WOWOWの『連続ドラマW石つぶて ~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~』(11月5日より毎週日曜22:00~ 全8話・1話のみ無料放送)で、主演を務めた佐藤浩市にインタビュー。

原作はノンフィクション作家・清武英利の著書で、WOWOWが清武作品をドラマ化するのは、『連続ドラマW しんがり~山一證券 最後の聖戦~』以来2度目となる。今回は、2001年に実際に起こった外務省機密費詐取事件という国家のタブーに斬り込んでいく。

映画『64-ロクヨン-』(2016年)で、少女誘拐殺人事件の解明に挑んだ元刑事の広報員を演じた佐藤。今回の舞台は贈収賄や汚職などの経済犯罪を取り締まる警視庁捜査二課で、佐藤は偏屈で昔気質の刑事・木崎睦人を演じる。

木崎の上司となる情報係係長・斎見晃明役に、『しんがり』で主演を務めた江口洋介。演出は同ドラマや映画『沈まぬ太陽』(2009年)の若松節朗監督が務めた。

佐藤浩市

――本作のどういう点に魅力を感じ、出演を決めたのですか?

内容がアンタッチャブルなもので、業界的に言えばアナーキーなことをやる面白さですね。扱うのが時代の中で埋没しかかっている事件なんです。この沖縄サミットの時の話は、僕もはっきりとは認識してなくて、確かそういうことあったよね?という程度でした。でも、民放では絶対やらない作品だし、たぶん渋谷の国営放送でもやらないでしょう? 当時、マスコミだってほとんど取り上げなかったし。

本来ならまず紙媒体がやらなければいけないものだったのに、今後の取材のしやすさやいろんなことを含めての判断からか、みんなが逃げてしまったのではないかと思います。だから、あの事件を覚えている人がどのくらいいるのかなと。そういうところを敢えて掘り返そうというプロデューサーの根性が気に入りました(笑)。

――実在のモデルがいる木崎役ということで、どのようにアプローチしていきましたか?

まだご存命の方なのですが、ノンフィクションのドラマとしてやる以上、客側の興味も含め、どうしても何かに特化した人物として作り込まないといけなくて。だから始まる前に、若松監督とも話して、リアリズムとエンターテインメント性が上手く共存する木崎という役を作らせていただきたいということで同意を得ました。

――演じる上では、具体的にどんな点を心がけましたか?

少し抽象的ですが、お芝居をする上で、昭和感を大事にしました。妙にリアルに持っていくのではなく、ある種のケレン味をそこはかとなくフレーバリングさせていただきたいと、監督に言いました。それをあざといと見るか、面白いと見るかは見る側におまかせします。監督は放置プレイというか、自由にやらせていただいたので、感謝しています。

――『64-ロクヨン-』で刑事から広報官になった役柄を演じられていましたが、今回の捜査二課の刑事役についてはいかがでしたか?

刑事はこれまでいろいろとやってきました。30代~40代前半までは捜査一課などバリバリの刑事役が多かったけど、どんどん横へ流されていってますね。現実感が伴っていてうれしいです(苦笑)。刑事や警察官の役は十把一からげにはいかないですから。警察機構は本当に複雑で、きっと身内に警察官がいなければ誰も知らないことだろうと思います。そんな中でこれまでいろんな刑事ドラマが作られてきたこと自体が面白い。

『64-ロクヨン-』の時も思いましたが、普通なら警察の広報官が主役になるなんてことは考えられないですよね。でも、大きな警察組織だから、広報部はあって当たり前だし、横山(秀夫)さんが取り上げてくださったからこそああいう映画ができたんです。 今回の捜査二課も全く身近に感じられないようなポジションですが、逆にそういうところに面白さがあるのかなと思います。

――江口洋介さんと本格的な共演は初めてだったそうですが、現場ではいかがでしたか?

江口くんのことは前から知っていて、阪本順治監督作『闇の子供たち』(08)でも少しだけ一緒だったんですが、役としてがっつり共演したことはなくて。年が7つ離れているので一世代は違う感じだけど、すごくしっかりしているので、お互いにバチバチ感を上手く出せたらいいなと思いました。

――江口さんとはプライベートで交流はあったのですか?

原田芳雄さんの追悼ライブなどを一緒にやったりしているし、酒は何度も飲み交わしているから、まんざら知らないわけではないんです。そういう意味では、初共演ってことで、ちょっと妙な感じはありますよ。現場では意外と緊張しているようでしたが、それがいい意味で映像に反映されていて良かったと思います。

――テレビなどでよくコンプライアンスがささやかれる昨今、本作はかなりタブーに斬り込んだ展開のドラマになりそうでとても楽しみです。

やはりWOWOWのドラマはいちばん自由度がある気がします。映画には暴力シーンや性描写などの規制があり、R指定がついたりします。テレビは自主規制ですが、実は同じことなんです。判断は作り手の心づもりですから。

つまりPG12になろうがR15になろうが、この画は絶対に必要だと思ったらやればいいと思うんです。ある観客からは厳しい目で見られるし、足かせができるのかもしれないけど、作品として必要ならやっちゃえばいいし。そういういろんなわずらわしいことを省いて作れることはすごく良いと思いました。