大阪大学(阪大)は、末期心不全で移植適応とならない患者からの申出により実施されている「患者申出療養制度」に基づいて、2017年3月に心臓移植・Destination Therapy治験(DT治験)の対象とならない患者に対して、耳介後部ケーブルを用いた新たな補助人工心臓装着を実施し、無事、自宅退院まで達成したことを発表した。

耳介後部型補助人工心臓を装着された患者 (出所:大阪大学Webサイト)

同成果は、阪大大学院医学系研究科心臓血管外科の澤芳樹 教授らによるもの。

患者申出療養制度は、保険外併用療法として、未承認薬などを迅速に使用したいと望む患者の思いに応えるために、創設された制度であることから、同制度は困難な病気と戦う患者からの申出が起点となる必要がある。従来、日本においては心臓移植の登録までの橋渡しとしてのみ補助人工心臓の使用、保険適応は認められていなかったが、今回、患者からの申出によって、同制度を利用することで従来の適応外である患者に対して補助人工心臓の装着による救命とともに、海外承認、国内未承認の技術である耳介後部からケーブルを出す新しい補助人工心臓を使用することが可能となった。

今回、患者への同療法による人工心臓の装着に成功したことを受け、澤教授らは、重症心不全という困難な病気と闘う多くの方々に対して、補助人工心臓治療という新たな選択肢を提供することが可能と説明するほか、耳介後部からケーブルを出す同療法は、ケーブル由来感染症のリスクが低く、入浴が可能になるなど、装着患者のQOLが向上する点からも実生活に大きな影響を与えることが期待されるとコメントしている。

なお今後は、日本人における耳介後部型補助人工心臓の有用性を明らかにしていくことで、国内承認を目指し、多くの重症心不全患者のQOL向上につなげていきたいと抱負を語っている。