドが付属

本体はイヤホン型のヘッドセット部と、充電台を兼ねたテレビ音声の送信機のふたつに分かれている。集音器として使う場合はヘッドセット部だけを首にかけて持ち歩ける。ヘッドセットに内蔵するバッテリーは3時間でフル充電になり、集音だけなら24時間持続するスタミナを持つ。

音の「聞こえ方」を自動でベストコンディションに整えてくれる

SMR-10に搭載するマイクが周囲の音を集めて、イヤホンを通せば明瞭に聞こえるという仕組み。集音器として使う場合にキモとなる機能が3つある。一つは「オートシーンセレクト」。ユーザーがSMR-10を使っている環境を自動的に判別して、人の声をよく聞こえるように調節してくれるという機能だ。さらに、ボリュームを上げるとノイズ音は増幅を抑えて人の声だけを聴きやすくなる。

使わないときは折りたたんでスタンドに装着。ヘッドセット部が充電される

集音器は通常、耳の側にマイクを入れてイヤホンで集めた音を聴くものだが、SMR-10はネックバンドの先端部分にも左右2個ずつのマイクを乗せて、ユーザー自身の声を正しく判別する「マイボイスキャンセリング」の機能も備えている。これによって耳元の音、つまり会話の相手が発生した声など、普段は耳で聞いている音だけを増幅して、自分の口に近い位置でピックアップした音は小さくできる。「マイボイス」がきれいにキャンセルされるというわけだ。

イヤホンは左右が分かりやすいように漢字で表記されている

そしてもう一つの機能である「ハウリングキャンセル」は、SMR-10を装着したまま携帯電話などで電話をかけるシーンで役に立つ。ヘッドセットのイヤーピース部分に搭載されているマイクを携帯電話の受話器などで覆ってしまうと、通常であれば不快なハウリング音が聞こえてくるものだ。SMR-10はハウリングの特性を推定して、ノイズの原因となる音に逆位相の音をぶつけて相殺することで抑える技術を搭載している。

音の聞こえ方がよくない、左右のバランスが安定しないなど、使っていて微妙な調整が必要に感じられた場合は、音声ガイド付きの本体設定で左右のバランス調整やハウリングキャンセルの最適化などがカスタマイズできる、かんたんセットアップ機能も便利だ。

イヤホンだけでなくネックバンドタイプのスピーカーとしても使える

テレビ用イヤホン&スピーカーとしての機能も搭載

そしてもう一つ、SMR-10のメインになる機能が「テレビ用スピーカー」だ。ソファやキッチンなど、テレビから少し離れた場所にいながら音が聞こえやすくなる。ワイヤレスタイプの「お手元スピーカー」と似たような使い方をイメージしてほしい。

集音器/TV用スピーカーの切替は本体のスイッチで行う

ヘッドセット部と対になるトランスミッター(送信機)を、テレビなどのソース機器につなぐ。テレビに光デジタル出力が搭載されていれば、音質的にはもう一つのアナログ音声出力でつなぐよりもベターと言える。

トランスミッターとヘッドセットの間は独自に接続を安定させて遅延性能を高めた、Bluetoothベースのワイヤレス伝送技術が使われている。テレビの音はイヤホンからだけでなく、ヘッドセットの本体に内蔵されている小型スピーカーのどちらかを選んで聴けるようになっている。

テレビなど外部ソース機器には光デジタル、またはアナログ音声で接続する

なお、SMR-10はテレビ用スピーカーとしてもシンプルに使えるように、ヘッドセットとトランスミッターがあらかじめペアリングを済ませた状態で出荷される。他の機器とのペアリングはできない。

ヘッドセットはコンパクトに折りたためるコラプシブル設計。付属のキャリングポーチに入れて持ち運べる。操作状態を知らせるボイスガイド機能も便利だ。シニアの家族へのプレゼントにも最適かもしれない。